
1.孔子学院の年内閉鎖を要求
10月15日、アメリカのポンペオ国務長官は、地方のラジオ局の取材に対し中国語の教育施設「孔子学院」がアメリカの学生や生徒に悪影響を与えると非難したうえで、すべての「孔子学院」の年内閉鎖を求めていると明らかにしました。
「孔子学院」は、全米に75ヶ所あると見られているのですけれども、近年は、政府や議会の懸念を受けて閉鎖も相次いでいます。
ポンペオ国務長官は、今月、全米50州の教育当局や大学に書簡を送り、「孔子学院」について「中国政府の宣伝機関だ」と指摘し、警戒を呼びかけていたのですけれども、ニューハンプシャー州の教育当局は声明で、連邦政府の警告に理解を示しながらも、閉鎖するかどうかは各大学や教育機関の判断だとしていて、今後閉鎖がさらに進むのかどうかが焦点となっているようです。
10月16日、こうしたアメリカの動きについて、中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で「孔子学院の運営は透明で、両国の人的交流を促進するために積極的に貢献している」と述べ、ポンペオ国務長官の"学生や生徒に悪影響を与えている"という主張に反論しました。
そして「ポンペオ氏などアメリカの一部の政治家は、直ちに誤りを正し、教育交流の政治問題化をやめるべきだ」と強く反発し、状況しだいで何らかの対抗措置をとる考えを示唆しました。
2.断交も中国人全員強制送還もありえる
中国がどういう対抗措置を取るのか分かりませんけれども、分かりやすいのは「やられたらやり返す式」の報復です。
今年7月には、アメリカがテキサス州の中国総領事館の閉鎖を命じたことへの報復措置として、四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じています。
10月17日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙は、関係者の話として中国の当局者らは、アメリカが国内の裁判所への中国人研究者の訴追することをやめるべきだとし、さもなくば中国在留のアメリカ人は中国の法律違反を指摘される可能性があると外交チャンネルを通じて警告したそうです。
要するに人質ですね。
今年7月23日、アメリカ司法省は中国軍との関係を隠してビザを不正に取得したとして、王新、宋晨、趙凱凱、唐娟の4人を訴追しています。
検察側は、こうしたビザの不正取得は、中国軍の科学者をアメリカへ派遣するための中国の計画の一端だとし、司法省のジョン・C・デマーズ次官補は、中国人民解放軍(PLA)のメンバーが軍との「本当の関係」を隠し、研究者用のビザを申請したと述べています。
司法省は「これもまた、我々の開かれた社会を利用して、学術機関につけ入ろうとする中国共産党の計画の一環だ」とコメントしていますけれども、孔子学院も同じ文脈だと思われます。
アメリカは人質にとられて黙っているとは思えませんから、もしそうなったら、こちらもこちらで「倍返しだ」をやってくる可能性は高いと思います。
経済評論家の渡邉哲也氏は、断交も中国人全員強制送還もありえると指摘しています。
3.日本も他人事ではない
孔子学院が設立されたのは2004年のことで、韓国のソウルに設置されたのが始まりです。中国の大学と諸外国の大学が提携し、中国語をはじめ、漢方、中国茶、太極拳、演劇、水墨画、書法、生け花などを教え、孔子の名を冠しておきながら、孔子の教えや儒教を学ぶ訳ではありません。
運営するのは、中国教育部が管轄する国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)。この漢弁が、孔子学院の開設資金として10万ドル(約1053万円)を大学に提供し最初の3年間は漢弁が運営費を負担します。
ただし、その後の運営費が負担できない場合でも漢弁は資金援助を続けるそうで、更に、孔子学院で教える中国人教師の給与や海外生活手当も負担するとのことですから、大学側にとっては助かる話です。
日本では、2005年に立命館大学が孔子学院を開設したのを皮切りに、06年に桜美林大学、07年に札幌大学、早稲田大学。08年は工学院大学、09年は関西外国語大学など、15大学で開設しています。
8月26日、当時官房長官だった菅総理は記者会見で、「わが国も動向は注視している」と発言していますけれども、アメリカが全ての「孔子学院」の年内閉鎖に踏み切ったとなると、同盟国の日本も同じ対応を求められる可能性は十分あると思います。
日本も孔子学院の排除に動くのか。動向が注目されます。
この記事へのコメント
どうか腐りきった自民党がこのネタで墓穴を掘りますように。