感染拡大が続くアメリカと抑え込んだ武漢第一波

今日はこの話題です。
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1.アメリカの武漢ウイルス感染者100万人越え


4月28日、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学は、武漢ウイルスによる国内感染者、死者の集計を行い、死者数は5万8365人。感染が確認された人の数は世界最多の100万2498人と発表しました。

アメリカ国立公文書館によると、ベトナム戦争中に戦闘や、事故などのその他要因で死亡したアメリカ人の数は5万8220人とされますから、武漢ウイルスによる犠牲者は、ベトナム戦争を超えたことになります。

また、感染者が100万人越えとは物凄い数字ですけれども、無症状で検査すらしていない潜在的感染者となるともっと多い可能性も示唆されています。

4月23日、ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事は、ニューヨーク州で武漢ウイルスの抗体検査を無作為抽出で行ったところ、ニューヨーク市の住民の5人に1人以上が感染している可能性があると明らかにしました。

クオモ知事によると、抗体検査は州内各地のスーパーの顧客3000人を無作為に選び行われたのですけれども、その結果、約14%が陽性反応を示し、ニューヨーク市内ではその割合が21%に上ったそうです。

この割合をニューヨーク州やニューヨーク市に当てはめると、州全体で約260万人、ニューヨーク市内で約170万人が感染した計算になります。

世界に先駆けていち早く、1月31日に中国からの入国禁止を出し、2月2日に緊急事態宣言を出したアメリカでこれですからね。武漢ウイルスの封じ込めの難しさが分かります。

人口3.282億のアメリカで感染確認が100万人。割合では0.32%。抗体検査に基づく潜在感染者では14%とみて4594万人。

物凄い人数ですけれども、集団免疫獲得の目安とされる50%超にはまだ全然及ばない数字です。


2.武漢の第1波はほぼ終息


4月27日、国立感染症研究所は、武漢ウイルスのゲノム分析疫学調査結果を発表しました。

これは、確定された武漢ウイルスのゲノム配列上にランダムに発生する変異箇所の足跡をトレースすることによって、感染リンクの過去を遡るというものです。

武漢ウイルスについては、世界各地の研究所においてそのゲノム配列が解読され、4月16日現在、4511患者のゲノム配列が調査・登録されています。

国立感染症研究所は、国内各地の施設から陽性検体を収集し、562患者においてゲノム解読を実施。それらと世界のゲノム情報を統合してウイルスの塩基変異を抽出し、ウイルス株の親子関係を示す系統図を作成しました。

その結果、武漢ウイルスの変異速度は現在のところ1年間で25.9箇所の変異が見込まれると推定しているそうです。

実際、武漢ウイルスは、2019年末の発見から4ヶ月ほどの期間を経てゲノム全域に少なくとも9塩基ほどの変異がランダムに発生しているとしています。

作成した系統図では、1月初旬に中国・武漢から発したウイルス株を基点にして、日本各地で初期のクラスターが複数発生したものの消失へと転じていることが確認され、さらに、2月5日から本格的な検疫を開始したクルーズ船・ダイヤモンド・プリンセス号の乗客・乗員896名から検出された陽性患者148名のうち70名分のゲノム情報を確定、武漢株のゲノム情報と比較した結果、船内の大規模感染を引き起こした株のゲノムは1塩基のみ変異していたことが明らかになりました。

現在のところ、ダイヤモンド・プリンセス号を基点とするウイルス株は検出されておらず、3月末から4月中旬頃には、中国経由(第1波)の封じ込めに成功したとしています。

ところが、それに重なるように、3月中旬頃から全国各地で"感染リンク不明"の孤発例が同時多発で検出されはじめました。これは、海外からの帰国者経由での"第2波"の流入が主因であり、数週間のうちに全国各地へ伝播して"渡航歴なし・リンク不明"の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測しています。

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3.武漢ウイルスの封じ込めに成功したニュージーランド


日本以外で武漢ウイルスの封じ込めに成功したとされる国はいくつかありますけれども、最近、注目を集めている国の一つがニュージ―ランドです。

4月20日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は武漢ウイルスの市中感染を封じ込めるという「ほとんどの国ができなかったことを達成した」と述べ、27日深夜から警戒度を最高水準の「レベル4」から1段階引き下げ、外出規制を一部緩和しました。

ニュージーランドは、累計感染者が1124人、死者が19人で、最近の感染者は1週間以上にわたり1桁台の増加にとどまっていることから限定緩和に踏み切ったようです。

「レベル3」では、学校は「受け入れ人数を制限」して再開。事業も再開できるものの「顧客との物理的な接触」は認められません。10人までの集会は、結婚式や葬儀に限り許可されます。また個人の移動も引き続き制限され、仕事や学校、食料品や必需品の購入、運動のための外出以外は自宅待機。通勤などで公共交通機関を利用する場合でも、他人と2メートル離れなければならないとのことです。

また、3月19日から始まった外国人旅行客に対する国境閉鎖についても、そのままですから、規制の程度は、今の非常事態宣言下の日本と大差ありません。

逆にいえば、ニュージーランドが行っていた「レベル4」の警戒態勢すら取らず、「レベル3」の警戒度のままで、ここまで感染を抑え込んでいる日本は、世界基準からみれば異常に映るのかもしれません。

今週に入って、新規感染者の勢いが鈍ってきている日本ですけれども、世界に先駆けて警戒体勢の一部緩和をしたニュージーランドは一つの先行指標として注目を集めるような気がします。

もしも、日本の非常事態宣言の解除基準がニュージーランドに倣うのならば、新規感染者を一桁にまでならないといけないということになりますけれども、それが5月6日までに出来るかというと、正直厳しいかなという印象を持っています。

それでも、感染拡大を食い止め、封じ込めができなければいつまでも今のままです。いましばらく自粛を続け、蔓延させてしまった第二波を兎に角止める。今目指すべきはそこしかありません。


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