
1.気分は良くなってきている
10月3日、武漢ウイルスに感染して入院したアメリカのトランプ大統領は自身のツイッターに動画メッセージを投稿しました。
映像は病院内の執務室で撮影されたとみられ、トランプ大統領はスーツのジャケットを羽織り、ワイシャツ姿。両手をテーブルの上に組んで「この病院に来た時は体調は良くなかったが、今は回復してきて職務に復帰できるよう治療中だ……すぐに復帰できると思う。気分は良くなってきている。選挙戦を全うすることを楽しみにしている」と話し、未承認の抗体医薬の他に抗ウイルス薬のレムデシビルについて、「奇跡のような薬だ」と絶賛する一方で、「今後、数日間が本当の試練になる」などと
約4分間にわたって語り、アメリカ国民らに対して感謝の言葉を繰り返しました。
トランプ大統領の容体については3日朝、メドウズ大統領首席補佐官が過去24時間の状態は「とても懸念された」もので、「今後48時間が治療に重要な意味をもつ。完全回復に向けた明確な道筋はまだ見えていない」と語り、政権高官の話として、2日にホワイトハウス内で酸素吸入を行ったことも報じられていたことから、トランプ大統領の容体に懸念が広がっていたのですけれども、トランプ大統領の今回の動画は、自ら国民に語りかける映像を公開することで、健康に対する不安を払拭する狙いがあると見られています。
トランプ大統領は自身が武漢ウイルスに感染したことについて「今夜、ファーストレディーである妻、そして私は、新型コロナ(COVID-19)の検査で陽性だった。私たちは直ちに隔離と回復のプロセスを始める。私たちは『一緒に』これを乗り越える!」とツイッターに投稿しています。
これについて、それまで「中国ウイルス」と呼んでいたのを「COVID-19」と言っているというネットでの指摘を見かけたのですけれども、筆者は、「中国ウイルス」に感染したというと、中国に負けた感じがするので、トランプ大統領はわざわざ「COVID-19」という表現を使ったのではないかという気もします。
2.全てノーマルだ
一方、トランプ大統領の担当医師団は3日午前、ワシントン郊外のウォルター・リード陸軍病院の前で会見を行い、容体は深刻なものではないと述べました。
主治医のショーン・コンリー医師は「当チームと相談し大統領をウォルターリードに移す事にした。十分注意し最新鋭の環境で監視するためだ。72時間の診断だが、大統領の健康の進展にとても満足している。木曜日に、軽い咳、鼻詰まり、疲労感があったが、現在、その全てが改善、回復に向かっている。慎重ながらも楽観している」と述べ、過去24時間は発熱がなく、呼吸困難の症状も出ていないと明らかにしました。
また、ケア担当のドーリー医師は、「心臓、腎臓、肝臓機能を監視してるが、全てノーマルだ……今朝、大統領は酸素補給をしておらず、呼吸や歩行の問題はない……大統領は実に良いスピリットで、大統領は"私はもう退院できるような気分だ"と言った」と述べ、治療法担当のガラバルディ医師は、「8時間前に、大統領はコロナに対する特殊な抗体療法を受けた……昨晩、大統領は第1回目のレムデシビルの投与を受けた……我々はレムデシビルの投与を5日間続ける……今日の大きなプランは、大統領は実に良いスピリットで良い状況なので、食事をとり、脱水をしないよう水分を補給し、ベットから出て、回復するために大統領がしなければならない事をする事である」と今後の見通しを述べています。
3.コロナの衝撃を軽く見せた、その代価を支払っている
トランプ大統領の武漢ウイルス感染に中国は早速反応しています。
10月2日、人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は微博ウェイボーへの投稿で「新型コロナがアメリカに与えた衝撃と影響を、一貫して軽く見せようとしてきた……大統領本人と夫人がいま、その代価を支払っている」と皮肉り、「大統領選はすでに最終段階に入っており、選挙情勢にとってマイナス要因となる」との見方を示しました。
アメリカ国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)のウィリアム・エバニナ所長は8月7日「アメリカ国民のための選挙脅威アップデート」という声明で、中国について、「中国は2020年11月を控え、米国の政策環境に影響を及ぼし、彼らから見て中国の利益に反する政治家を圧迫し、中国への非難を退け反論しようと、影響力拡大の努力をしてきた……中国は、このすべての努力が大統領選挙レースに影響を及ぼしうると考えている」と中国は予測不可能だとみるトランプ大統領が再選に成功しないことを望んでいると分析していますけれども、環球時報・胡錫進編集長のコメントのとおり、中国はトランプ大統領が落選することを望んでいる可能性は十分あります。
4.God Bless Trump
一方、トランプ大統領の武漢ウイルス感染は中国にとってマイナスになるという見方もあります。
10月2日、中国社会科学院米国担当研究員の劉衛東(リウ・ウェイドン)氏は「トランプにとってこのことは、良くもあり悪くもある……しかし どちらにしても、感染はトランプにとって過酷な"中国叩き"の戦術を始める名分を与えただろう……まず いい点は、トランプが新型コロナに感染するほど、国家に奉仕するために一生懸命働いてきたということを表す証拠として用いられ、より多くの有権者たちが彼を支持できるようにすることだ。悪い点は、彼が支持を得るための多くの選挙イベントに、直接姿を表すことができないことだ」と指摘しています。
また、ホウ中英・中国海洋大学教授は、トランプ大統領の感染について「選挙結果に影響を与え得る"10月の奇襲的な事件"だとみている。この知らせが大統領選にどんな影響を及ぼすかは不確実だが、少なくとも ひとつだけ言えることがある。それは中国にとっては確実に"悪い知らせ"だということだ…トランプは自身の選挙運動で"中国叩き"を優先してきた。依然として猛威を振るっている新型コロナの大流行事態に対する自身の責任を回避するために『中国ウイルス』という表現を繰り返し使ってきた……トランプ大統領は今回のことをきっかけに、中国に対する攻撃を増やす機会を得る可能性が非常に高く、その結果 中国に対する圧力を強化できるため、とても憂慮される」と述べています。
専門家は感染によってトランプ大統領が「中国叩き」の大義名分を得ることになると懸念しているのですね。
大統領選について、トランプ大統領は一時的に打撃を受けるものの、早期回復すれば、却って人気が高まるという見方もあるようです。
トランプ大統領は先の動画で、アメリカ国民らに感謝の言葉を繰り返していましたけれども、回復した後、聴衆の面前で「私は中国ウイルスに勝って戻ってきた。神の祝福は我々にある」と宣言した上で、武漢ウイルスが中国発である揺るがぬ証拠を出すなんてことがあれば、再選は勿論のこと、アメリカ世論が一気に対中制裁・対中攻撃に傾くことだってないとはいえません。
一部では5日も退院する見通しだとも報じられていますけれども、トランプ大統領の速やかな回復を願いたいと思います。
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