香港のドルペッグが崩壊する日

今日はこの話題です。
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1.中国企業11社に輸出禁止措置


7月20日、アメリカ商務省は中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族などへの弾圧や人権侵害に関与したとして、中国企業11社を輸出禁止措置の対象にすると発表しました。

禁輸措置の対象企業とする「エンティティーリスト」に加えられたのは、高速鉄道関連の部品製造メーカー「KTKグループ」や、世界最大規模のシャツ製造企業で、ラルフ・ローレンなどのアメリカブランドとも取引がある「エスケル・グループ」関連会社、毛髪製品製造の「和田浩林髪飾品」などで、これらの企業は、アメリカ政府の許可なく米企業から製品を購入するなどの取引を禁じられました。

また、他国の企業も、対象企業への輸出はアメリカ政府の許可が必要となり、原則として認められることはありません。

エンティティ・リストに違反してリストに記載された企業等に輸出を行った場合、別途、ディナイド・パーソン・リスト(取引禁止顧客リスト)と呼ばれるリストに掲載され、アメリカ国内における商取引が禁止されます。

その対象は、アメリカ国外の企業活動にも及び、迂回輸出をも不可能なるなど非常に厳しいものです。

それゆえ、昨年5月に中国のファーウェイがエンティティ・リスト入りした際には、ただちにグーグル、インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコムなどがファーウェイとのビジネスを停止する表明を行っています。まぁ、要するにブラックリストです。



2.ウイグル自治区トップらに制裁


ウイグルで人権侵害に関するアメリカの対中制裁はそれだけではありません。

7月9日、アメリカのポンペオ国務長官は中国・新疆ウイグル自治区のトップである陳全国共産党委員会書記ら3人の幹部とその家族に対し、アメリカへの入国を禁じる制裁措置を発表しました。

更に、アメリカ財務省は、陳書記ら3人に元幹部を加えた4人と1つの団体に対し、アメリカ国内の資産の凍結と、アメリカ人との取引禁止の制裁を科すと発表しています。

6月17日、ウイグル族弾圧の責任が認められる中国の当局者に制裁を科すよう政権に義務付ける「ウイグル人権法」が成立しているのですけれども、これは昨年12月、下院で407対1の圧倒的賛成多数で可決したものです。

今回の中共幹部への制裁措置もこの「ウイグル人権法」に沿ったものです。

ポンペオ国務長官は声明で「中国共産党体制による新疆の少数民族への人権侵害を座視しない……中国共産党による人権と基本的自由に対する攻撃への懸念を共有する全ての国が、共に中国の行動に対する非難の声を上げるよう求める」と述べています。

さらに、ポンペオ国務長官は7日、アメリカ人が中国チベット自治区を訪れるのを妨害した中国政府当局者へのビザの発給制限を発表しています。

こちらは、2018年に成立した「チベット相互入国法」に基づく措置でポンペオ国務長官は、「中国政府による人権侵害を考慮すると、チベット訪問は地域の安定に不可欠だ」とし、アメリカはチベットの「意味のある自治」や宗教・文化的独自性を支持し続けると強調しています。

アメリカの本気振りが窺えます。


3.ファーウェイは容認できない行為を行ってきた


7月19日、イギリスBBCラジオで、グーグル社の元CEOで、現在親会社「アルファベット」の技術顧問であるエリック・シュミット氏が、「ファーウェイが国家安全保障上、容認できない行為を行ってきたことは間違いない……中国側への情報流出は起きたと確信している」と発言し、波紋を広げています。

シュミット氏は、国防総省の技術分野に関する諮問機関のトップも務めていて、「『中国人は技術をまねをするだけで、新しいことはできない』との偏見は捨てるべきだ。研究や技術の主要分野で、西側諸国と同じか、もっと優れているかもしれない……対抗策として、研究分野の資金を増やし、世界中から優秀な人材を集めるべきだ」と中国の技術力への危機感も顕わにしています。

このシュミット氏の発言について、国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ政権は、アメリカや同盟国の安全保障上、情報流出が深刻な問題だと認識しているはずだ。米中対立がサイバースペースで激しくなれば、米国主導の対中国包囲網も強まる。今後、ファイブ・アイズや同盟国との連携をさらに重視した動きを見せる可能性もある。将来的には、中国のファイアーウオールに一気に穴を開ける作戦に出ることも考えられる」と述べています。


