
1.この組織が自分の研究に役立ったことはない
日本学術会議の会員候補6人の任命拒否を巡り、野党が騒いでいます。
10月2日、野党は、任命拒否された松宮孝明立命館大院教授、岡田正則早大院教授、小沢隆一東京慈恵会医科大教授の3人から合同ヒアリングを行いました。
松宮教授は「首相には推薦された候補者を拒否する権限はなく、理由のない拒否は違法だ……日本学術会議は憲法23条の学問の自由をバックアップするもので、憲法上の疑義を生み出すのではないか」などと首相の対応を厳しく批判。岡田教授は「はっきりした違反理由がない限り、従わないといけないのが法制局も含めた行政機関の常識だ」と強調し、小沢教授は「学会から推薦された者を任命しなければならないという1983年の国会答弁がある」と指摘しました。
1983年の国会答弁とは、当時の中曽根康弘首相が「実態は各学会が推薦権を握っている。政府の行為は形式的行為と考えれば、学問の自主独立はあくまで保障される」と、首相の任命拒否権を事実上否定する答弁をしたとされる件です。
野党を含め、日本学術会議は、任命拒否は学問の自由の侵害だなどと反発していますけれども、そのロジックが成り立つためには、日本学術会議の会員でない限り一切の研究・学問が出来ないという前提があります。
もちろん、実際はそんなことはありません。
国際政治学者で東京外大大学院教授の篠田英朗氏は「若い頃に一時期学術会議の末席を汚させていただいたことがありますが、私は業績不足ですから二度と誘われることはないので安心して言いますが、任命されないほうが学問の自由を享受できる、というのが普通の学者の本音だと思います」とツイートしていますけれども、数多の日本学術会議の会員以外の研究者も自由に研究をしている訳です。
松宮教授は、野党合同ヒアリングで、日本学術会議は学問の自由を「バックアップ」するなどと学問の自由をダイレクトに侵害しているとは言わない"巧妙な言い回し"をしていますけれども、元東京都知事の舛添要一氏は日本学術会議について、「私が日本学術会議の廃止を主張するのは、東大助教授のとき、この組織が自分の研究に役立ったことはないからだ。首相が所轄する長老支配の苔むした組織など、新進気鋭の若い学者には無用の長物。首相は優秀な学者に個別に意見を聞けばよいし、政治的発言は各学者が個別に行えばよい。税金の無駄遣いだ」とツイートしています。
舛添氏の主張の通りであれば、日本学術会議は果たして、学問の自由をバックアップしているのか疑問が残ります。
2.総合的、俯瞰的に判断した
野党合同ヒアリングでは、内閣府が安倍政権時と菅政権発足直前の9月上旬の2度にわたり、内閣法制局に対し、日本学術会議法の解釈を問い合わせていた件についての質問には、法制局は「解釈変更ではございません」と答えたようです。
野党は今回の件を国会で厳しく追及する方針だそうですけれども、日本学術会議法の解釈の変更を加えずに、任命拒否したということは、現行法で任命拒否に足る理由があることになります。
一昨日のエントリー「日本学術会議は日本の平和的復興と人類社会の福祉に貢献しているか」で、筆者は、任命拒否は日本学術会議法で規定されている「会員として不適当な行為」に該当したからではないかと述べましたけれども、あるいは本当にそうである可能性も否定できなくなってきたようにも思います。
ただ、任命拒否の理由について、政府は説明するべきだという意見は野党はいうに及ばず自民党内からも出ています。
自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「個別の人事は説明できないという立場は理解できるが、政府は、日本学術会議と丁寧にコミュニケーションをとることが何よりも重要ではないか……野党が国会の場で政府の手続きをチェックするのは当然だ」と述べていますし、 岸田前政調会長も記者団に対し、「今回のような形で任命されなかったのは前例がないと聞いており、注目している。理由も含めて実態について、政府から一度、しっかりと話を聞いてみたい」と述べています。
10月4日、菅総理はジャーナリストの田原総一朗氏、元朝日新聞主筆の船橋洋一氏と東京都内のホテルで面会したのですけれども、田原氏によると、日本学術会議の会員候補任命拒否に関して国民が納得する説明をするよう促したのに対し、菅総理は「よく分かった」と答えたそうで、面会後、田原氏は首相の反応について「前向きだった」と記者団に明かしています。
そして10月5日、菅総理は内閣記者会のインタビューで、「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた。省庁再編の際に、必要性を含め、在り方について相当の議論が行われ、その結果として、総合的、俯瞰的な活動を求めることになった。まさに総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断した」と説明していますけれども、もう少し突っ込んだ説明もあってしかるべきかな、とは思います。
