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1.ポンペオ国務長官の中国理解の浅さ
アメリカのポンペオ国務長官の対中批判発言や対中圧力政策について、無論批判の声があります。
フォーリン・ポリシー誌シニアエディターのジェームズ・パーマー氏は、「ポンペオ米国務長官の『対中苛烈批判』に見る中国理解の浅さ」という記事でポンペオ国務長官を批判しています。
記事では、アメリカがこれまでの歴代米政権が維持してきた「中国の経済成長の恩恵を受ける代わりに対中批判は抑えて置こう」という姿勢が誤りであったと考える人が増え始めているとした上で、ポンペオ国務長官の「中国の人々は、自由を愛する活力旺盛な人たちであり、中国共産党とは明確に区別すべきである」という新しい対中戦略は上手くいくか疑わしいと述べています。
その理由は次のとおりです。
・共産党は中国の人々の暮らしと密接に結び付いているし、「共産党なくして新しい中国はない」というスローガンは小学校でも教え込まれている。とパーマー氏は、共産党あっての中国であると幼い頃から教え込まれた中国人に共産党の終わりを望む声などない。アメリカも中国と手を切れば甚大な経済的ダメージを受けるから、ポンペオ戦略は成功しないと述べています。
・汚職の蔓延や新型コロナウイルスへの対応など、個別の問題に関しては、政府に怒りを抱いている国民も少なくない。それでも、その不満が共産党体制の終焉を望む考え方を直接生み出していることを示す材料はない。共産党を嫌っている国民も、敵対的な外国政府との対立では共産党政権の味方をするだろう。
・アメリカと中国の経済を切り離す「デカップリング」が実行されれば、途方もない経済的ダメージが発生する可能性が高い。
けれども、共産党政府の歴史など、彼らがよく口にする中国4000年だか5000年の歴史と比べると屁にもならない程の短い年月です。
昨今の中国に次々と襲い掛かる疫病・天変地異・蝗害をもって、一部で囁かれ始めた「易姓革命」の思想とて古くから中国に伝わる思想です。
過去には秦の始皇帝による焚書坑儒だとか、毛沢東の文化大革命で、都合の悪い書物を全て焼き払ったにも関わらず、そうした思想を消し去るには至っていません。
それを考えると高々100年にも満たぬ中国共産党の政治が、人民から「易姓革命」に依る王朝交替の考えを抹消できるとは思えません。
2.中国に関する百科事典
パーマー氏はポンペオ国務長官に対し「中国の理解が浅い」と批判していますけれども、当のトランプ政権は対中外交のブレインに中国のエキスパートを迎え入れています。
それはポンペオ国務長官の中国政策首席顧問である余茂春氏です。
余茂春氏は1962年中国重慶生まれの57歳。青少年期に文化大革命を経験し、天津・南開大学で歴史学を学びました。
1985年にアメリカに渡り、ペンシルバニア州のフィラデルフィアの南西に位置するスワースモア大学で修士号を、1994年にカリフォルニア大学バークレー校で歴史学の博士号を取得。その年に、アメリカ海軍の教官となり東アジアと軍事史を講義しています。
現在では、アメリカの要職には余茂春氏の学生が少なからずいるそうです。
余茂春氏はトランプ政権において国務省傘下の政策企画室に招かれたのですけれども、彼はポンペオ国務長官の執務室からわずか数歩しか離れていないオフィスを与えられています。
トランプ政権の余茂春氏に対する評価は高く、ポンペオ長官は「中国共産党の挑戦に直面し、このチームは我々に自由をいかに守ることができるかについて提案する」と、余茂春氏のことを「我々のチームの中核」と位置づけています。
また、デイビッド・スティルウェル国務省東アジア・太平洋担当次官補は「余茂春先生は国宝」と称え、マット・ポッティンジャー国家安全保障副補佐官は、余茂春氏をトランプ政府外交政策チームの「宝のような貴重な資源」と賞賛しています。
余茂春氏は現在、アメリカ政府で「中国に関する百科事典」で通っているそうです。
べた褒めです。
3.兵は神速を貴ぶ
余茂春氏は、この3年間トランプ政権の非常に重要な対中戦略参謀となって、過去の政府とは全く異なるトランプ政権の対中強硬措置を打ち出してきました。
昨今の中国共産党員の米国訪問禁止案も、在ヒューストン中国総領事館の閉鎖通知も余茂春氏によるもののようです。
その措置は素早く且つ過激です。
中国は、アメリカが対中措置を打ち出す度に、その都度「アメリカはおかしい」と非難し、「反撃する」と対抗するのですけれども、中国が対応の枠組みを整える前に、アメリカは別の中国バッシングを行うのです。正に「兵は神速を貴ぶ」を地でいくような手腕です。
このアメリカの措置に対し、中国内で「あくどいこと極まりない」という言葉が出るほど過酷だという評価が出ているそうで、当然、中国では余茂春氏の評判は頗る悪い。
中国では余茂春氏を「漢奸」と呼び、中国の左派シンクタンク昆侖策の研究員は「南開大学がこんな恩知らずな人物を輩出したのか」と嘆いているそうです。
逆にいえば、これくらいのことをしてみせなければ、中国には効き目がなかったということの証左でもあると思います。
4.信頼するな、そして確かめよ
中国語を母国語として学んだ余茂春氏は中国が駆使する外交用語に惑わされるなと主張しています。
例えば、北京がよく使う「Shuangying(ウィン・ウィン)」や「相互尊重」のような言葉は中国語の中の陳腐なことこの上ない古臭い表現で、耳を傾けてはならないと忠告しています。流石は「中国に関する百科事典」、共産党政府の遣り口を熟知しています。
余茂春氏はトランプ大統領以前の大統領が犯した間違いは、対中政策を立てる際に中国がどう出るかを考慮したことだとし、「まず、アメリカの最優先の国家利益が何なのかから検討すべきだった」述べ、更にアメリカ政府の歴代の対中政策のうち、最大の過ちは中国共産党と中国人民を区別しなかったことだと指摘しています。
そして、アメリカはこれまで対中政策を樹立する際に北京の弱点を正確に把握できていなかったと前置きし、「実のところ、中共政権の核心は脆弱で、自らの人民を最も恐れている」と述べています。
こうしてみると、ポンペオ国務長官が習近平氏と国家主席ではなく総書記と呼び、中国人民と中国共産党政府を分ける言動をしているのも、背後に余茂春氏のアドバイスがあったからだとするとすんなり理解できます。
これらを見ると、これまでのアメリカ歴代政権の対中政策の失敗は、中国人全員が自分と同じメンタリティを持つと勘違いしたことが間違いのもとだったように筆者には思えます。
ポンペオ国務長官は23日の演説で「レーガン元大統領は『信頼せよ、しかし確かめよ(trust but verify』の原則にそってソ連に対処した。中国共産党に関していうなら『信頼するな、そして確かめよ(Distrust and verify)』になる」と述べたそうですけれども、筆者は、この台詞こそ、余茂春氏のアドバイスがポンペオ国務長官に理解されている証拠であり、同時にアメリカが中国共産党のメンタリティを認識しているものだと見てよいのではないかと思いますね。
今後の米中の応酬に要注目です。
この記事へのコメント
ニック(元祖)
ポンペオ国務長官の考えは日本のネトウヨの考えとかなり近いと思う。
ポンペオ国務長官は日本のネット右翼の発言をチェックしたり、参考にしたりしているのであろうか?