日本が主導する新たな先端技術輸出規制

今日はこの話題です。
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1.先端技術輸出規制の枠組み


この程、日本政府は、人工知能(AI)や量子コンピューターなどの先端技術が軍事転用される事態を防ぐため、輸出規制の新たな枠組みを米国やドイツなどに提案する検討に入りました。

これは軍拡を止めない中国を念頭に、緊密に連携して素早く輸出制限できるようにするためのものです。

目下、アメリカがファーウェイなどを対象に制裁を進めているのですけれども、世界各国と比べてアメリカの規制が突出しており、各国の足並みは必ずしも揃っていません。

軍事転用技術の輸出規制に関する世界的取り決めについては、NSG(原子力供給国グループ)やMTCR(ミサイル関連機材・技術輸出規制)やWA(ワッセナー・アレンジメント)など、いくつかあるのですけれども、これらは世界各国が定期的に集まって議論して進めています。

けれども、NSGは48ヶ国、MTCRは34ヶ国、WAは41ヶ国と参加国が多く、議論が纏まるまで時間が掛かるという欠点を抱えていました。そこで、先端技術を持つ国に限って連携する枠組みを新たに設け、短期間で規制品目などを決められるようにするというのが、今回日本が提案しようとしている枠組みです。

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2.外圧のうまい使い方


日本政府は、この新しい枠組みについて、アメリカやドイツ、イギリス、オランダなどへ連携を呼びかけ、2021年にも実現をめざすとしています。

規制対象で想定する先端技術は「AI・機械学習」、「量子コンピューター」「バイオ」「極超音速」の4分野が中心となります
。いずれも軍事転用されると兵器や暗号解読などの精度が大幅に高まり、国際的な安全保障の脅威となる技術です。

新たな枠組みでは、規制対象となった品目は各国が自国内のルールに盛り込むことを想定していて、日本は外為法の規制対象品目に追加するとしています。無論、輸出する際には経済産業相の許可を必要にし、安全保障上、問題がある国への輸出は認められなくなります。

日本が新しい枠組みを世界に向けて提案などと意外と思う向きもあるかもしれませんけれども、経済評論家の渡邊哲也氏は「日本だけでやろうとすると、抵抗する人たちがいる。米国連動ならば抵抗できない。自発的に見える外圧のうまい使い方です」とツイートしています。

成程、アメリカやその他の国と連動するのであれば、どこかの国の息が掛かった、いわゆる業界の抵抗勢力とてどうしようもありますまい。

今年6月、G7外相が中国政府の「香港国家安全維持法」導入に「重大な懸念」を表明したことがありますけれども、実は日本がG7を主導していたのだとアメリカのポンペオ国務長官が明らかにしていましたけれども、日本政府も中々捨てたものではありません。


3.新国際秩序創造戦略本部


多摩大学ルール形成戦略研究所所長の國分俊史教授は、武漢ウイルスによって経済安保を考える切っ掛けとして、アメリカなどでは「経済合理性だけを追求したサプライチェーンではだめだ」という考え方や、「輸入依存ということ自体が、企業が社会的責任を果たしていないのではないか」という考え方が広がったと指摘した上で、日本はこれまで世界の秩序形成に能動的に関与できる立場ではなかったが、今回は色々な意味でリーダーシップを発揮できるポジションに立っていると述べています。

そして、能動的に関与するメリットとして、日本の強みを生かした形でルール形成ができることや、策定作業に関わることでルールがどういう方向性で作られていくのかを、事前に知ることができるため、企業が先んじて対応できることなどを挙げ、「他国に先行して議論に加わるだけでも、日本が勝てる確率は高まる」と述べています。

國分俊史教授は、6月に自民党が政務調査会に設置した「新国際秩序創造戦略本部」のアドバイザーを務めていますから、國分教授の意見は既に政府に伝わっていると思いますし、冒頭で取り上げた、新しい輸出規制枠組みを日本政府が他の先進国に提言すると公表されたということは、その素案は殆ど固まっていると思われます。

いずれにしても、対中包囲網をしっかり形成する意味でも、先端技術の輸出規制は重要なことですし、アメリカをも巻き込んでルールを定めることでアメリカの対中制裁突出を防ぐという側面もありますから、世界各国が協調しやすくなる利点も期待できます。

日本が主導する新たな先端技術の輸出規制の枠ぐみ。是非とも成功させていただきたいと思いますね。


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