3.スガ沢直樹は日本学術会議を土下座させられるか
一昨日の「日本学術会議は日本の平和的復興と人類社会の福祉に貢献しているか」のエントリーで、日本学術会議が中国の「千人計画」に積極的に協力していた疑いがあることを取りあげていますけれども、ここまで騒ぎが大きくなると、この部分もスルーは出来ないと思われます。
10月4日、自民党の長尾たかし衆院議員は、ツイッターに「日本学術会議が覚書を交わした中国科学技術協会は、中国工程院と提携。この中国工程院は事実上、中国国防部の傘下。日本学術会議が注目されたこの機に、何の為の覚書なのか?機微技術が流出しない方策を講じてきたのか?しっかりとご説明を受けたいと思います。税で運営されてますので、当然です」とツイート。更に「日本学術会議では、『学問によって学問の自由にガイドラインを設けている』のです。理科工学系の機微技術が海外に流出している可能性を放置している可能性があります」ともツイートしています。
これについて産経新聞はコラムで「欧米諸国のような先進民主主義国でも、防衛当局と産業界が協力して先端技術を開発するのは当たり前のことだ。軍事研究を行わないとする一方で、海外から集めた先端技術の軍事利用を図る中国から、多数の科学者を受け入れている事実には目を伏せたままだ」と述べ、襟をただすべきは学術会議の方だと批判しています。
10月5日放送の「グッとラック」に出演した任命拒否6人のうちの一人である松宮孝明立命館大学教授は、番組内で中国の千人計画について問われ、「聞いた事がない。それはデマだ」なんて答えていましたけれども、この人は別の番組で「ここに手を出すと内閣が倒れる危険がある、早く手を打った方がいいと政権のために申し上げておきます」とテレビで公然と菅総理を恫喝する発言をしたことが話題になりました。
まるで、つい先日、超ヒットを飛ばしたドラマ、「半沢直樹」に出てくる悪役のような台詞です。
「半沢直樹」があれだけヒットしたのも、厳しい世の中で懸命に生きている国民の中に、利権にまみれ、私欲に溺れる輩など絶対許せないという鬱屈した想いが充満しているのからなのだとも思うのですね。
ですから、野党や日本学術会議が政府に説明しろと詰め寄るのは結構ですけれども、今後、政府が理由を述べ、中国との関係の証拠を出されたら、日本学術会議は一気に逆の立場になると思います。
10月5日、加藤官房長官は記者会見で、毎年約10億5000万円が計上されている日本学術会議の予算使途について明らかにしましたけれども、人件費などを含む政府・社会などに対する提言が2億5000万円、各国アカデミーとの国際的な活動が2億円、科学の役割についての普及・啓発が1000万円、科学者間のネットワーク構築は1000万円、事務局人件費・事務費などが5億5000万円で、加藤官房長官は「委員の旅費もそれぞれの項目に入っている」と説明しました。
予算の半分が人件費で、旅費まで含まれているとは、適正な使途なのか色々ツッコミが入りそうです。
予算含めて、日本学術会議が説明から逃げたり、説明できなかったりすれば、土下座云々はさて置き、世論の糾弾を受けるのはむしろ日本学術会議の方になるのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
ロベルト・ジーコ・ロッシ
いつも日本の国益の為に貴重な発信をして頂き、ありがとうございます。
この度、拙メルマガ「政治の本質」で消費税廃止のエントリーの論文の中で
ボンペオ国務長官のニクソン記念館の演説について御ブログを転載
させて頂きました。
ゴールドマンサックスに代表されるウォール街やウォールマートに代表
される世界企業が自分達の利益を最大化する為に、中国の改革開放
政策に合わせて「人・物・金」の移動をより自由にするのが善なのだ!
というグローバル思想を世界に広めてきました。
このグローバル思想が戦略の階層の世界観に当たるのです。
そして世界観が、その下位構造である政策や政策の実際の運用で
ある制度を決めていくのです。
数学的表現を用いれば複数の制度を足し合わせた積分した関数が
世界観になります。
この制度には税制という言葉からも分かる様に税金も含まれます。
今まで論じて来た様に武漢で最初に広まったコロナウィルスと習近平
政権の打った手によって世界観の変更が起こりました。
世界観が変われば、その下位構造である政策と制度変更のレビュー
見直しが必要になったのです。
勿論、消費税を含む税制も例外では、ないのです。
習近平政権の愚策とコロナショックでグローバル時代は終焉しました。
アフターコロナ時代の自国ファースト、ナショナリスト思想の時代では
輸出還付金が本質の消費税は廃止すべきです。
今後とも宜しくお願い致します。