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1.一京一千兆円の賠償請求
4月29日、フランス国際放送局RFIは、武漢ウイルスの感染拡大をめぐり、少なくとも8ヶ国が訴訟を起こしていると香港経済日報の報道を引用する形で報じました。
記事では、現在、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリアの8ヶ国の政府や民間機関が、新型コロナウイルスの感染拡大を招き、自国に大きな被害をもたらしたとして、中国政府に賠償を求める訴訟を起こしているとし、「外国による中国への賠償請求を『100国連合』と形容する人もいるが、あながち言い過ぎではないだろう」と伝えました。
賠償額の合計は約49兆5000億米ドル(約5300兆円)となり、これにアメリカ・ミズーリ州の推定賠償請求額を加えると100兆ドル(約1京1000兆円)を上回り、中国のGDP7年分に相当する額に達すると伝えました。
この中国に賠償を求める考えはアメリカ世論の支持を受けています。アメリカ大手世論調査機関「ハリス・ポール」が4月上旬に行った世論調査で、「ウイルスの蔓延について、中国政府に責任があると思いますか」と聞いたところ、「ある」は77%で、「ない」の23%を大きく上回っています。
2.中国離れする世界
同じく、欧州でも、中国への批判や疑惑追及の声が高まっています。
フランスのマクロン大統領はイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「我々が知らないことが起きているのは明らかだ……中国の方がうまく対応したと言うのは、あまりに無邪気だ」と、中国政府を批判しました。
また、ドイツのメルケル首相も「中国が透明であればあるほど、世界にとってはより良いものになる」と、中国の隠蔽疑惑を口にしています。欧州で中国べったりのドイツでこれですから、相当なものです。
武漢ウイルスの原因究明について、米仏独豪などの各国が連携して国際調査を検討しはじめたという話も出ています。
中国は、訴訟に対し、外交部の耿爽(グン・シュアン)報道官が記者会見で、中国政府が速やかにWHOや米国を含む関係国・地域に新型ウイルスの情報を提供してきたことを強調した上で、「これらの訴訟は乱訴だ」と反発。
原因究明については、工作と恫喝で口封じをしようとしています。
たとえば、中国はオーストラリアの動きに対して激怒し、成競業・駐オーストラリア中国大使は、23日付の豪経済紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビューに掲載されたインタビューで、オーストラリアがウイルスの感染拡大への調査を要求していることについて、「中国国民は、オーストラリアが今行っていることに失望し、動揺し、落胆している……もしこのムードがさらに悪くなれば、『中国に対してそこまで友好的でない国に、なぜ行かなければならないのだろう』と人々が思うようになる。観光客が考え直すかもしれないということだ……それを決めるのは国民だ。もしかしたら、一般市民が『どうしてオーストラリアのワインを飲まなければいけない? オーストラリアの牛肉を食べないといけない?』と言うかもしれない」と述べています。
あからさまというか、なんというか、今時、漫画に出てくる悪役でもここまでベタなのも珍しい。わざとヘイトを溜めようとしているのかと思う程です。
ただ、こうした工作も、最早現地メディアで暴露されてしまっているようになっています。この流れを引っ繰り返すのは中々難しいと思います。
3.研究所からの流出が前提
4月30日、トランプ大統領は記者会見で、記者から「現時点で、新型ウイルスの発生源が武漢ウイルス研究所だと確信を得るものを見たか」と質問され、「ああ、見た……世界保健機関(WHO)は中国の広報期間のように振る舞っていることを恥じるべきだ」と述べました。
トランプ大統領は、記者から自分の発言について詳細を求められると、「それは教えられない。教えることが許されてない……中国は間違いをおかしたのか、最初は間違いでさらに間違いを重ねたのか、誰かが故意にやったことなのか?……中国では、人や交通機関が中国に入るのは禁止されたのに、他の国に行くことは許されていた。ひどいことだ。答えに困る問題だろう」と述べています。
トランプ大統領は、なぜこうした見方に自信を持っているのかと問われると、「それは言えない。あなたに教えることはできない」と言葉を濁しました。
けれども、トランプ大統領は、事故なのか故意なのかと疑問を呈している割には、中国は入国は禁止しても出国は禁止しなかったとも述べています。まるで故意にウイルスを撒き散らしているのではないかといわんばかりです。
この言い回しを聞いていると、トランプ大統領は、かなりの証拠を掴んでいるのではないかと思わせます。
