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1.欧州株の感染力は武漢株より強い
4月29日、アメリカのロスアラモス国立研究所は武漢ウイルスについて、14の変異を特定し、その中の1つの変異株(D614G)が欧州株として2月初めから欧州で感染拡大し、世界中に広がったと指摘する査読前論文を発表しました。
武漢コロナウイルスは表面に「王冠(コロナ)」のような突起(スパイク)を持っていますけれども、この突起はスパイクタンパク質から成り、標的となる細胞表面の受容体(レセプター)結合と細胞侵入の中心的な役割を果たしています。
今回の研究論文はこのスパイクタンパク質の変異をゲノム情報から解析したものです。
ロスアラモス国立研究所は世界中の患者6346人から採取された新型コロナウイルスのゲノム情報を解析して、スパイクタンパク質の14の変異を特定。欧州で被害を広げているD614G株が他の地域でも最も優位的な変異株になっていることが分かったとしています。
論文では「D614Gの分布は驚くべき速さで増しており、もとの武漢株と比較してより迅速に拡散できる適応度の優位性を示している」と分析し、論文の筆頭著者のベティ・コーバー氏は「新興ウイルスが非常に速く広がり、3月にはパンデミックの支配的な株になったことを見ると心配だ。この変異株が流行し始めると、それまでにその地域で広がっていた株に取って代わる。D614Gの感染力は強い」と述べています。
2.武漢ウイルスの種類
武漢ウイルスの変異については各国で研究され、様々な型があると報告されています。
2月21日、中国科学院西双版納熱帯植物園の研究者、郁文彬氏らの研究班がグローバルイニシアチブ(GISAID)に登録された93のゲノム情報を分析し「ゲノム情報に基づく新型コロナウイルスの進化と感染の解析」という論文を発表。それによると58のハプロタイプ(半数体の遺伝子型、塩基の組み合わせ)が確認され、5つのグループに分類できたそうです。
そして、3月3日、北京大学のXiaolu Tang氏らの研究班が「新型コロナウイルスの起源と継続する進化」という論文をオックスフォード・アカデミックのナショナル・サイエンス・レビューに発表しています。
この論文では、武漢ウイルスのゲノム情報はコウモリや、ウロコで覆われた希少な哺乳類センザンコウを宿主とするウイルスに近いことを指摘し、ウイルスの2つの主要なタイプであるL型とS型に進化しており、L型が7割以下、先祖に近いS型は3割以下で、L型の方が普及していると分析しました。
続いて、4月8日、イギリス・ケンブリッジ大学のピーター・フォスター博士らの研究チームはイギリス科学アカデミー紀要に掲載された論文などで「ウイルスは3つに大別でき、コウモリから人間に感染したのは9月13日から12月7日の間」との見方を示しました。
論文では、グローバルイニシアチブ(GISAID)で共有されている160人分の新型コロナウイルスのゲノムを遺伝的ネットワーク手法で分析したところA、B、Cの三つの型があると報告。それぞれ型は次の特徴があるとしています。
A型:アウトブレイクの根源。中国雲南省のコウモリやセンザンコウから検出されたウイルスに最も近い。今回のパンデミックのエピセンター(発生源)とされる中国湖北省武漢市でも見つかったが、武漢市で流行したのはB型。アメリカやオーストラリアの患者からも派生したA型が見つかる。ケンブリッジ大学のピーター・フォスター博士は解析する新型コロナウイルスのゲノムを1001人分に広げた結果、変異する速度などから「95%の確率でコウモリから人間に感染したのは9月13日から12月7日の間とみられる」と話しています。
B型:A型から変異。武漢市を中心に中国や近隣諸国に蔓延。免疫学的または環境的に東アジアの人口の大部分に適応する可能性がある。
C型:B型から変異。イタリア、フランス、スウェーデン、イギリスの初期の患者にみられる主要な欧州型。初期の中国本土のサンプルからは見つからなかったが、シンガポール、香港、韓国では検出されている。
更に、4月14日、アイスランドで陽性と確認された1221人のウイルスのゲノム情報を解析した結果、大まかに分けて7つのハプロタイプが流行していることが判明。
