緊急事態宣言と必要不可欠

今日はこの話題です。
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1.緊急事態宣言発出

4月7日、政府は武漢ウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発出しました。

宣言についてはこちらで述べられていますけれども、対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県
。期間は一ヶ月が目安です。

詳しい内容については色んなところで取り上げられていますので、詳述はしませんけれども、生活必需品を販売するスーパーなどはそのまま販売を続けられます。

大雑把にいえば、物流は止めないが、人の移動や大規模イベントの自粛を要請するということで、3月にやっていた自粛とそれほど変わるものではありません。




2.都市封鎖できない

4月6日、菅義偉官房長官は記者会見で、「日本の法制度では欧米のロックダウンのように強制力を持って都市を封鎖する仕組みはない。ここは明確に違う」と述べ、緊急事態宣言を発令した場合でも、都市封鎖の状態にはならないとの認識を示しています。

緊急事態宣言が出されると、外出やイベントに対しては、特別措置法に基づく要請になるのですけれども、外出については第45条、イベントその他については第45条2項がそれに当たります。

特別措置法45条は次のとおりです。
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

4 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。
45条には外出について「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないこと」と規定しているのですけれども、守らなくても罰則はありません。

また、45条2項で「都道府県知事は……、学校、社会福祉施設、興行場、その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者または、当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限もしくは停止、又は催物の開催の制限もしくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる」とあり、これを根拠に、イベント、学校、福祉施設、興行場その他が制約対象となっています。けれども、ここでも罰則はありません。

ただ、45条4項で、指示を行ったら、事業者名などを知事がホームページなどに「公表」するよう定められていますから、まぁ、晒し上げ効果くらいはあるかもしれません。

また、「その他の政令で定める多数の者が利用する施設」というのは、主に以下のものが指定されています。

劇場、映画館、演芸場、展示場、百貨店、スーパーマーケット、ホテル、旅館、体育館、ボーリング場、博物館、美術館、図書館、キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、理髪店、質屋、自動車教習所、学習塾など。

要するに、これらは、政府が考える「不要不急のもの」だということです。


3.一番最初にいらない仕事

4月5日、お笑いコンビ、爆笑問題の太田光はTBSの「サンデー・ジャポン」で、小池百合子都知事が不要不急の外出自粛を要請した事について、「われわれ、お笑いとかバラエティーとか芸人は、とにかく一番必要のない仕事なわけで。不要不急って言われると、一番最初にいらないっていう仕事なんで。この番組だって、どうかね?ってみんな思うんだけど」と述べました。

つまり、国民の方も、芸能は「不要不急のもの」だと考えているということなのでしょう。極限すれば「最低限の生命維持」に必要なもの以外は全て「不要不急のもの」だということになります。

けれども、これがどの国もそうかというと、必ずしもそうとは限りません。

ドイツでは、武漢ウイルスによる経済不況への対策として、総額7500億ユーロの財政パッケージを出動させますけれども、フリーランサーや芸術家、個人業者への支援に注目が集まっています。

というのも、このほど発表されたドイツの財政パッケージには個人・自営業者向けの支援として最大500億ユーロ(約5兆8844億円)が含まれているからです。

ドイツのモニカ・グリュッタース文化相は「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」と断言し、「非常に多くの人が今や文化の重要性を理解している……私たちの民主主義社会は、少し前までは想像も及ばなかったこの歴史的な状況の中で、独特で多様な文化的およびメディア媒体を必要としている。クリエイティブな人々のクリエイティブな勇気は危機を克服するのに役立つ。私たちは未来のために良いものを創造するあらゆる機会をつかむべきだ。そのため、次のことが言える。アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」と述べ、文化機関や文化施設を維持し、芸術や文化から生計を立てる人々の存在を確保することは、現在ドイツ政府の文化的政治的最優先事項であると主張しています。

勿論、文化相という立場にある以上、多分にポジショントークが含まれているのかもしれませんけれども、もし、「アーティストは生命維持に必要不可欠な存在」と羽生田文科相が発言して、それが日本国民にすんなりと受け入れられるのかどうかと問われれば、正直なところ首を傾げてしまいます。

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4.人はパンのみにて生くるにあらず

緊急事態宣言による外出自粛で、臨むとも臨まざるとも関わらず、家にいることが多くなります。まぁ、いくつかの会社ではテレワークに移行するなど、ある種の「強制働き方改革」が行われているともいえるのですけれども、筆者は、それ以上に「自分にとって本当に必要なものは何か」と自身に問いかける機会にもなっているのではないかと思うのですね。

自宅待機とて、武漢ウイルスに感染した人ばかりではありませんから、体は元気でも外出できない「もどかしい」状況に置かれる訳です。もちろんその時間をどう使うかは其の人の自由ですけれども、その時間が本当に自分に大切なものは何かを見つめ直させる。そんな気がします。

イエス・キリストは「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる」と述べました。

まぁ、ドイツが生命維持に必要不可欠な存在とするアーティストが「神の口から出る一つ一つのことば」であるとは言いませんけれども、単なる生命維持だけが必要不可欠と考えるよりは、もう一段違った精神的態度のようにも思えます。

果たして、日本は単なる生命維持さえ出来れば、それで良しとするのか。それとも他の何かに価値を見出すのか。ドイツのように「アーティストは生命維持に必要不可欠な存在」と言い切れるのは、それはそれで凄いと思います。

日本人は水と安全はタダだと思ってると指摘した山本七平氏ではありませんけれども、武漢ウイルスによって、空気も安全もあたり前ではないことが、誰の目にも明らかになりました。

武漢ウイルスが収束した後、日本人の意識が切り替わるのかどうか。注視していきたいと思います。

この記事へのコメント

  • ス内パー

    日本におけるアーティストは不要不急でいいんじゃないですかね。
    音楽、文学、詩学、このあたりは趣味人の領域であり、兼業副業が当たり前というのが日本人の古来からの意識ですし。
    不要不急の兼業だからこそ下手な思想や目先の金のとらわれずに自由に作品を作り続けてきた(そして下手に専業にした人はアカく反日に染まった)ことを恥じることはなく、むしろ誇るべきかと。

    まぁ不要不急か、と支援が不要か、には相関ないので必要な支援か無用な支援か反日への餌やりで害悪かは別口で議論するべきでしょうけどね。
    2020年04月08日 18:35
  • 特になし

    フルトヴェングラーやカラヤンの伝記を読むと、対戦で絶望しきった民衆がいかに彼らの音楽で希望を取り戻したかが描かれており、もしかすると日本ほど大衆芸能が盛んではないことの裏返しとも言えるのかもしれません。ともかくお笑いやj-popとはちょっと次元の違う問題かと思います。
    2020年04月09日 05:15

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