武漢ウイルスはメディアリテラシーを高める

今日はこの話題です。
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1.藤田医大臨時会見


5月20日、藤田医科大学はアビガンの特定臨床研究の中間解析に関する報道についてオンライン記者会見を行い、20日付の共同通信の記事と、ブルームバーグの記事に強い懸念と抗議を行いました。

問題としたのは、共同通信の「アビガン、有効性示せず コロナ治療の臨床研究 月内承認『前のめり』」とブルームバーグの「5月中のアビガン承認は時期尚早、根拠欠く-臨床研究の藤田医大教授」の記事です。

これらについて、湯澤由紀夫・藤田医大病院病院長は、共同通信の記事について「介入研究の理解は非常に誤解を招きやすいところもあるが、誤解を招きかねない表現があったので、報道について修正を検討していた」と述べ、湯沢由紀夫病院長と研究責任者の土井洋平・微生物学/感染症科教授の連名で「有効性の判定を主目的としていない……臨床研究の安全性を担保し、研究を続行する科学的妥当性を評価するために行われる」とのコメントを発表しています。

件の共同通信の記事はこちらにありますけれども、藤田医大がいう「誤解を招きかねない表現」とは恐らく次の部分ではないかと思われます。
国の承認審査にデータを活用できると期待された臨床研究で、明確な有効性が示されていないことが19日、分かった。複数の関係者が共同通信に明らかにした。感染した著名人がアビガンの投与後に回復したと公表し、安倍晋三首相は「5月中の承認を目指す」とするが、現時点で薬として十分な科学的根拠が得られていない状況だ。……

……複数の関係者によると、今月中旬に厚生労働省に報告された中間解析結果で、ウイルスの減少率に明確な差が出なかった。研究は今後も続けることが決まった。
藤田医大の土井洋平教授は、会見で中間解析には、「予期しない安全性上の問題」、「倫理上の問題」の有無を把握し、研究続行の判断をする目的があると説明し、「現状ではいずれにも該当せず、研究を最後まで行うという勧告をいただいた……中間解析は有効性についてあるかないか、あるいはどの程度なのかを確認するためのものではない。時期尚早という報道が出ているが、最後まで研究を続行するのであり、『だから有効ではない』ということではない」と説明しています。

藤田医大が「中間解析は有効性の判定を主目的としていない」としているのに対し、共同通信は「明確な有効性が示されていないことが分かった」ですからね。確かに誤解を招きかねない表現です。


2.事実無根のブルームバーグ記事


また、藤田医大はブルームバーグの記事について、「私どもが安倍晋三首相の発言に批判的なコメントをしたかのような事実無根の報道があった。強く抗議している」と明らかにしています。

ブルームバーグの取材を受けた土井教授は「5月末に承認を目指すと報道で出ているが、どう考えるか」との質問を受け、「特定臨床研究は進行中であり、結果はしばらく先まで出ない。他にも企業治験などが行われており、色々な研究から有効性、安全性に関する情報を捉えるのだろう」との内容の回答をしたのですけれども、土井教授は会見で「プロセスに対して意見を述べたということではない。このようなことになったのは残念に思っている」と述べています。

件のブルームバーグの記事「5月中のアビガン承認は時期尚早、根拠欠く」については既に「5月中のアビガン承認は困難か、藤田医大は臨床試験を継続(訂正)」と見出しも変えて訂正されているのですけれども、訂正記事の最後に「(第2、3段落の土井教授の発言を一部訂正し、第4、5段落にコメントを追加します)」と訂正した箇所を記しています。

それぞれの記事の第2段落から第5段落までを比較すると次の通りです。
〇訂正前(第2、3段落)

安倍晋三首相が5月中のアビガンの薬事承認を目指すと発言していることについて、土井氏は臨床研究がまだ終わっていないため、何を根拠にしたのかが分からないとコメント。中立性を保つため、第三者が取りまとめた中間段階での研究の解析結果は把握していないとした上で、効果が顕著であるとの明確な結論には至っていない可能性が高いと述べた。

NHKは19日、この中間解析結果として、有効性を判断するには時期尚早で臨床研究を継続する必要があるとの意見が出されたと報じた。厚労省の鎌田光明医薬・生活衛生局長は「さまざまな有効性、あるいは安全性に関する情報を収集している」とし、「有効性が確認されれば承認するという方向」だとコメントした。

〇訂正後(第2、3段落を一部訂正、第4、5段落追加)

安倍晋三首相が5月中のアビガンの薬事承認を目指すと発言したことについて、土井氏は英語で行われたインタビューで、詳細はわからないとした上で、すでに19日であるために月内の実現は難しいのではないかと話した。臨床試験の結果が得られるのは7月になりそうだとしてる。

その上で、第三者機関による中間段階での解析は臨床研究の過程にある通常の手続きで「有効性を判断するものではない」と指摘。中立性を維持するために、解析結果は臨床試験に携わる関係者が一切触れることができない状態で管理されているという。

試験を中止する必要がある場合や薬剤が「期待を大きく上回ったり予期せぬ問題が起きたりした場合には連絡を受ける」とし、今回は「そういったことにはなっていない」と話した。

土井氏は20日夜に記者会見し、中間解析での評価の結果、予定通り臨床研究を続けることが勧告されたと説明した。
全然違います。記事の内容をみる限り、とても「一部訂正」とか「追加」で済むようなレベルではないようにみえます。なにせ見出しから変えているくらいです。これは差し替えと記載すべきではないかと思います。


