
1.総裁選は両院議員総会方式で決定
9月1日、自民党の総務会は総裁選の実行方法について会議を行い、党員投票は実施せず、両院議員総会を開いて新しい総裁を選ぶことを決めました。
会議では、二階幹事長をはじめ党執行部は「新型コロナウイルスへの対応もあり、早急に新たな体制を確立して政策を前に進める必要がある」と、党員投票は実施せず、両院議員総会を開いて、国会議員と都道府県連の代表による投票で、新しい総裁を選ぶことを提案しました。
これに対し、出席者からは「一刻も早く新しい総裁を選ぶべきで、党員投票を実施しないのもやむをえない」などと、賛成する意見が出される一方、「開かれた方法で総裁選挙を行うため、広く党員の意見を反映させるべきだ」などと、党員投票を求める意見も出されました。
これを受け、執行部側は、都道府県連の代表の投票先を決める際には、予備選挙などを行い党員の意向を反映するよう、各都道府県連に促す案を示し、その案で了承されました。
これにより今回の自民党総裁選挙は、「国会議員票」394票と、47都道府の県連に3票ずつ割り当てられた141票の計535票で争われることになりました。
総裁選挙の日程については、執行部が検討していて、8日告示、14日投開票の案が有力です。
2.密室でも独断でもない
党員投票が行われないことが決まったことで、かなり不利になったと見られている石破氏は、党員投票を行うべきだと主張していましたけれども、自民党の鈴木総務会長は、記者会見で「党員投票を実施する形で総裁選挙をやるとなると、準備におよそ2ヶ月かかるということもあり、次の政権が2ヶ月間決まらないという事態は、安倍総理大臣にも負担をかけるし、いいことではない……今までの総裁選挙では、任期満了で行われた時には党員投票を実施する形で行ってきたが、今回のように任期途中で総裁が辞任した時は、その形でやったことはなく、常に両院議員総会で選んでいる。総務会ではそうした説明をして納得が得られたと思う」と述べています。
要は慣例に従って行うということです。
それでも、今回は党員投票をすべきだという意見も取り入れ、県連の票は党員による予備選挙を行うよう促すという案を決めているのです。ですから、マスコミが騒ぐほど密室でも独断でもないと思いますね。
3.予備選挙
既に一部県連では予備選挙を実施する方向で動き始めています。
東京都連は、郵便投票による予備選挙を行うことを決定。両院議員総会で投票する都連代表3名は予備選挙の最高得票者に投票するとのことです。
また、神奈川県連も独自の予備選で県連割当の3票の投票先を決める動きも出ているようです。党執行部が各都道府県連に予備選挙を促すとお墨付きを与えた訳ですから、今後その他府県連でも予備選挙が行われる動きが出てくるのではないかと思います。
そこで、党員投票が行われた総裁選で直近2回の投票結果を振り返ってみたいと思います。
〇総裁選実施日:平成24年9月26日(第1回投票)確かに平成24年、2012年の党員投票では石破氏が二位の安倍総理をほぼダブルスコアとなる165票を獲得しています。
安倍晋三 141票(議員票54票、党員算定票87票)
石破 茂 199票(議員票34票、党員算定票165票)
町村信孝 34票(議員票27票、党員算定票7票)
石原伸晃 96票(議員票58票、党員算定票38票)
林 芳正 27票(議員票24票、党員算定票3票)
〇総裁選実施日:平成30年9月20日
安倍晋三 553票(議員票329票、党員算定票224票)
石破 茂 254票(議員票73票、党員算定票181票)
では、来年、総裁任期切れに伴う総裁選が行われた場合、石破氏は再びこれくらい党員票を獲得できるのかは一つのポイントになるかと思います。
4.朝チャンの街頭アンケート
マスコミによる次の総理には誰が相応しいかの世論調査では、どの調査でも石破氏がダントツ1位の結果となっていますから、調査結果の通りなら、党員投票では1位になる筈です。
けれども、今回の総裁選についてTBSの「あさチャン!」が「"ポスト安倍"は誰がいい?」という街頭アンケートを50人に行ったところ、菅官房長官が18票でダントツで、石破氏は6票という結果となりました。これは河野太郎防衛省の9票、小泉進次郎環境相の8票より少ない票数です。
マスコミの石破推しに比べて随分と差がありますね。
もちろん、総裁選は自民党員による投票なのに、国民全部を対象とした世論調査の結果を持って来てどうするのかという意見もありますけれども、今回の総裁選で、党員投票を行う都道府県連の予備選挙で石破氏がどれくらい票を集めることが出来たのかである程度見極められるのではないかと筆者は見ています。
仮に、石破氏の得票が思ったよりも伸びなければ、もう2012年のような勢いはない可能性がありますし、石破氏自身、次の総裁選に向けて票の掘り起こしの為の地方行脚に出るかもしれません。

5.始まる前に終わっている
そもそも、石破氏は得票云々以前に、立候補することそのものが一つのハードルになっています。
総裁選に出馬するためには、自民議員20人の推薦人が必要ですけれども、石破派は19人。本人を除くと18人となり、最低でもあと2人の推薦人を確保しなければなりません。
けれども、現実は20人どころか、石破派の19人すら固め切れていないという声が出ています。
既に石破派19人のうち4~5人が、菅官房長官と二階幹事長の陣営に切り崩されてしまったとか、大臣ポストを約束された議員すらいると噂されているようです。
切り崩し工作は今も続いていて、一部には推薦人を集められないのではという見方すら出ているようです。
8月30日に行われた石破派の会合も、出席者は10人前後だったそうで、石破派内では「あいつは裏切ったらしい」と疑心暗鬼が広がっているとさえ。
ある石破派議員は、官邸サイドに「総裁選があっても、両院議員総会での選挙だったら石破は出ない。その代わりに石破派に大臣ポストを配分して欲しい」と持ちかけた、という情報すら流れているそうです。
これが本当であれば、石破陣営はボロボロです。
石破氏にとって今回の総裁選は「始まる前に終わってる」のかもしれません。
それが次の総裁選でもそうであるのかを占う意味でも、筆者は今回の総裁選での都道府県連票の行方に注目したいと思います。
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