
1.北朝鮮のSLBM発射準備
9月4日、アメリカのCSISは、北朝鮮が東部・新浦の造船所で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を準備している可能性があるとの分析結果を公表しました。
この日撮影された衛星写真には、過去のミサイル実験の準備に使われたものに似た船が写っていて、CSISは9日の建国記念日に合わせ、軍事的挑発行動を取る可能性を指摘しています。
ただ、これについてアメリカ国務省および国防総省は特にコメントを出していません。北朝鮮は昨年10月にSLBMの試射を行っていますけれども、トランプ大統領は特に問題視しませんでした。今回も問題視しないだろうとも見られています。
まぁ、トランプ大統領にしても、大統領選たけなわですし、アメリカへの脅威を煽るにしても、BLMや武漢ウイルスの方がよっぽどですからね。今現在、わざわざ北朝鮮を相手にするメリットはないと思います。
2.風雨に襲われる北朝鮮
北朝鮮がミサイルを発射するときは、かまってくれ、というか何かを寄こせという催促だとは、よく言われますけれども、今、北朝鮮は深刻な少量不足に陥っているという話があります。
長雨と台風の影響です。
北朝鮮は、主食のトウモロコシやコメなどが慢性的に50~60万トン前後不足しているため、食料増産を呼びかけているのですけれども、化学肥料の不足や自然災害に見舞われ、思うように進んでいません。
8月初旬、黄海北道、黄海南道、江原道、開城などで記録的な梅雨による洪水被害に見舞われたのですけれども、このうち黄海北道、黄海南道は北朝鮮の数少ない穀倉地帯です。
北朝鮮は「16680棟の家屋と630棟の公共施設が破壊され、390平方キロメートルの農耕地が被害を受けた」と発表。韓国の国家情報院は「金委員長が最高指導者に就任してから最大の被害を記録した2016年よりも農地の冠水被害が大きかった」と分析しています。
そして下旬になると台風8号がやってきます。
党機関紙「労働新聞」によると、黄海北道ではまたもや「数百町歩(1町歩=3000坪)にわたって農作物が被害を受けた」とし、隣の黄海南道でも農耕地が冠水。収穫直前のトウモロコシに大きな被害が発生しました。
北朝鮮当局は8月30日から31日にかけて経済担当の朴奉珠党副委員長や金徳訓総理をはじめ党最高幹部らをこぞって被災地に送り込み、実態の把握に努めたことから、相当被害が出たのではないかとも言われています。
そして9月に入ると、息継ぐ間もなく台風9号が襲います。
金正恩委員長は台風9号の被災地を視察し、平壌市全党員に被災地の復旧、復興のため立ち上がるよう緊急メッセージを出しました。
メッセージの中には「社会の多くの基本建設力量と人民軍部隊がすでに江原道と黄海南・北道の被害復旧現場に展開されている状況下で党中央は咸鏡南・北道の被害復旧を強力に支援する問題を他ならぬ首都の党員同志らに打ち明けることにした」と記されており、立て続けの台風被害に復旧が追いついていない様子が窺えます。
そもそも、大規模災害の最中、ミサイルを発射するなど正気の沙汰ではありませんけれども、地上発射型のミサイルではなく、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)にするところをみると、あるいは地上発射できるような状態ではないのかもしれません。
3.兵士らのせいで商売もできなくなった
北朝鮮は、雨などの自然災害で、徐々に疲弊していっています。
長雨による被災地の一つである黄海北道・銀波郡には、全国から大量の人員が投入され、復旧作業が進められています。
住宅の再建事業が行われているのですけれども、地方政府の予算不足で民間の投資に頼らざるを得ないのだそうです。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、8月9日、多数の兵士が現地に入り、道路の復旧、堤防の補修の後、住宅建設を行いました。
ところが、彼らは民家に、時々やって来て、盗み出した建設資材をパン、酒、タバコと交換して欲しいと要求するのだそうです。
兵士が盗みを働いて食い物に替えるなど、軍紀も規律もなにもあったものではありませんけれども、民間人は「絶対にダメ、買ったら罰せられる」と決して応じません。
というのも、このような事態が起きることを予見した当局が、住民に対し「兵士が持ち込んできたセメントや木材などの建設資材は決して受け取ってはならない、受け取った者は法的に処罰する」との警告を出しているからです。
それでも、住民の対応に腹を立てた兵士らは、報復として民家に押し入って「食べ物をよこせ」と凄んだり、店に押しかけて飲食をした後、「ツケで頼む」と言い残し、代金を払わなかったりなどの無法行為に及んでいるそうです。
住民からは「兵士らのせいで商売もできなくなった、建設やら何やら全然ありがたくない」と、銀波郡の行政当局に告発しているのですけれども、朝鮮労働党銀波郡委員会は、兵士に提供する食料もなく事実上黙認しているとのことです。
コリア・レポート編集長の辺真一氏によると、金正恩委員長は台風9号の被災地を視察し、平壌市全党員に被災地の復旧、復興のため立ち上がるよう緊急メッセージを出したそうですけれども、https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20200906-00196944/兵士が盗みをし、住民を恫喝するような状況でどこまで協力が得られるのか。
もし、北朝鮮という国が終焉を迎えることがあるとすれば、それは戦争などではなく、自然災害になるのかもしれませんね。
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