アメリカは中国と断交するか

今日はこの話題です。
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1.治療薬・ワクチン開発で日米協力


5月8日、安倍総理はアメリカのトランプ大統領と約45分間電話会談し、武漢ウイルスを巡り治療薬やワクチン開発、経済の再開に向けた取り組みで一層協力することで一致しました。

両首脳の電話会談は3月25日以来。政府は首脳間で確かめた治療薬やワクチンの連携を日米協力の柱のひとつとして重視するとしています。

厚生労働省は7日に武漢ウイルスの治療薬として「レムデシビル」を特例承認していて、アメリカに安定的な供給で協力を求めていましたから、その辺りの交渉もあったものと思われます。

ただ、現時点では供給能力は当面限られる見通しがされていて、日本は重症患者の治療に活用する方針としています。

レムデシビルとはアメリカの製薬会社のギリアド・サイエンシズが作っている薬で、元々はエボラ出血熱治療の目的で作られました。これまでは、何処の国でも承認されていなかったため、実際に医療機関では使用されておらず、臨床研究としてエボラ出血熱の患者に投与されたのみです。

レムデシビルはアビガンと同じく、ウイルスの複製に関するRNAポリメラーゼを阻害する効果があり、試験管内の実験で武漢ウイルスの活性を抑えることが分かっています。

これによりウイルスの増殖を抑え、症状を改善する効果が期待されているのですけれども、副作用として肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などの頻度が高く、重篤な副作用として多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧が報告されています。劇薬というか強い薬です。

レムデシビルのアビガンとの違いは、アビガンが口から飲む内服薬であるのに対し、レムデシビルは点滴で投与する薬であることです。従って、アビガンは自分で飲むことが出来る軽症から中等症の患者に使用して重症化を防ぎ、レムデシビルは人工呼吸器を必要とするなどの重症患者の死亡率を改善する効果が期待されているようです。

更に、レムデジビルは、人に対する使用例も多くはなく、副作用に関する知見も少ないことから、本当に命の危険に晒されているような方への使用を想定しているようです。


2.ワクチン狙いハッキング


5月13日、アメリカのFBIと国土安全保障省は13日、武漢ウイルス感染症を巡り、中国がハッキングなどを通じてアメリカのワクチン開発などのデータを盗み出そうとしているとして、捜査を始めたと公表しました。

FBIは声明で、中国政府とつながりのあるハッカーらが武漢ウイルスのワクチンや治療法、検査に関する知的財産や公衆衛生データの不正入手を試みていることが確認されたと表明。アメリカ国内の医療、製薬、研究部門が「主要な標的」だと指摘し、国内の研究機関や企業に対し、不正アクセスへの対応を強化するよう警告しました。

但し、実際の被害の有無には触れていません。

アメリカ政府当局者によると、ハッキング攻撃は遅くとも1月3日に始まったとのことですから、相当に早い段階です。

これは、中国の習近平主席が武漢ウイルスの防止指示を出したとされている1月20日、中国政府の"大本営発表"の1月7日よりも早い。

果たしてハッキングが習近平主席に伝わっていたのかどうかは分かりませんけれども、アメリカへのハッキングが本当であれば、中国がこの段階で武漢ウイルスが「ワクチンが必要なウイルスである」と認識していたことになります。

このFBIの警告に対し、14日、中国外務省の趙立堅報道官は、記者会見で「アメリカの中傷に強い不満と断固たる反対を表明する」強く反発。アメリカは、全世界で情報を盗み出すためにサイバー攻撃を行ってきたと指摘したうえで「中国はワクチン研究において世界トップクラスであり、中国のほうこそ情報を盗まれることを心配する理由がある……アメリカは命を救うことに集中すべきで、他国に罪を着せて責任転嫁をしないよう促す」と牽制しました。

中国の反発は相変らずです。


3.新たな対中制裁案


米中対立はエスカレートしています。

5月12日、アメリカ上院のリンゼー・グラム司法委員長およびジェームズ・インホフ上院議員ら複数の与党・共和党上院議員は、中国政府が武漢ウイルスの感染拡大の経緯に関し、アメリカなどによる調査に協力せず、自ら明確な説明をしなかった場合、対中制裁を科す権限をトランプ大統領に与える「COVID-19説明責任法案」を共同提出しました。

法案は、アメリカと同盟諸国、世界保健機関(WHO)など国連機関による調査に対し、中国が「全面的かつ完全な説明」をしたかを検証し、60日以内に議会に報告するよう義務付けるものです。

法案は、これらについて確認できなかった場合、トランプ大統領は「中国当局者の資産凍結」や「渡航制限」「査証の取り消し」「中国人に対する学生査証の発給停止」「米金融機関による中国企業への融資制限」「中国企業の米証券取引所への上場禁止」などのうち、少なくとも2つを即時実施できるとしています。

