中国の医療用品買占め行為は制裁根拠となり得るか

今日はこの話題です。
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1.武漢水生生物研究所からウイルスが漏れたというストーリー



アメリカ国務省報道官は30日までに、武漢ウイルスに関連し中国に今年2月入った世界保健機関(WHO)調査団に複数のアメリカ政府関係者も加わっていたものの、武漢市には同行していなかったことを明らかにしました。調査団は訪中後、数グループに分かれ、数ヶ所に向かったのですけれども、武漢に赴いた班にはアメリカ人は含まれていなかったようです。

更に、WHOは、調査団は武漢滞在中、空港、病院、中国の疾病予防管理センターやその研究所を訪問した際、武漢ウイルス研究所には立ち寄らなかったと明らかにしています。

武漢にアメリカ政府関係者が入っていなかった理由は不明とのことですけれども、ポンペオ国務長官は今月半ばに武漢ウイルス研究所への立ち入りなどが西側諸国に許されていないと述べ、更にアメリカ人科学者の中国への派遣許可を求めてきたが拒否されていると非難もしています。

武漢ウイルスは研究所から漏れた説がクローズアップされる中、アメリカ政府関係者のみならず、WHOも立ち寄らなかったというのは、今後問題視されるような気がします。

昨日のエントリーで、WHOのマイケル・ライアン事務次長はインターネットを通じて行った記者会見で「アメリカ政府から新型コロナウィルスが中国武漢の研究所が発症だという証拠は受け取っていない。これはWHOからしたらアメリカの主張は推測に基づくものだ……WHOは新型コロナウィルスの起源の証拠がある場合は受け取る」と述べたことを取り上げていますけれども、であれば、WHOこそ2月に調査しなかった武漢ウイルス研究所への立ち入り調査を要求すべきだと思いますね。

中国もこうした流れから、研究所も調査される可能性を踏まえ、準備を始めたという話もあります。

ノンフィクション作家の川添恵子氏によると、ウイルスの研究所漏洩説について、イギリス情報機関が調査を進めていて、「中国は生物兵器を研究していないとされる武漢水生生物研究所からウイルスが漏れた」というストーリーを描いているようだとの説を述べています。




2.主権免除条項剥奪


トランプ大統領は今回の武漢ウイルス禍について、中国に責任を負わせる方法は沢山あると賠償請求の可能性に触れていますけれども、これについて、米紙ワシントン・ポストは、アメリカが中国に対して国際法の「主権免除」条項を剥奪することを議論していると伝えています。

「主権免除(sovereign immunity)」とは、国家主権・主権平等の原則の下、主権国家が他の国家の裁判権に属することはない、という国際慣習法の一つです。この免除は自発的に放棄することも可能とされています。

この「主権免除」は長らく 「確立した慣習国際法」 として 比較的近年に至るまで、当然の前提であるかのようにされ、すべての活動に対して裁判権の免除が認められていました。ところが、20世紀にはいると国家が営業的行為を行なうケースも出始め、それにも「主権免除」を認めてしまうと商行為の相手方に不利益になることから、一定の事項のみを免除するという意見が出てきました。

こうしたことから現在ではこの「制限免除主義」が有力となっています。

筆者は、アメリカが国家として中国に賠償請求するための法的根拠としてこの「制限免除主義」を使ってくるのではないかと考えています。

昨日のエントリーで、アメリカの国土安全保障省が「中国政府は武漢ウイルスの危険性の詳細を今年1月にWHOに報告する前に、国外から大量の医療用マスクや防護服などを輸入していた」とする内部文書を纏めていたと報じられたことを取り上げましたけれども、これは、商行為におけるアメリカの不利益に思いっきり該当すると考えられます。

おそらくは、「医療用器具の一方的買占め行為は主権免除には該当しない」として賠償請求するのではないかと見ています。

既に「制限免除主義」は現在国際社会でも多数の支持を受けている考え方ですから、中国も非難しにくいでしょう。

それに、「制限免除主義」を使った賠償請求は、そもそもにして、漏れたか漏れてないかは問題にしていませんから、川添恵子氏が伝えているところの、中国が画策している「生物兵器を研究していない武漢水生生物研究所からウイルスが漏れたことにする作戦」も通じません。

更には、賠償請求の裁判で、中国を余罪含めて厳しく追及し、それらを広く国際社会に訴えていくことも視野に入っているかもしれません。


3.世界のサプライチェーンから中国排除


それ以外にも、アメリカは中国を経済的に孤立化させるべく動いています。

4月29日、ポンペオ国務長官はアメリカ政府が、日本のほか、オーストラリア、ニュージーランド、インド、韓国、ベトナムと共に、「世界経済の前進に向け」取り組んでいると表明し、「今回のような事態の再発を防ぐための供給網の再構築」などが協議されていることを明らかにしました。

これに関して、国務省のキース・クラッチ次官は「アメリカは数年前から供給網の中国に対する依存度の引き下げに取り組んできたが、現在こうした動きを加速させている……どの分野が重要で、深刻なボトルネックがどこに存在しているのか洗い出す必要がある」と世界のサプライチェーンから中国を切り離す積りがあると述べています。

現職の当局者や元当局者によると、商務省および他の政府機関は、調達と製造の双方を中国から他の地域に移すよう企業に働き掛ける方法を模索していて、、税制優遇措置や国内回帰に向けた政府補助などが検討されているようです。

米中ビジネス協議会(USCBC)のダグ・バリー報道官によると、「コロナ禍で明るみに出たリスクの度合いを踏まえると、供給網の多様化は理にかなう」と指摘しつつも、今の所は、「中国で稼働する企業がこぞって国外に移管する動きはまだ見られていない」ようです。

トランプ政権では、これまで対中強硬派とビジネス推進派の舞台裏での攻防が特徴の一つとして挙げられているのですけれども、現在は、対中強硬派が勢力を増しているそうで、当局者は「中国との取引に関連して存在していた懸念が全てコロナ禍で具現化した形になっており、破滅的な事態に向かう地合いは整っている」としています。

更に、関税以外に、中国当局者および企業への制裁や、台湾との関係強化という選択肢もあるとしています。

5月4日、アメリカ商務省は、国家安全保障の観点から、電力用変圧器の主要部品に輸入関税を課す可能性ついて調査を開始したと発表。既にトランプ大統領が国内送電網で使用する部品について、中国とロシアからの輸入を制限することを認める大統領令にすでに署名したようです。

電力を安全保障の範疇に位置付けているということは、サイバー攻撃含め電力もそういう扱いになっている。あるいは、中国との戦争も念頭にあるのかもしれませんね。


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