尤も、この会見の数時間前、アメリカ国家情報長官室(ODNI)は声明で、今のところ研究所から流出したとの評価には至っていないと説明。武漢ウイルスの流行が「感染した動物との接触を通じて始まったのか、あるいは武漢の研究所で起きた事故の結果なのか」を引き続き厳密に精査すると述べています。
複数の情報筋によると、トランプ政権当局者はアメリカ情報機関に対し、中国の研究所での事故が原因となってパンデミックが始まったとの説を追求して、流行の起源を特定するよう要請しているそうですから、もう研究所からの流出説を前提で動いているように見えます。
4.中国隠蔽の顛末
中国が初動で隠蔽を図ったことはいろんなところから段々と暴露されてきています。
『文藝春秋』は、5月号で、中国の武漢市中心病院・南京路分院の救急科主任の艾芬(アイ・フェン)女医が、武漢ウイルス患者が担ぎ込まれた以後の顛末を記した手記を掲載しています。
その一部は次のとおり。
2019年12月16日:患者が運び込まれる。原因不明の高熱が続き、各種治療薬の効果なく、体温も下がらない。この手記は、中国共産党系の月刊誌「人物」が3月10日のサイトで発表されたもので、数時間後に削除されています。こんなのが民間に漏れてくるのであれば、アメリカはそれ以上の情報を持っている筈です。
22日:呼吸器内科に移してファイバースコピーで検査、気管支肺胞洗浄、検体サンプルを検査機関に送る。シーケンシング技術のハイスループット核酸配列の検査実施。「コロナウイルス」との口頭報告あり。病床管理の同僚が、耳元で「艾芬主任、医師は『コロナウイルス』と報告しましたよ」と何度も強調。(患者は武漢市の華南海鮮卸売市場で働いていたことが後に判明)。
27日:別の病院で治療(17日から10日間)を受けていた患者が運び込まれる。同僚医師の甥で40代・基礎疾患はなかったが肺は手の施しようがなく、血中酸素飽和度は90%。すぐに呼吸器内科の集中治療室(ICU)に移し、16日の患者と同様に処置。
30日昼:同済病院で働く同期生がウィーチャットで、キャプチャ画像と共に「しばらく華南〈海鮮市場〉には近づかない方がいいよ。最近、多くの人が高熱を発している」と知らせてきて、「本当かな」とも尋ねた。そこで、パソコンで診断していた某肺感染症患者のCT検査の動画(11秒)に「午前に救急科に来た患者で、華南海鮮卸売市場で働いていた」とメモして送信。
同日午後4時:同僚が「SARSコロナウイルス、緑膿菌、四六種口腔・気道常在菌」と書かれたカルテを見せに来る。カルテには「SARSコロナウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルス。このウイルスの主な感染は近距離の飛沫感染で、患者の気道分泌物に接触することにより明確な感染性を帯び、多くの臓器系に及ぶ特殊な肺炎を引き起こす。SARS型肺炎」と注記がある。何度も読みかえして確認、驚きのあまり全身に冷や汗。患者は呼吸器内科に入院しているので、病状報告が自分のところに回ってくると思いながらも、念を入れて情報を共有するために、すぐに公共衛生科と感染管理科に電話する。
同時刻:ドア前を通った呼吸器内科の主任医師(SARS治療の経験者)を呼び込み、「救急科を受診した患者があなたのところに入院している」といい、「これが見つかった」と言ってカルテを見せると、「これは大変だ」という。〝ことの重大さ″を再認識し、カルテの「SARSコロナウイルス、緑膿菌、四六種口腔・気道常在菌」の箇所を赤丸で囲み、同期生に送信。救急科の医師グループにもウィーチャットの画面共有アプリで発信し、注意喚起する。
30日夜:赤丸を付したカルテのキャプチャ画像が、様々なウィーチャット・グループにあふれる。死亡した眼科医の李文亮医師もこのキャプチャ画像をグループ内に発信している。この時、「もしかすると面倒なことになるかも」と感じる。
30日午後10時20分:武漢市衛生健康委員会から病院を通じて、「市民のパニックを避けるために、肺炎について勝手に外部に情報を公表してはならない。もし万一、そのような情報を勝手に出してパニックを引き起こしたら、責任を追及する」という内容の通知が来る。恐ろしくなり、すぐに同期生に転送する。
30日午後11時半頃:病院からも「情報を勝手に外部に出すな」と強調した通知が来る。
2020年1月1日午後11時46分:病院の監察課(共産党規律委員会の行政監察担当部門)の課長から「翌朝、出頭せよ」の指示が来る。心配で一睡もできず、寝返りをうちながら考え込む。そして「たとえ悪影響をもたらしても、武漢の医療従事者に注意を喚起するのは悪いことではない」と自分に言い聞かせる。