リンゼー・グラム司法委員長は、「中国は国際社会が武漢の研究所に立ち入って調査することを拒否している。彼らは調査官に発生の経緯を調査させることを拒否している。強制的にやらせない限り、中国が真剣に調査に協力することはないと確信している」と述べ、またジェームズ・インホフ上院議員も、「中国共産党は、このパンデミックにおいて果たした有害な役割について説明責任を負わねばならない……ウイルスの発生源と感染拡大に関する彼らの明白な欺瞞は、ウイルスの感染拡大が始まる中で世界の貴重な時間と命を犠牲にした」と批判しています。

これに対し、中国側はアメリカ産トウモロコシ輸入を見送るなどで対抗。

中国の業界調査会社、上海匯易の李強会長は、アメリカのトウモロコシ価格が10年ぶりの安値に下げ、中国にとっては大量輸入の良い機会ではあったが、ぎくしゃくする米中関係を理由に購入を見送ったとし、農業関連のオンライン会議で、「中国には400億ドル(約4兆2800億円)の購入を完了する力はある。しかしそのような購入は、友好的な雰囲気に基づかなくてはならない」と述べたようです。

これは、中国政府がオーストラリアからの食肉の輸入を一部停止したやり方と同じですけれども、武漢ウイルス禍で、各国が穀物の輸出制限を始め、一部で食料危機が囁かれる中、自分の首を絞める行為になる可能性もあります。

それ以前に、こんなやり方はアメリカ自身が黙っていないでしょう。

これについて、福井県立大学教授の島田洋一氏は「グラム氏は大物議員の纏め役で、ついに対中制裁法案を通す段階にきた。民主党も11月の選挙を控えるなか、経済損失を訴える有権者に『悪いのは中国だ』と強調せざるを得ず、党派を超えて矛先を中国に向けるだろう。中国側が、米農産物に触れることは、かえってアメリカ議会を刺激しかねない。アメリカによる厳しい制裁も考えられる」と指摘しています。

アメリカの与野党が「中国が悪い」で纏まらざるを得ない中、却って逆効果になってしまうような気がしますね。


4.関係を完全に断ち切ることもできる


更にアメリカは対中制裁だけでなく、その次も視野にいれている可能性もあります。

5月14日、トランプ大統領はFOXビジネスとのインタビューで、中国の武漢ウイルス対応について「中国には非常に失望した。中国はなすがままに任せるべきではなかった……折角素晴らしい通商合意を結んだのに、今はそう感じられない。協定署名のインクが乾かないうちに新型コロナの感染が広がったからだ」とし、習近平国家主席との関係は良好だが「今は彼と話したくない」とし、通商協定の再交渉には関心がないと強調しました。

さらに、中国に対し「われわれには多くの措置を講じることが可能だ。関係を完全に断ち切ることもできる……関係を断絶すれば、5000億ドルを節約できる」とも言明しています。

そして、武漢ウイルスについても、発生源よりも中国の対応を重視するとし「ウイルスの発生源が研究所だろうがコウモリだろうが、中国であることに間違いはない。中国はそれを阻止すべきだったし、できたはずだ」と批判しました。

ウイルスの発生源について、トランプ政権は、沢山の証拠がある、だとか、確証はないとは発言がブレているように見えます。あるいは、水面下で中国と交渉をしていて、中国の出方によって、強気に出たり、引いてみたりと、駆け引きをしているのかもしれません。

ただ、中国の初動対応については、一貫して拙いと批判していますから、トランプ大統領の発言のとおり現時点ではこちらを中心に責めるのでしょう。

また、ムニューシン財務長官は同じくFOXビジネスとのインタビューで「大統領は非常に懸念しており、全ての選択肢を検討している。ウイルスがアメリカの経済や雇用、国民の健康にもたらす影響をわれわれは心配している。大統領はアメリカの雇用と労働者を守るため全てのことを行う……非常に難しく複雑な問題で、より多くの情報が必要であることを大統領は明確にしている」とし、何が起こっているかを中国側はわれわれに理解させなかったが、米国民には全ての事実を知って理解する権利があると述べています。

現時点ではいきなり米中が完全に関係を断絶するとは、考え難いですけれども、先に述べた、共和党議員が議会に提出した「COVID-19説明責任法案」は、資産凍結や渡航制限、融資制限に上場禁止など、人と物および金の流れを止めるものであり、これらのどれか2つではなく、全部行われたら、事実上の断交と言ってよいのではないかと思います。

日本も、米中はもはや対立の次元を超え、米中戦争に突入したという認識を持ったほうがよいのではないかと思いますね。


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