

1.生産拠点の国内回帰
4月7日、政府は新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一つに、企業による生産拠点の国内回帰を後押しする費用などとしておよそ2400億円を盛り込みました。
対策から該当部分を抜粋すると次のとおり。
1.サプライチェーン改革このように、一国依存度、海外依存度の高い製品、部材の生産を国内に持ってくる政策ですね。武漢ウイルスのパンデミックによって、医療器材を初めとしてマスクですら戦略物資となってしまっている昨今、国内回帰は良い政策だと思います。
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、マスク等の衛生用品も含めた我が国のサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことを踏まえ、複数年にわたる取組により、国内回帰や多元化を通じた強固なサプライチェーンの構築を支援する。
具体的には、一国依存度が高い製品・部素材について生産拠点の国内回帰等を補助する(中小企業への補助率3分の2、大企業は2分の1等)とともに、マスクやアルコール消毒液、防護服、人工呼吸器、人工肺等国民が健康な生活を営む上で重要な製品等の国内への生産拠点等整備の補助率を引き上げる(中小企業への補助率4分の3、大企業は3分の2)。
また、海外依存度が高い医薬品原薬等の国内製造拠点の整備も支援する(補助率2分の1)。さらに、我が国に供給する製品・部素材で、一国依存度が高いものについて、ASEAN諸国等への生産設備の多元化を支援する(中小企業への補助率3分の2、大企業は2分の1等)。
加えて、一国依存度が高い部素材の代替や使用量低減、データ連携等を通じた迅速・柔軟なサプライチェーンの組替え等、サプライチェーン強靱化に資する技術開発を行うとともに、レアメタルの確保・備蓄を進める。
・ サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金(経済産業省)
・ 医薬品原薬等の国内製造拠点の整備のための製造設備の支援(厚生労働省)
・ 海外サプライチェーン多元化等支援事業(経済産業省)
・ サプライチェーン強靱化に資する技術開発・実証(経済産業省)
・ 東アジア経済統合研究協力(サプライチェーン強靱化・リスク管理等)(経済産業省)
・ 生産拠点の国内回帰等を踏まえた企業のRE10021等に資する自家消費型太陽光発電設備等の導入による脱炭素社会への転換支援(環境省)
・ 希少金属(レアメタル)備蓄対策事業(経済産業省)
・ 中小・小規模事業者への感染症対策を含むBCP(事業継続計画)策定支援(経済産業省)
2.中国依存を見直す
中国から日本企業が撤退することについては、中国自身も気にはしているようです。
4月9日、中国メディアの百度は「中国からの日本企業撤退を促すこと」が日本政府の緊急経済対策の一環だと紹介する記事を掲載しました。
記事では、武漢ウイルス問題が発生してから実施されたある調査結果を紹介し、回答した日本企業のうち、約37%が中国以外の国からの部品調達を検討していると答えたとし、「せっかく日中関係が改善されていたところなのに……日本企業を引き留めるならこの1ヶ月がカギ」と提言しながら、日本政府は今回の政策により、改善の見られていた日中関係に水を差そうとしていると苦言を呈しています。
それだけ逃げられるのが嫌がっているということです。
けれども、中国から逃げ出そうとしているのは日本だけではありません。
イギリス王立国際問題研究所のロビン・ニブレット所長は、日本経済新聞の取材に「武漢ウイルスが終息しても、世界経済がV字回復するかは疑問だ……中国に依存したサプライチェーンを見直し、脱炭素を真剣に考える切っ掛けになる」と指摘しています。
国際通貨基金(IMF)は4~6月期に中国経済が平時に戻ると想定しているのですけれども、これについても、ニブレット所長は中国の成長率が1~3月期に3%台へ急落する可能性があり、年間でも鈍化した分を完全には取り戻せないと指摘。「中国は輸出主導から消費主導の経済に移行しており、内需への影響が尾を引く」との見通しを示しました。
また、米中が貿易戦争の第1段階の合意に達したことは「休戦にすぎない……アメリカは中国による世界経済への影響力拡大をそぐのが目的で、今後10年は対立が続く」と予測しています。
今回の武漢ウイルスのパンデミックでは欧州も激おこですからね。パンデミックが収束したときには対中包囲網ががっつり出来上がっているのかもしれません。
3.コロナ無職を農家が受け入れ
中国との縁切りが進めば、当然ながらと中国の労働力も無くなっていくことになります。それ以前に武漢ウイルス感染拡大を抑えるために、中国人の入国が制限されています。これによって影響があると思われる産業の一つに農業があります。
人手不足が深刻化してる農業は、技能実習生の名目で外国人労働者を安く雇って凌いできました。けれども、今回の武漢ウイルスで中国人労働者などが入国できなくなり更に窮地に陥っています。
そこで農業は武漢ウイルスの影響で営業を縮小する観光業や飲食サービス業などから農業分野に労働力を回すという新たな取り組みを始めています。
長野県のJA佐久浅間は、地元の軽井沢旅館組合と協力し、人材確保を始めています。宿泊施設は、各従業員に農家での就労希望の意向を尋ね、希望する場合は出勤可能日などの情報をJAに提出。JAは農家にその情報を示し、条件が合えば面接などを経て農家が雇用するという寸法です。
更にJAは全国にリゾートホテルを展開する星野リゾートとの連携も検討を始めています。JAは、従業員の雇用確保に悩む星野リゾートに農家や選果場などの仕事を紹介するとして、既に、雇用条件面や希望人数など協議を始めています。
また、青森県は営業自粛する観光業や飲食サービス業から労働力を農業分野に回す人材マッチング事業を始め、青森市の無料職業紹介事業・あおもり農林業支援センターに窓口を設置。センター職員が観光業、飲食サービス業、運送業を巡回し声掛けして、短期労働力のマッチングを後押しするとしています。
シャープやトヨタがマスクを作る御時世です。或いは、人材の異業種へのマッチングのみならず、観光業が農業分野にも進出する手もあるかもしれませんね。
この記事へのコメント
上手くいく筈もありません。搾取構造が日本人には馴染みませんし、炭鉱労働やタコツボでこりごりしている
経験を国民が共有しているので、借金を抱えている人や、連れてこられた人々が中心になると思われます。
労働条件が改まっているのであれば、良いイメージを広報して行かなくてはなりません。
首都圏の飲食・小売等が、農家とのコネクションを求めるのは、産直野菜や自分達の欲しい品種の生産でしょうから
農家の支配下にはいるのではなく、首都圏の飲食や小売が農業に参画して自ら人を出し雇用を支え、かつ
農家のアドバイスを受けて、農家に土地賃貸と指導手数料を払う方が、時代の要請に応えていると思われます。
もちろん労働者は、働いても土地やノウハウが自分のものにならず定着しないので、都会へ帰ることが前提です。
将来の仕入れに際しての人脈構築にはもってこいでしょう。JAへの出向も考えられます。
この際の土地の賃貸を国家として支援して、情報を管理し農地の効率利用を考えれば一石二鳥でしょう。