

1.政治化しているのはテドロスのほうだ
4月10日、アメリカの国務省は、「WHOが2020年1月14日の声明で人から人への感染は確認されていないと発表したことに表れているように、台湾からの情報を公表しなかったことを深く憂慮している……WHOは総会に台湾の出席を認めておらず、今回も公衆衛生より政治を優先した」と、WHOを批判しました。
そして更に、「WHOは1月30日まで『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』を宣言せず、時間と人命を費やした」としたほか、アメリカが中国からの入国を拒否した際に、テドロス事務局長が懸念を表明したことについても「WHOは渡航制限に反対する一方で、中国の指導力を称賛し続けた。WHOの誤った判断によって多くの国で中国との間の渡航制限が遅れた」と述べ、今回の感染拡大への対応が終わったあと、アメリカを含む加盟国はWHOの一連の対応について問題点を検証するべきだという考え方を示しました。
台湾の陳建仁副総統によると、台湾は昨年12月31日、武漢ウイルスの人から人への感染についてWHOに警告。台湾の医師らは武漢の医師らが罹患していると把握していたが、WHOはその情報を確認しようとしなかったと述べています。
ネットでは、テドロス事務局長の発言を時系列で並べていたりするのが出回っていたりします。一例を挙げると次のとおり。
1/19 人から人への感染リスクは少ない確かにテドロス事務局長の一連の発言は中国寄りであるのみならず、武漢ウイルスの危険性を前もって警告するというよりは、後追いで論評するレベルであり、正直役に立ったとは言い難い。
1/22 緊急事態には当たらない
1/28 WHOは中国政府が迅速で効果的な措置を取ったことに敬意を表する
1/29 中国から外国人を避難させることは勧めない
1/31 渡航や貿易を不必要に妨げる措置をすべきではない
---- 人の行き来を維持し国境を開放し続けるべきだ
---- 中国の尽力がなければ中国国外の死者は更に増えていただろう
---- 中国の対応は感染症対策の新しい基準を作ったともいえる
---- 中国国外の感染者数が少ないことについて中国に感謝しなければいけない
2/01 大流行をコントロールする中国の能力に信任を置いている
2/04 武漢は英雄だ
---- 中国以外の国々は感染者のより良いデータを提供しろ
2/05 740億円の資金をWHOに投資しろ
2/08 致死率は2%ほどだから、必要以上に怖がることはない
2/10 イギリスとフランスはもっと危機感を持て
2/12 特定の地域を連想させる名前を肺炎の名称とするのは良くない
2/13 中国のたぐいまれな努力を賞賛する
2/18 新型ウイルスは致命的ではない
2/24 パンデミックには至っていない
2/27 中国の積極果敢な初期対応が感染拡大を防いだ
2/28 「パンデミックの可能性がある」
---- 「すべての国は備えに集中しろ」
---- 「封じ込めらられる可能性は狭まっている」
3/25 「われわれは最初の機会を無駄にした」
3/26 「1か月前か2か月前に対応していなければならなかった」
3/27 「すべての国で積極的な行動がなければ、数百万人が死亡する可能性がある」
4/03 「マスクを使うべきかの指針に変更を加えるべきかどうかを見極める」
4/05 「中国は毎日科学的なデータを発表、提供している」
4/07 「マスクは特効薬でない。パンデミックを止めることはできない」
4/09 「我々は天使ではなく人間。間違うこともある」
---- 「私に対する中傷はすべて台湾から行われてきた。断固として抗議する」
4/10 「致死率はインフルエンザの10倍と推定されこのウイルスの危険だ 」
2.WHOは公衆衛生より政治を優先した
4月10日、アメリカのトランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、アメリカ政府からWHOへの拠出金の見直しを視野に入れた是正策を来週中に発表すると述べました。
アメリカの政治紙「ポリティコ」によると、トランプ政権はWHOへの拠出金停止や、拠出の際の審査の厳格化、そしてWHOに代わる保健衛生関連の国際機関の設立を検討するなどの「懲罰的」な内容になる見通しとしています。
トランプ大統領は、一連の不満を中国の習近平国家主席とWHOのテドロス事務局長に直接伝えたことも明らかにしました。また、テドロス事務局長がウイルスを政治化しないでほしい」と述べたことについても、「アメリカはWHOに毎年3億~5億ドルも拠出してきた。中国の拠出額は4000万ドル以下だ……政治化しているのはテドロス氏のほうだ。WHOは中国寄りで、中国の主張を受け入れてばかりいる。不適切だし、アメリカ国民に対して不公平だ」と不満をぶちまけています。
前述したテドロス事務局長の一連の発言をみても、中国へは賞賛の言葉を向けても、中国以外の国へは批判ばかりです。勿論、そうでないコメントもあるかもしれませんけれども、それが取り上げられない時点で、偏っていると見做されているということでしょう。
3.台湾が個人攻撃をしたと見せかける情報工作であるのは明白だ
4月9日、台湾はテドロス氏に謝罪を要求しました。
これは、8日、テドロス氏がジュネーブでの記者会見で「3ヶ月以上にわたり脅迫や人種差別攻撃を受けており、攻撃は台湾から来ている」と述べ、台湾の外交部が「私を非難している」とも述べたことが発端です。
けれども、テドロス事務局長は自身への中国寄りだとの批判に、「すべての国に寄り添っている」とか「中国寄りではない」と述べているのですから、台湾に対しても「寄り添う姿勢」を見せてしかるべきでしょう。
それでも、台湾の外交部が非難しているというのなら、それなりの証拠を出す必要があると思います。
その辺り台湾はきちんと反論しています。
4月10日、台湾の法務部調査局の情報セキュリティー部門の張尤仁主任は記者会見し、中国のネット工作員が関与した疑いが強いと表明しました。
テドロス事務局長を批判した投稿はいずれも台湾の健康保険証カードの一部の画像を添付したり、「台湾人を代表して謝罪する」などと、自らが台湾人だとことさらに強調していたそうなのですけれども、過去の投稿などを検証すると、台湾ではなく中国で使われる字体が目立ったそうです。
台湾法務部捜査部門は、これら台湾出身者になりすました多数のネットユーザーの存在を突き止め、これらユーザーを追跡し、中国本土にいることを割り出したとしています。
これらのことから、張尤仁主任は「台湾が個人攻撃をしたと見せかける情報工作であるのは明白だ」と述べています。
これに対し、中国国務院・台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は台湾独立志向を持つ与党・民進党系のネット工作員が「WHOと責任者に悪質な攻撃を仕掛けた……人種差別的な言論を広げた」などと批判し、武漢ウイルスを利用して台湾独立運動を行っているとも反発しています。
これについて、テドロス事務局長は「争っている時ではない。お互いに協力すべきだ」といえなければ、「すべての国に寄り添っている」ことにはなりません。
先日都市封鎖解除された武漢で、また感染者が増加し、再封鎖されたという話もあります。それでも、テドロス事務局長が中国賞賛を続けるかどうか。
テドロス事務局長によって、WHOの評判や信頼が地に墜ちたことは間違いなさそうですね。
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