
1.菅総理の初外遊先
10月19日、菅総理は就任後初めての外遊でベトナムを訪れ、ベトナムのフック首相と会談しました。
両首脳は、2国間の往来の再開やサプライチェーンの促進を確認し、日本とベトナム、インド太平洋地域における平和と発展に貢献することを共有しました。
20日にはインドネシア・ジャカルタでジョコ大統領との首脳会談を行います。
菅総理は「インド太平洋諸国として、この地域の平和と繁栄のために貢献をする、こうした決意を持って、国の内外にしっかりと示していきたい」と一連の外遊で、菅総理は海洋進出を強める中国を念頭に、安倍前政権から引き継いだ「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に向けて連携を深める狙いとしています。
総理就任発の外遊はアメリカではないのかと思う向きもあるかと思いますけれども、今、アメリカは大統領選挙と武漢ウイルスでそれどころではありません。また、欧州も武漢ウイルスでこれまた余裕がありません。
そうした背景から、東南アジアへの外遊となったようです。
2.外遊先から外れた国
菅総理は、同じアジアでも今回の外遊で中国と韓国は選択肢から外しました。
先日、日米豪印(QUAD:クワッド)の外相会合が東京で開かれましたけれども、今回の菅総理の外遊はこの東京会議に続くものと見られています。要するに中国包囲網の足場固めという訳です。
宮家邦彦内閣官房参与は、「わが国がこの地域をより強調し重視し、特に南シナ海の治安情勢への関心があることを示すことが重要だと思う」と述べていますから、外遊にはそういう意図が含まれているということですね。
今回の外遊は、中国包囲網の延長線上の外交とすると、対象の中国は外遊先から外れるのは当然としても、韓国も外したということは、もはや中国包囲網のメンバーと考えられていない。レッドチーム判定しているということです。
3.河村建夫議員の訪韓と菅総理の真榊奉納
そんな中、17日から韓国を訪問している自民党の河村建夫・日韓議員連盟幹事長は、与党代表の李洛淵・前首相らと会談しました。
河村氏は、会談にあたり、「日本政府としては、徴用工問題等々韓国側からの対案を待っている状況になっております。そういうことが進んでいるのかどうか、今の現状をどう考えているのか。そういうことを話し合っておきたい」と述べ、徴用工問題などで悪化した日韓関係の改善に向けて韓国側と意見を交わし、来月に韓国側の日韓議連の日本訪問の地均しなどを行うとしていたのですけれども、韓国メディアによると、18日に行われた李洛淵前首相との会談では、李洛淵氏から、菅総理が靖国神社の秋季例大祭に合わせて「真榊」を奉納したことについて「遺憾の意」を伝えられたとようです。
これに対し、河村氏は、奉納は安倍晋三前首相の対応に倣ったものだと理解を求めた一方、「批判は受け入れる」とも述べたそうですけれども、批判は受け入れるとは、一体何をする積りなのでしょうか。不用意な発言は足下を見られるだけだと思います。
菅総理はこれまで官房長官時代には、靖国神社に真榊を奉納していなかったのですけれども、安倍前総理が毎年、春・秋の例大祭に真榊を奉納していたことから、こうした前例を踏襲したものとみられています。
菅総理が真榊を奉納したのは17日だったのですけれども、この日は河村氏が訪韓し、翌日に李洛淵氏と会談していることから「News US」サイトは、真榊奉納は河村議員の訪韓に対する当て付けで、韓国が日本に苦情を申し立てるような流れにしたことで碌な話し合いも出来なくさせたと述べています。
総理動静によると、河村議員は訪韓前日の16日午後5時32分に総理官邸を訪れ、約10分間菅総理と面会していますから、この時に自らの訪韓とその目的を伝えたものと思われますから、その後、ギリギリで真榊奉納を指示できなくはありません。
その真実はどうだったのかは分かりませんけれども、河村氏と李氏の会談では「日韓の懸案について当局が積極的に協議し、お互いに知恵を出し合うことで一致した」と、口約束というか方針というか具体性のない結論に終わったことから、結果として、河村氏の訪韓の意味を殆ど潰したことは間違いないと見てよいかと思います。
4.菅総理の布石
まだ政権発足1ヶ月しか経っていませんけれども、菅総理の動きを見ていると、今回の真榊の件といい、事前に一手布石を打っておく周到さがあるようにも見えます。
16日に行われた日本学術会議の梶田会長との会談でも、菅総理は会談前に井上信治科学技術政策担当相と面会し、井上担当相から、学術会議の役割について検証し、必要があれば見直しも行う考えを伝えられ、「しっかりやってくれ」と指示を出しています。
その後の学術会議の梶田会長との会談では、学術会議のあり方について井上担当相と梶田会長が連絡を取り合いながら改革を進めることで一致していますから、事前の一手を含めて会談の流れを決めてしまっている訳です。
9月25日に日中首脳電話会談が行われていますけれども、18日には日米豪印(QUAD:クワッド)の外相会合を行うとの報道があり、また、この時期に台湾を訪問した森元総理は、菅総理が台湾の蔡英文総統との電話会談を望んでいるとの言伝があったと報じられました。
まぁ、こういうのは外交ではよくある手法だとは思いますけれども、これも日中首脳電話会談前に、牽制の布石の一手だといえなくもありません。
菅総理について外交手腕は未知数だと言われてはいますけれども、現時点では、"普通"に外交をしているのではないかと思いますね。
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