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1.中国に迫る食料危機
8月11日、新華社など中国メディアは、習近平主席が「食べ物の浪費現象は見るだけでも身震いし心が痛むほど。器に盛られた食べ物とコメ1粒ごとに農夫の苦労がにじんでいるのがわからないのか……わが国の糧食生産は毎年豊作となってはいるとはいえ、食糧安全に対する危機意識を持たなければならない。今年は世界が新型コロナウイルス流行の影響を深刻に受けているだけに、もっと警戒心を持たなければならない」と叱責したと伝えました。
また、習近平主席は、「法制化と監督強化を通じて食べ物の浪費行為を厳格に制止せよ……社会的に浪費は恥ずかしいことで、節約は誇らしいという雰囲気が形成されるよう教育を強化しなければならない」と強調したそうですから、いつもの如く強権発動するのだと思われます。
習近平主席は、中国の食料生産は毎年豊作だなんて言っていますけれども、今、中国国内で起こっていることを考えると、今年も豊作になるのかについて疑問が残ります。
下左図は中国の地域別の食の特徴を示した図ですけれども、小麦を主食とする北方と米を主食とする南方、そして豚肉から魚まで多種多様な料理があります。
けれども、今年、中国に起こっている天変地異その他はこれらに大打撃を与えています。
ざっと列挙すると次のようになるかと思います。
小麦 …… 穀倉地帯の黒竜江省吉林省で蝗害今年はこれらが同時発生している。これで習近平主席が毎年豊作だといったところで、今年はどうなんだと突っ込みたくなるというものです。
米 …… 長江流域の大洪水
豚 …… アフリカ豚コレラ
海産物 …… 甲殻類を中心に十脚目虹色ウイルス(DIV1)感染
現に中国は食料の30%以上を輸入に頼っており、アメリカが主な輸入国となっています。米中関係が悪化している今、アメリカから食料を輸入できなければ食糧危機につながりかねません。
そもそも、食糧危機がくる懸念がなければ、残飯残すな、なんて指令は出さない筈です。まぁ、そういうことです。
もし、これらが天意だとするとその意味するところは何なのだと考えてしまいます。
2.新車に中古部品を使用許可
中国のモノ不足懸念は食料だけではありません。
8月11日、中国国家発展改革委員会(NDRC)は「自動車部品再製造管理のための暫定措置(意見募集案)」を公表しました。
これは、中国の自動車メーカーに、アフターサービスシステムを通じて、要件を満たす中古自動車部品を回収し、それを専門の中古部品再製造企業に提供することを奨励するというもので、品質も新製品に劣らないものにするとしています。
これについて、貴州大学経済学部の楊紹政元教授はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、「中国政府が中古車部品の再利用を許可したのは、おそらく中国の経済が世界から切り離される可能性があるとNDRCが予測したため、自動車製造業の危機を緩和する必要があると考えたのだろう……中国の全ての自動車メーカーは主要機器の一部を海外からの輸入に頼っているのが現状だ。もし中国経済が実際に世界から切り離されれば、部品調達が困難になり、以前に大量の車に使用されていた『自国では生産できない』中古部品を再利用するしかない」と述べています。
また、山東大学の経済学者・司令氏は「NDRCが導入する新たな規制は、中国当局が米中関係の全面的な分断の余波に備えていることを示している。しかし、多くの分野での原材料不足は避けられない。中国はリサイクルにもっと力を注ぐ必要がある。そして、習近平氏は『食糧の浪費を控えるように』と強調したばかりだ。中国は現在、危機を感じている」とコメントしています。
3.生産手段を失うファーウェイ
けれども、いくら中古品を使い回したところでどうにもならないものがあります。その一つに最先端製品があります。
8月7日、ファーウェイのコンシューマー事業部CEOの余承東(リチャード・ユー)氏は、「中国信息化百人会」でスピーチを行い、「非常に残念でならないのは、ファーウェイが半導体チップの設計のみを行い、製造を手がけていなかったことだ」と述べ、今秋に「Kirin1000」を搭載した新機種「Mate40」をリリースすることに言及し、「これが高性能チップKirinを搭載した最後の機種になるかもしれない」と語りました。
「Kilin」とは、ファーウェイ傘下の半導体メーカー「ハイシリコン(海思半導体)」が設計する半導体チップシリーズで、製造は台湾のTSMCが請け負っていました。
けれども、5月にアメリカの対中制裁で、アメリカに由来する技術を用いてファーウェイ向けに製造された半導体は、外国製でも事実上の禁輸対象となりました。これを受け、TSMCはファーウェイからの新規受注を5月に停止。9月中旬以降は出荷計画がないと7月中旬に表明しました。
ファーウェイの余承東氏は「もしアメリカの制裁がなければ、ファーウェイの昨年の市場シェアは他社を大きく引き離して圧倒的トップを奪うはずだった。しかし制裁の影響で、昨年のスマートフォン出荷台数は6000万台も減少した。今年の出荷台数はさらに落ち込むと思われる。今年に入って半導体チップをめぐる新たな制裁が加わり、チップの供給がストップしているため、今年のスマートフォン出荷台数は2億4000万台を割り込む可能性がある」と苦境に落ち陥ったと述べました。
筆者は昨年5月にファーウェイの設計・生産能力についていくつかエントリーしたことがあります。
ファーウェイは世界から排除されるか筆者は、これらの中で、ファーウェイが部品調達できなくなり、国内生産を余儀なくされた場合、半導体製造は2世代程度遅れることになるだろうと述べましたけれども、中国国内メーカーである「中芯国際集成電路製造(SMIC)」はチップ製造技術においては大きく後れを取っていると見られています。
アームをもぎ取られたファーウェイ
侵略はスマートフォンとともに
ファーウェイが力尽きる日
まあ、ファーウェイCEOの余承東氏自身が最先端チップについて「生産する方法がなくなった……非常に大きな損失だ」と漏らしているのですから、そういうことですね。
4.内循環路線は自滅への道
7月26日のエントリー「アメリカの反撃と徹底抗戦する中国」で、最近中国当局が経済の「内循環」を唱え始めたと述べましたけれども、残飯残すな命令だとか、中古品を使い回せ指令を見るにつけ、やはりその流れに進もうとしているように見えます。
内循環なんて聞こえはいいかもしれませんけれども、平たく言えば、鎖国政策です。
まぁ、アメリカが在ヒューストン総領事館を閉鎖したり、中国人民解放軍に支援・雇用されている中国人留学生や研究者への「ビザ発給禁止」していますし、それ以前に、武漢ウイルスで世界各国が入国制限しています。
鎖国するにはやりやすい条件だとはいえなくもないのですけれども、冒頭で示したように、今の中国は食糧危機が押し寄せています。
たとえ、経済だけは国内で回すことができたとしても、食料と水だけは供給を途絶えさせる訳にはいきません。
けれども、麦米は蝗と洪水、豚や海老蟹はウイルス、と食べるものがありません。
4月4日、中国の農業農村部および国家粮食・物資備蓄局の責任者は「中国の食糧は絶対に安全で保障があり、1人あたりの食糧占有量は世界平均を上回り、小麦と米の2大食糧の在庫はおおよそ全国民が1年間に消費する量に達している」などと述べていますけれども、そこには来年以降の答えがありません。
果たして中国が鎖国をいつまで続けられるのか分かりませんけれども、筆者には中国は「内循環」政策を採ることで却って自滅への道を歩み始めたのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
なんかね~…。