

1.意図的に過少報告
アメリカの情報当局は、中国が武漢ウイルスの感染例とウイルス感染症による死者数を過少報告し、感染の広がりの実態を隠蔽していたと断定、機密報告をホワイトハウスに提出したことが明らかになりました。
詳細は明らかになっていないのですけれども、匿名を条件に概要を明かした当局者によると、報告書の要点は、中国による感染者数と死者数の公表が、意図的に不正確に行われたことで、中国の数字は誤魔化しだと結論しているようです。
ジョンズ・ホプキンス大学がまとめたデータによれば、中国発表の感染者数は約8万2000人、死者数は約3300人となっているのですけれども、既にアメリカは感染者約21万3000人、死者は約4000人となっています。
まぁ、中国の数字が出鱈目なのは今に始まったことではありませんけれども、アメリカ情報当局から正式に隠蔽だと断定された意味は軽くはありません。
4月1日、トランプ大統領は記者会見で、「彼らの数字は若干少なめとの印象を受ける」と述べましたけれども、件の報告書については受け取っていないと発言しています。
いずれにせよ、中国を責めるカードを手にしたことには違いなく、今後中国に更なる圧力を掛ける可能性は高いと思います。
2.中国指導部の対立
3月23日、中国共産党指導部は武漢ウイルス感染防止に関する会議を開きました。この中で、李克強首相は中国本土での感染拡大は基本的に抑えられているとしたうえで、新たな病例が出た際には「透明性のある情報を公開し、病例を隠してはならない」と各省に指示しています。
公式には、湖北省では5日続けて新たな感染者が確認されていないとなっていますけれども、中国政府のガイドラインでは、検査で陽性でも無症状の人は感染者とカウントしないことになっています。
こうした対応に住民からは疑念の声が上がっており、李克強首相の指示は、これらを払拭する狙いがあるのではないかと見られています。
また、李克強首相は「専門家たちは、この感染症が、かつてのSARSのように突然終息する可能性は低いとみている」とも述べるなど慎重姿勢です。
習近平主席が、武漢ウイルスは収束した的なアピールを続ける脇で、李克強首相が「突然終息はしない」と否定する。共産党指導部内で見方が分かれています。
3.中国著名人が行方不明
武漢ウイルスに対する中国政府の対応には、中国国内からも批判の声が上がっています。
清華大学の許章潤教授は、2月に「怒りの人民はもう恐れない」という文章で「習近平の統治が中国を世界の孤島に徐々にしている……30年以上前の改革開放の苦労によって切り開いた開放性が、習近平によってほとんど破壊された。中国の統治状態は前近代状態だ。門は閉ざされ、野蛮な人道的災難が絶えず発生し、中世のようだ」と批判。
また、法学者で公民運動家の許志永氏は「『権力狂人』の習近平は国家統治能力の実力がなく、『妄議罪』をでっち上げ、社会における諫言や改善のための意見を許さなくなった、習近平に中国のこれ以上の"安売り"を許さず早々に退任させよ」と主張しました。
更に、不動産大手・華遠集団の元総裁の任志強氏も、アメリカの華字サイト「中国デジタル時代」に習近平の武漢肺炎対応を批判する「化けの皮がはがれても皇帝の座にしがみつく道化」なる文章を発表し、「あそこに立っているのは、自分の新しい衣服を見せびらかそうとしている皇帝でもなく、衣服すら脱ぎ捨てても皇帝の地位にしがみつく道化である。自分が丸裸であるという現実を隠すために、恥部を隠す布切れを一枚、一枚掲げてみせるが、自ら皇帝の野心にしがみついていることは一切隠さない。私が皇帝になるわけではないが、あなたを滅亡させる決心はしている」と習近平主席を手厳しく批判しました。
任志強氏は、中国のドナルド・トランプと綽名されるほどの「放言癖」がある人物で、王岐山副主席が夜中に愚痴の電話をするほどの昵懇の仲。まぁ副主席という後ろ盾があればこその放言かもしれません。
けれども、政権批判をしたら唯では済まないのが中国です。
許章潤教授は軟禁され、許志永氏も公安に身柄を拘束されている、と伝えられていますし、任志強氏も3月12日以降連絡が取れず失踪。噂では当局に連行されたとも言われています。
4.習近平政権ピンチの噂
3月21日頃、香港のSUNテレビ(陽光衛星テレビ集団)主席の陳平氏が、SNSの微信(ウィーチャット)に転載した「緊急中央政治局拡大会議招集の提案書」という公開書簡が拡散しました。
提案書では「新型コロナ感染により中国経済と国際関係情勢が厳しくなったことを鑑み、習近平が国家主席、党総書記の職務を継続することが適切かを討論する政治局緊急拡大会議を開くべきだ」とし、「李克強、汪洋、王岐山による政治局拡大会議指導チームをつくり、会議の各項目任務の責任を負うべきだ」としています。
また、提案書は討論のテーマとして、次の問題を挙げているそうです。
・鄧小平の主張した「韜光養晦」路線について明確な回答をすべきか否か。一言でいえば、中国共産党の政治体制から真っ向から見直そうという内容で、民主化への指向を問う内容だと思われます。
・政治上、党が上か法が上か、執政党は憲法を超越できるか? を明確にするか否か。
・経済は、国進民退か、民進国退か?
・治安維持のために公民の基本権利を犠牲にするか否か。
・民間がメディアを運営することを認めるか?
・司法が独立すべきか、公民が政府を批判していいか、世論監督が必要かどうか、党の政治を役割分担した方がよいか、公務員の財産は公開すべきか否か?
・台湾との関係において、本当に統一が重要か、それとも和平が重要か?
・香港の問題において、繁栄が重要か、それとも中央の権威が重要か、香港の地方選挙完全実施を許してよいか否か?
この陳平氏の父親は習近平主席の父親の習仲勲の部下で、習近平主席とは40年来の付き合いともいわれる人物です。件の提案書は微信で拡散しただけでなく、実際に中央に提出されたという噂もあり、陳平氏は「自分が書いたわけではないが、党内でこの意見に賛同するものは少なくない」と語っているそうです。
5.習近平の命運や如何に
このように党内外から批判に晒されている習近平主席ですけれども、中国のネットでは、3月28、29日に、
「王岐山、王洋、朱鎔基ら長老らが手を組み、習近平に任志強の釈放と、習近平自身の退陣を迫った。習近平は"終身制"を放棄し、李強と胡春華を後継者に認定し、秋の五中全会で2人が中央委員会入りし、次の第二十回党大会でそれぞれ総書記と首相に内定している。そして任志強は釈放された」との噂が流れたそうです。
任志強氏についても、「アリババの元CEOの馬雲ら民営企業の"5大ボス"が"任志強釈放"を求める連名の意見書を出した」とか、「任志強の親友である王岐山が、自分の進退をかけて、任志強を釈放し、習近平に"国家主席終身制"を放棄するように迫った」とか「任志強は身柄拘束されたが、絶食して抵抗している」などという噂も流れたようです。
これら噂が本当であれば、大分習近平主席の首も危なくなっている可能性があります。もし、これで武漢ウイルスの再感染爆発が起ころうものなら、収束したと宣伝している手前、更に厳しい状況に陥ると思われます。
習近平の命運や如何に。要注目ですね。
この記事へのコメント