4月28日には、インドの国立生物医学ゲノミクス研究所の研究班が55カ国3636個のゲノム情報を解析した結果「祖先のOタイプから10タイプに変異。うちA2a(いわゆる欧州株)が全ての地域で支配株に」と指摘する論文をインド医学研究評議会(ICMR)の医学雑誌に発表すると地元紙が報道しています。
3.通常では感知されないS型とK型
もう変異だのタイプだの、もう訳が分からなくなっている武漢ウイルスですけれども、日本は既にウイルスの手段免疫を獲得しているという説が注目を集めているようです。
欧米諸国と比べて、日本の死亡者数や死亡率がケタ違いに少ないですけれども、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学の高橋淳教授らの研究グループは、感染力や毒性の異なる3つの型の武漢ウイルスの拡散時期が重症化に影響したとし、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したと述べています。
京大の研究チームは「ウイルス干渉」に着目し、 研究プラットホームサイト「Cambridge Open Engage」に「集団免疫と抗体依存性亢進によるSARS-CoV-2の逆説的動態(Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement) 」という論文を発表しました。
ウイルス干渉とは、疫学的干渉(epidemiological interference)とも呼ばれるもの、例えば、インフルエンザの流行はA型・B型および亜型、さらに、他のウイルス性上気道炎(ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、RSV、コロナウイルス等)との間で相互作用を起こすという現象です。
これにより、武漢ウイルス(コロナウイルス)に感染した場合、インフルエンザに感染しないとされています。
上久保教授らは、インフルエンザの流行カーブの分析した結果、これまで感知されなかった「S型」と「K型」の新型コロナウイルス感染の検出に成功。このうちK型が、集団免疫を確立し、最も毒性の強いG型から保護するというのですね。
上久保教授は「S型へのTリンパ球の細胞性免疫にはウイルス感染を予防する能力がないが、K型への細胞性免疫には感染予防能力がある」とし、「S型やK型に対する抗体にはウイルスを中和し消失させる作用がなく、逆に細胞への侵入を助長する働き(ADE:抗体依存性増強)がある……S型やK型は感知されないまま世界に拡大した。S型は昨年10~12月の時点で広がり、K型が日本に侵入したピークは今年1月13日の週」だとしています。そして、やや遅れて中国・武漢発の「G型」と、上海で変異して欧米に広がったG型が拡散したと分析。
集団感染が最初に深刻化した武漢市が封鎖されたのは1月23日ですけれども、イタリアが中国との直行便を停止したのは2月1日、翌2日にはアメリカが14日以内に中国に滞在した外国人の入国を認めない措置を実施しました。
これに対し日本が中国からの全面的な入国制限を強化したのは3月9日。それまで「春節」を含む昨年11月から今年2月末までは中国からの入国をスルー。一説には、この間に184万人以上の中国人が来日したとの推計もああります。
上久保教授は「日本では3月9日までの期間にK型が広がり、集団免疫を獲得することができた。一方、早い段階で入国制限を実施した欧米ではK型の流行を防いでしまった」とし、欧米では、中国との往来が多いイタリアなどで入国制限前にS型が広まっていたところに、感染力や毒性が強いG型が入ってきたと述べています。
つまり、日本は武漢ウイルスの免疫を獲得できるK型が蔓延したがゆえに、現在、欧米に比べて武漢ウイルスが蔓延せず、欧州はK型をブロックしてしまったが故に、結果として武漢ウイルスが拡がってしまったというのですね。
なんとも、都合のよい話に聞こえますけれども、本当であれば心強い話です。
もしもK型というのがあるのであれば、それをK型によって獲得する免疫抗体を検知するキットを開発し、それで抗体検査を行えばよいかと思います。
続報に期待したいですね。
この記事へのコメント
集近閉はアカン