
1.総裁選の公開討論会
9月9日、自民党総裁選挙は党の青年局と女性局が主催する公開討論会が開かれ、石破元幹事長、菅官房長官、岸田政務調査会長の3候補が、論戦を交わしました。
子育て支援や女性の活躍推進、財政再建、拉致問題、衆院選比例代表の定年制について、3候補の主張を挙げると次の通りです。
〇子育て支援や女性の活躍推進
石破氏:女性が何に困り、どういう法律や予算が必要かリスト化し実行することに力を尽くす
菅氏 :各企業に女性の採用や登用などで数値目標を作らせる。不妊治療の公的医療保険の適用を実現したい
岸田氏:乳がんや子宮がんの検診だけでなく、出産費用も思い切って支援し、実質負担をゼロにする。まちづくりの観点からも少子化を考えないといけない
〇財政再建について
石破氏:経済を成長させることと、社会保障を変えていくことの、2つを合わせてやらなければならない。次の時代に過大な負担を残すべきではない
菅氏 :まずは経済再生。コロナ禍では、持続化給付金や無利子無担保の融資などで雇用を守り、倒産を防ぐことに力を注いで景気を回復させたい
岸田 :思い切った財政出動を行わなければならないが、財政健全化の方向性や意思を示していかなければ信用そのものに関わってしまう
〇北朝鮮による拉致問題について
石破氏:連絡事務所を平壌と東京に設け、表舞台できちんと話をすべきだ
菅氏 :条件をつけずに、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長と、直接向き合う覚悟で臨まなければならない
岸田氏:トップ会談も辞さない思いで、しっかりと現状を注視し、チャンスをものにしたい
〇衆院選比例代表の候補者を原則73歳未満とするルールについて
石破氏:『シルバー民主主義』にならないよう、若年と壮年互いの意識と制度の両立を図っていきたい
菅氏 :比例代表の定年制はいいことだ
岸田氏:定年制を維持する考え方には賛成だ
2.菅ちゃん一択
公開討論を受けて、ネットでは「菅ちゃん一択やんこれ しかし石破良いとこが皆無ってすげぇな」とか「石破の討論聞いてた人は、だからどうするんだ?って突っ込みたかっただろ
中身の無い希望論だけ」とか「平時だったら岸田みたいなのでも良いんだけどな今はそういう時代じゃないから」とか「菅ちゃんが一番現実的だな」とか、菅氏を推す声が優勢でした。
ネットの声が全てではないでしょうけれども、これを見る限り、もし来年の総裁選にも菅氏が引き続き立候補するなら、支持を集めると思いますし、解散総選挙を考えると選挙の顔としての菅氏も十分計算できることになります。
筆者もネットの意見に同感です、経済、武漢ウイルス対応等々を考えても、安倍政権をずっと支えてきた菅氏は、その実績に加え、安倍路線の継承を掲げているのは安心感があります。
3.石破構文
それにしても評判が悪いのが石破氏です。メディアの中には、未だに石破氏を推しているところもありますけれども、かなり民意とかけ離れている印象は拭えません。
確かに公開討論を聞いていても、石破氏の主張は「べき論」ばかりで具体的な政策は殆どありません。
ネットでは、石破氏の論法を「石破構文」と名付け、そもそも論に持ち込んでから長々と概念論や一般論を話して具体論を何一つ話さないと囁かれています。
その「石破構文」の例としてツイッターで次のような文章が投稿されています。
「今いみじくも安全保障政策の転換とおっしゃられたが、そもそも日本が現在採っている安全保障政策とは何であるか?まずここをきちんと議論するところから始めなければならないのであってそれなしでその先の議論などできようはずがない。では日本の安全保障政策とはなんであるのか?」
「ママァ、ご飯まだぁ?」
「今ある食材でどうやって解決していくか。美味しさ、見栄え、栄養のバランス、本当にそういう論理の展開でいいのか。食材や調味料の品揃えが問われている。調理器具の充実が問われている。料理の能力が問われている。家族の共感を得られるよう努めねばならんのです…」
「…っていうのはどういうことか… どうやって解決していくか… どれだけ知るか… 本当にそういう論理の展開でいいのか… 問われている… 問われている… 問われている… 問われています…」こちらのサイトでは石破氏の論法を次の三段論法の構造を持っていると指摘しています。
1)大本の○○政策とはなんであるか、ここから議論を始めなければならない確かにこの通りの論理展開で具体的中身は何もありません。テーマだけ入力すれば自動で石破構文の文章を自動作成する「石破エンジン」でも作れそうな勢いです。
2)そもそも○○政策とは[延々と一般論]である。
3)其の為にもっと検討しなければならない。
経済評論家の渡邊哲也氏は石破氏をして「1分で話せる話を30分で話す才能の持ち主だ」と述べていますけれども、まったくその通りだと思います。恐るべし、石破構文。
今回の公開討論でも、子育て支援や女性の活躍推進について石破氏は「どういう法律や予算が必要かリスト化し実行する」と述べていますけれども、これは要するに「何も考えてない」ということですからね。これでどう女性票を獲得するというのでしょうか。
総選挙までに考えるとしても、準備不足以前に、そもそも興味がないのかとさえ思っていまいます。
4.そんな学者みたいなことを言ってどうするのか
元都知事の舛添要一氏は、石破氏について、次のようなエピソードを披露しています。
自民党の憲法改正作業部会で私は改正案の取りまとめを担当したが、憲法9条について党内で激しい論争を行ったものである。私は立場上、さまざまな意見を集約して丸く収めようとしたが、石破氏は論理の一貫性を求めてやまない。そこで、私は「そんな学者みたいなことを言ってどうするのか」と彼に詰め寄ったが、石破氏は「学者のあんたが政治家みたいなことを言ってどうするんだ」と反論したのである。なるほど。石破氏が党内で人気がないというのも分かる気がします。激動する世界情勢の中、これから日本は様々な厳しい判断を下さなければならないというのに、"論理の一貫性"を求めていつまでも何も決められないというのは非常に危険だと思います。
このエピソードが示すように、多くの同僚議員は石破氏の理詰めの議論に辟易する。残念ながら、それが人望をなくすことになる。
舛添要一氏は岸田氏について「外相を4年半務めるなど政策通である。極端なところがなく、物腰も柔らかで落ち着いている。……しかし、安倍時代の次には、パフォーマンス先行ではない彼のような人がトップに立つと、日本の政治が変わるのではないかと思う。小池百合子東京都知事に代表されるようなポピュリズムが政治を歪ませているからである」と評しています。
"極端なところがなく、物腰も柔らかで落ち着いている"岸田氏は流石に石破氏よりも人望はあると思いますけれども、「平時の岸田は乱世の岸田になれるか」で述べたように、危機に際して果断に判断できるかという部分は少し心配です。
そして舛添氏は菅氏について、根っからのたたき上げとし、彼が総務相のとき、私は自民党の参院政審会長であり、多くの政策課題で協力したと紹介。都知事になってからは、菅氏の配慮で優秀な官僚を都に派遣してもらったり、政策の調整を行ったりすることができたと評価しています。
筆者も現状では菅氏がベターだと思います。ただ、菅氏の次の総理を考えると、今回立候補した3者以外の総裁候補と目される人の政策も聞いて置きたかったと思いますね。
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