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1.この2、3日で急にその気になられた
自民党総裁選は菅官房長官を軸に進んでいます。
8月31日、無派閥の菅官房長官は細田派を率いる細田博之元幹事長、竹下派に強い影響力を持つ青木幹雄元参院会長と会談。青木氏に「安倍政権の路線を継承する」と述べ、近く立候補を表明する考えを伝えました。
また現職閣僚を含む初当選同期7人や、自身に近い無派閥議員14人とも会い、立候補要請を受けました。
細田派は幹部会合を開いて、菅官房長官支持の方針を決め、細田派の下村博文選挙対策委員長、稲田朋美幹事長代行は立候補を見送る方向です。
同じく、麻生派が菅氏支持。会長の麻生太郎副総理は、立候補を模索する麻生派の河野太郎防衛相と会い、一本化に協力するよう求め、河野防衛相も立候補見送りの見方が強まっています。
なにやら、後から急に出て来て他の候補をごぼう抜きにした感のある菅官房長官ですけれども、政治ジャーナリストの田崎史郎氏は8月30日放送のフジテレビ系情報番組「Mr.サンデー」で、「水曜日の段階では辞められる前ですから、先週金曜日からこの2、3日で急にその気になられた。もちろんその背景には二階さんが推してくれたり、他の人が推してくれたりされたんだと思います」と説明しています。
2.麻生副総理に袖にされた岸田政調会長
菅官房長官の出馬で、一気に苦しい立場に立たされることになったのが岸田政調会長です。
もともと岸田政調会長は、安倍総理が後継にと推していたとされ、当初は次期総裁の最有力候補でした。
ところが、岸田政調会長の肝煎りとされた武漢ウイルス対策の「減収世帯への30万円給付」は、公明党が求める一律10万円給付に覆され力量不足が露呈。知名度や人気も上がらず、"自分では何も決められない人"と揶揄する声まで出る始末です。
8月30日、岸田政調会長は都内で約1時間、麻生副総理兼と会談し、立候補への意欲を伝え、協力を求めました。
会談後、岸田政調会長は記者団に対し、「突っ込んだ意見交換を行った。もともと同じ派閥で、ともに活動させてもらった先輩でもあり、引き続き、しっかりと意思疎通を図り、協力を頂けるよう努力したいし、期待している」と述べていました。
安倍総理が、岸田政調会長を後継にと推していることについて、麻生副総理は特に異を唱えてはいなかったのですけれども、麻生派は翌31日に菅官房長官支持の方針を固めました。要するに岸田政調会長の支持要請は麻生副総理に撥ね付けられた訳です。
その裏には何があったのか。
3.乗る度胸がなければ終わり
麻生副総理が岸田政調会長の支持を見送ったことについて、経済評論家の渡邉哲也氏は、「2条件を呑めなかったかと」とツイートしています。
渡邉氏はその2条件とは何かについてはそのツイートでは明言していないのですけれども、8月31日の別のツイートでは「今、ボールは岸田さんにある。岸田さんが古賀さんを切り、大宏池会構想に乗るかどうかですね。乗る度胸がなければ終わり、、、乗れば大きく流れが変わる。 私はこれがベターだと思う。」と述べています。
筆者はこの「岸田政調会長が古賀氏を切ること」「大宏池会構想に乗ること」がその2条件ではないかと睨んでいます。
4.水面下で蠢く大宏池会構想
では、一体、「大宏池会構想」とは何なのか。
岸田派も麻生派も、もとはといえば、自民党の名門派閥「宏池会」を源流に持つ派閥です。
自民党には大きく分けて2つの政治方針の路線があります。
一つは、日本の安全保障をアメリカに依存するかわり経済成長を最優先させた吉田茂の路線であり、もう一つは、憲法改正など日本の自立を志向した岸信介の路線です。
吉田茂の路線は、池田勇人と佐藤栄作らが引き継ぐことになるのですけれども、池田隼人は宏池会を結成し、佐藤栄作の派閥は後の経世会や平成研究会(竹下派)となっていきます。
一方、岸信介の路線は安倍総理の出身母体である細田派が受け継いでいます。
1998年、宏池会会長だった宮沢喜一が加藤紘一に派閥を譲ることが決まると、当時、派閥内で対立が深まっていた加藤紘一と河野洋平の間の亀裂が決定的となり、河野洋平は宏池会を離脱。麻生氏も行動を共にしました。
こうして宏池会は二つに分裂したのですけれども、この宏池会に谷垣禎一氏のグループを含めた3つの派閥が合流して党内の一大勢力にする、というのが「大宏池会構想」です。
実際、麻生派、岸田派の両派閥を中心に大宏池会構想は進められていました。
麻生氏は「野党が二度と政権交代にチャレンジできないぐらい力強い自民党の基盤づくりが必要だ」と訴えていたのですけれども、岸田氏は宏池会の前会長である古賀氏らの名前を出し「よく相談して決めたい」と遠回しに断りました。これに麻生氏は「自分で決められない政治家に派閥の長はできない」とこぼしたそうです。
結局、話し合いは、「麻生氏と岸田氏のどちらが新たな派閥の長となるか」などでも両派の溝は埋まらず、「大宏池会構想」は表向きは頓挫することになります。
5.平時の岸田は乱世の岸田になれるか
その後、麻生派は、2017年7月に旧山東派などと合流し、自力で党内第2派閥となる「志公会」を立ち上げ、その間に安倍総理の盟友の一人である甘利明氏も派閥に迎えました。
こうして麻生氏は地道に自派閥を増やしていったのですけれども、「大宏池会構想」そのものはまだ燻り続けています。麻生氏周辺は「岸田氏がポスト安倍を真剣に狙い始めたとき、必ずこちらに助けを求めてくる」と睨み、麻生副総理に岸田氏をぞんざいに扱わないよう進言しているそうです。
果たして、安倍総理の辞任を受けた今回の総裁選で岸田氏は麻生副総理に助けを求めてきました。そこで麻生氏は岸田氏支持の見返りに、「大宏池会構想」に乗るよう条件を出したのではないかということです。
もし、経済評論家の渡邉哲也氏が指摘する大宏池会構想を麻生氏が条件に提示したのが本当だったとすると、今回麻生派が菅官房長官への支持を決めたということは、その提案は決裂したということなのだと思います。
岸田政調会長について麻生副総理は最近、同僚議員に「平時の岸田だ。乱世の岸田じゃない」と語ったそうですけれども、激動の世界情勢を前に「決断できない人」を総理に据えると、情勢に流されるだけになってしまいます。
ただ、今回は菅官房長官が総理になるとしても、岸田政調会長には、その次の総裁選があります。或はそれが総裁へのラストチャンスになるかもしれませんけれども、その時に再び麻生氏から大宏池会構想を持ちかけられる可能性があります。
その時に決断できるか。平時の岸田から乱世の岸田に一皮剥けることが出来るのか。それがキーになってくるのではないかと思いますね。
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