2日8時過ぎ:勤務交代の引継ぎが済んでいなかったが、「出頭せよ」の催促電話が鳴る。出頭すると、「約談」(法的手続きによらない譴責、訓戒、警告)の〝前代未聞の厳しい譴責″を受ける。課長(女性)は、「我々は会議に出席しても頭が上がらない。ある主任が我々の病院の艾とかいう医師を批判したからだ。専門家として、武漢市中心病院救急科主任として、無原則に組織の規律を無視し、デマを流し、揉め事を引き起こすのはなぜだ?」と譴責。続けて「戻ったら、救急科200人以上のスタッフ全員にデマを流すなと言え、ウィーチャットやショートメールじゃだめだ。直接話すか、電話で伝えろ。だが肺炎については絶対に言うな。自分の旦那にも言うな・・・」
2日夜:帰宅して夫に「もし、私に何かあったら、しっかりと子供を育ててね」と頼みながらも譴責されたことなどは言わなかったという(小さい子供が2人、夫に打ち明けるのは1月20日)。
3日以降:200人以上の医療関係者に予防の注意を喚起し、全員にマスク・帽子を着用させ、手洗い消毒を徹底させるなどして、一人ひとりに予防を強化させ、マスクしていない男性看護師を見つけ「マスクをしないなら、もう仕事に来なくていい」とその場で叱責。院内の会議で某医師が白衣の上に防護服を着用すべきだと提案したが、「だめだ、外から見られたらパニックを引き起こす」として却下。そこで艾芬主任は救急科全員に「白衣の下に防護服を着させる」。「患者は増え続け、感染エリアは拡大するばかり」であったが、「状況を見守るだけで、ただ手をこまねいているだけだった」、「最初は海鮮卸売市場付近から発生したのだろうが、その後、感染がさらなる感染を招き、その範囲は拡大していった。多くは家庭内の感染だった」
9日:退勤する時、受付の患者が咳き込んでいるのを目撃。来院患者にもマスクを配るようにその日に要請する。経費節約などしている場合ではない。
11日朝:救急科の緊急治療室の女性看護師が感染したとの報告を受ける。中心病院で感染した第1号だったので、医務課の課長に電話報告して院内で緊急会議が開かれた。しかし、報告書の「両肺下葉の感染、ウイルス性肺炎?」のタイトルは「両肺に感染が散在」に変えるように指示される。
1月中旬~下旬:病院の幹部も次々に倒れる。救急科の外来診察事務室主任、副院長3人、医務課課長は娘の感染で休み。艾芬主任の救急科でも医師、隔離病室の管理責任者、看護師長など、40人以上の感染者が出た。
1月22日夜:政府の関係部門に勤める知人が電話で、救急科の患者の本当の状況について尋ねる。「私も個人として真実を話しましょう。1月21日、救急科は1523人の患者を診察しました。通常の最も多い時の3倍です。その中で発熱している患者は655人です」。病棟は飽和状態で患者を受け入れなくなり、救急科に押し寄せ、診察を受けるため数時間並び、医者も残業した。発熱外来も救命救急も区別なく、ホールは患者で満杯になり、ICUも点滴・輸血室も患者であふれ、自動車の中で息を引き取る患者、入院した途端に亡くなる患者もいた。
5.エスカレートしていく米中戦争
トランプ大統領は、先に取り上げた4月30日の会見で、報復手段として中国に対する借金義務を無効にする方針を検討しているかとの質問に対し、「そのように対応を始めれば難しくなりかねない」と述べ、そのことがドル安を呼び、「ドルの神聖さ」を弱化しかねないと説明しました。
そして、「中国を対象に極端な罰を与える方法は多い……中国製に関税を課して1兆ドルを収める」という措置を例にあげています。
トランプ大統領は前日29日にロイター通信のインタビューで「中国は私を大統領選で敗北させるためにできることは何でもやるだろう」と述べていますけれども、この発言は、大統領選で民主党の指名獲得を確実にしたジョー・バイデン前副大統領が勝利することによって、中国が対中圧力が弱まると期待しているとの自身の認識を明らかにしたものだと見られています。
目下のところ、中国は裏工作によって、対中圧力を躱そうとしているのに対し、アメリカは情報公開によって中国を追い込もうとしています。
評論家の石平氏は「中国が圧力をかけたり、裏工作をすればするほど、『死のウイルス』を世界に拡散させた責任が明確になる。民主主義国家では、政府が経済的利益につられて、責任追及を放棄をすることはないという根本理念を中国は理解できないのだろう。中国が脅しをかけるほど、各国はますます義憤にかられて『脱中国』の流れが加速する。日本にも中国に賠償を求めたり、責任追及をする権利がある。欧米諸国と歩調を合わせるべきだ」と語っています。
トランプ大統領が示唆しているように、仮に、武漢ウイルスが武漢の研究所から漏れたものだとして、それが事故なのか、意図してのものなのかによって、アメリカの態度も変わってくるのではないかと思います。勿論、後者の方がより苛烈な報復になると思います。
秋の大統領選で敗北させようと中国が工作しているとトランプ大統領が認識しているとするならば、当然その前に何らかの落とし前を付けさせようとする可能性は高いと思います。
今後の展開によっては、物理的なドンパチがなくとも、米中戦争は増々エスカレートしていくのではないかと思いますね。
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