4.ディズニーやアップルは中国の手先にされている


アメリカ政府の対中批判は国内にも向けられています。

7月16日、アメリカのバー司法長官はミシガン州での講演で「アメリカ企業は危険性を理解しなければならない……中国共産党は数十年、数世紀の観点で考えるが、われわれは次の四半期の決算発表を重視する傾向がある」と述べ、中国に操られる企業の一例にディズニーを挙げ、同社の映画を一時期上映禁止とした中国政府からの要求に屈したと指摘。上海に建設したテーマパークの管理で中国当局者に役割を与えることに同意した点にも触れ、その結果として白雪姫などディズニーのキャラクターに非常によく似たキャラクターが目玉の中国所有テーマパークが他の都市にオープンしたと指摘しました。

また、ニュースアプリの「Quartz」について、最近、アップルが中国のアップストアから除外した点にも触れ、中国政府が先に、香港の民主派の抗議活動に関するこのアプリの報道について苦言を呈していたと述べ、中国によるインターネットアクセス制限を回避するため利用できていたVPNアプリなどを削除した点にも触れています。

更に、バー長官は武漢ウイルスのワクチン研究をアメリカの企業と大学から盗み出すため中国政府がハッキング攻撃を始める一方、パンデミックと闘うために必要な医療関連用品を囲い込んでいるとも主張しています。


5.香港自治法による制裁


アメリカは対中制裁カードを次々と切っています。

先日の中国による「香港国家安全維持法」施行に激怒したアメリカは「香港自治法案」を可決。全米にある「孔子学院」は、中国共産党のプロパガンダ機関として、次々に閉鎖され、中国人留学生へのビザ発給も厳格化されました。

「香港自治法」では、香港の自治を侵害した個人・法人と多額の取引のある金融機関を制裁対象としていて、アメリカ国務省が90日以内に香港の自由を侵害した個人・法人を指定し、金融機関には指定された相手との関係遮断に1年間の猶予を与えるとしています。

香港のシニアアナリスト、フランシス・チャン氏によると、対象となる中国当局者の多くが中国の大手銀行を利用していると想定され、制裁違反と認定された銀行は、アメリカの金融システムへのアクセスが断ち切られる可能性があると指摘しています。

中国の外貨準備は6月末時点で、3兆1123億ドル(約333兆8564億円)、中国四大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行)の対外債務は3兆1000億ドル(約332兆5370億円)です。

つまり、アメリカが「香港自治法」による制裁に踏み切り、中国の大手銀行がアメリカの金融から締め出されてしまうと、ドルが調達できなって「ドル不足」に陥り、国際取引が難しくなる可能性が高まります。

これは渦中の香港の金融にも大きな影響を与えるかもしれないとの指摘もあります。


6.香港のドルペッグが崩壊する日


いまのところ、香港ドルの対米ドル為替レートは1香港ドル=0.13ドル程度で安定していますけれども、これは、HSBC(香港上海銀行)、スタンダードチャータード銀行、中国銀行が香港ドルを発行しているのですけれども、香港ドルの発行額を中国のドル準備額以下に抑え、香港ドルをアメリカドルに交換することを保証することで、香港ドルの対米ドルレートを安定されていると言われています。

香港ドルを発効している銀行のうち、中国銀行は「香港自治法」による制裁対象となる可能性があり、また、HSBC(香港上海銀行)も経営陣が国家安全法の支持を表明していることから、制裁対象となる可能性があります。

つまり、「香港自治法」でこれら銀行が制裁対象となりアメリカドルが調達できなくなるとこれまで香港を支えてきたドルペッグ制度が揺らぐことになります。

ブルームバーグによると、こうした案は、ポンペオ国務長官のアドバイザーが幅広い議論を進める中で浮上したもので、まだホワイトハウスの高官には伝わっておらず、支持を大きく広げてはいないとのことなのですけれども、アメリカは中国を揺るがすいくつものカードをまだまだ持っているということです。

中国は日本に対し、中国を選ぶかアメリカを選ぶのかはっきりさせよなどと寝言を言っていますけれども、日本がつくべき相手は明らかだと思いますね。


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