3.黄恂恂ブルームバーグ記者


ブルームバーグは、ニューヨークに本社を置く、アメリカの大手総合情報サービス会社ですけれども、件の記事には"黄恂恂、Lisa Du"と記者の名が署名されています。

黄恂恂(グレース・ファン)氏、Lisa Du(リサ・ドゥ)氏はブルームバーグニュースの東京支局記者で、今回の記事だけでなく、日本での武漢ウイルス治療薬に関してはこの両者がコンビで記事を書いているようです。

このうち、黄恂恂l氏については、今回の記事以外にも過去に歪曲記事を書いていた疑惑があります。

KLab株式会社創業者で取締役会長の真田哲弥氏は、2014年7月に自身のフェイスブックで次の様に述べています。
昨日、Bloomberg社の黄恂恂という記者から2時間近いインタビューを受けました。好意でインタビューを受けたにもかかわらず、騙されました。
コチラの意図や文脈を無視して、言葉の断片だけを抜き出し、意図的に文意を曲げています。ぞの手法たるや、東スポ級です。経営者のみなさんは、黄恂恂という記者に気をつけましょう。

例えば、記者に突然、2年も前の記事の意図を尋ねられました。
「2年前に週刊ダイヤモンドで、『任天堂を抜く』と発言していますが、、、?」
私は、「個別企業のことを言ったのではなく、コンソールゲーム業界の象徴として」という文意のことを長い時間を掛けて説明しました。
そしたら、こんな、記事に
「真田社長は、『任天堂を抜くことは十分あり得る』と述べた。」
http://www.bloomberg.co.jp/…/newsarchive/N95BIB6S972Z01.html

せっかく経営戦略を語ったのに、そういうことは1行も書かない。インタビューの前から、派手な記事を書きたいと、狙っていたとしか思えん。メディアとしての品格とかモラルは無いのか!!
私も、言葉の端々から揚げ足を取られないように、気を付けなければならないと、改めて思い知らされました。
真田取締役会長曰く、東スポ並みに「コチラの意図や文脈を無視して、言葉の断片だけを抜き出し、意図的に文意を曲げられた」そうです。

筆者には真田氏のコメントの真偽を確認できませんけれども、企業トップの立場で嘘をつく理由はありませんし、嘘をついて何か利益があるとも思えません。

この真田氏の怒りに満ちたコメントを読む限り、少なくとも黄恂恂氏は、真田氏の意図通りの記事を書かなかった可能性は高いのではないかと思います。


4.武漢ウイルスはメディアリテラシーを高める


5月10日のエントリー「表現の自由を弾圧するマスコミ」でも触れましたけれども、武漢ウイルスを巡る報道については、誤報やフェイクニュースが目立っている印象を受けます。

20日、テレビ朝日の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」が、19日に、千葉市のJR蘇我駅で車両を撮影するために駅や周辺に鉄道ファンが集まったと報道しました。この中でホームにあふれんばかりの鉄道ファンが殺到した写真を使い、緊急事態宣言がまだ解除されていない状況で、集まった鉄道ファンの「もう二度とあるかわからないので、不要不急ではないという勝手な解釈で」などというコメントを紹介したのですね。

ところが、この放送に鉄道ファンが激怒。SNSで「これ昨日のやつじゃないじゃん」、「ジャカルタ配給のやつだろ」などと詳細な分析も添えて、間違いを指摘。「#モーニングショーはクソ」というハッシュタグが、一時トレンドワードの上位にランキングされるなど騒ぎになりました。

これに慌てたのか番組は後半で、「新型コロナウイルスに関するVTRで、JR蘇我駅に鉄道ファンが集まっている様子をお伝えしましたが、その中で、昨日ではなく今年3月に撮影された写真を1枚使用してしまいました。おわびして訂正致します」と謝罪する事態となりました。

まぁ、よりによって、"鉄"を相手にフェイクを流してただで済む訳がありません。

マスコミがフェイクを流しているという事実は、武漢ウイルスが収束しない限り、これからもどんどん指摘されていくだろうと筆者はみています。なぜなら、武漢ウイルスは人類にとって未知のものであり、かつ人の健康や命に関わるものであるからです。

人類にとって未知のものであるということは、人はそれに対する"先入観"を持っていないということです。

未知のものであるが故に、識者の中でも色々と見解が分かれますし、これまでの常識であるとか、ある種の"思い込み"を利用して印象操作しようとしても中々上手くいかない。

また、人の命が掛かっているので、視聴者も関心を持って、より真剣に報道を聞きますし、その間違いについては、特に命を預かる医療従事者から容赦ないツッコミが入ります。

しかもそれらは、自粛要請でこれまでワイドショーなど見た事ないような層の人たちにも見られるようになってしまった。

これまで陰に隠れてやっていたことが表沙汰になる、あるいは、特に関心もなく流して聞いていた視聴者がいなくなることで、マスコミが現実にどんな報道をしていたのかが明らかになってきた。そんな感じがしています。

その意味では、武漢ウイルスは私達のメディアリテラシーの底上げをしているともいえ、安易な放送や印象操作といった類のやり方は、世の中からどんどん叩かれていくようになるのではないかと思いますね。


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