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1.オコンジョイウェアラ氏を推戴することにした
ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏と韓国の兪明希氏とで争うWTO事務局長選で、10月28日、WTO一般理事会議長のデービット・ウォーカー議長はジュネーブ駐在の韓国とナイジェリアの大使に対し、加盟国を対象に実施した事務局長選の支持候補の調査結果を示し、「オコンジョイウェアラ氏を推戴することにした」と伝えました。
調査結果によると、オコンジョイウェアラ氏がWTOメンバー全164ヶ国のうち、過半数を大きく超える104ヶ国の支持を受けたとのことです。
イギリス「ガーディアン」紙は、消息筋の情報として、オコンジョイウェアラ氏はアフリカ連合(AU)、欧州連合(EU)以外からも、カリブ諸国、中国、日本、オーストラリアなどの支持を得たとしています。
WTOの決定は全会一致が原則なのですけれども、WTO側が韓国側にオコンジョイウェアラ氏を推戴すると伝えたことは、兪明希氏に立候補を辞退するように勧告したのだと見られているようです。
この流れを受け、韓国でも「兪明希氏当選の可能性は遠のいた」との見方が強まる一方、「選挙終盤に日本が韓国に対する『ネガティブキャンペーン』に乗り出し、形成が不利になってきている」とし、外交関係者の間では「政府が韓日関係を管理さえしていれば、このような状況にはならなかっただろう」という声が上がっているそうです。
なんでもかんでも日本のせい。呆れて言葉もありません。
2.韓国を支持するアメリカ
WTOの事実上の辞退勧告に対し、韓国政府は「兪氏の辞退はない。最後まで最善を尽くす」という立場を堅持。韓国政府のある高官は「オコンジョイウェアラ氏が過半数の票を得ることは予想されていたが、差が大きく広がった……状況は悲観的ではあるが、米国とEU、中国など強大国間の水面下の協議によって加盟国の支持が変わって1次投票の結果が覆される場合もある」と選挙選を戦う積りのようです。
韓国がこのようにいう理由の一つに、アメリカがオコンジョイウェアラ氏を支持していないからです。
10月28日、アメリカはWTO本部で開かれた非公式会合で、ナイジェリアのオコンジョイウェアラ氏を支持しないと伝達。WTOのキース・ロックウェル報道官は、全加盟国会議後、記者団に「ある代表団がオコンジョイウェアラ候補の立候補を支持できず、引き続き韓国のユ・ミョンヒ本部長を支持すると述べた。その代表団はアメリカだった」と明かしました。
アメリカ貿易代表部も声明で、WTOは大改革を必要としていると訴え、兪氏を通商専門家として、特に優秀で、この機関を効率的に率いるために必要なすべての技量を備えていると持ち上げ、「WTOはこの分野で実質的かつ直接的な経験を持つ者が率いるべきだ」と兪氏への支持を明らかにしました。
韓国はこれを当てにして、アメリカがオコンジョイウェアラ氏の就任に対し拒否権を行使すれば、「全会一致」が成立せず、各国の調整によっては兪氏が当選する可能性もあると期待しているのですね。
3.11月9日に会議を召集
こうした状況にWTOはこの問題を再び論議するために、11月9日に会議を召集することとしています。
アメリカは先の通商代表部の声明でオコンジョイウェアラ氏を支持しない事を明らかにし、その理由にWTOの改革を上げているのですけれども、実際は、オコンジョイウェアラ氏が自由貿易の強力な推進者でかつ、中国との経済的結びつきが強いナイジェリア出身であることにトランプ政権が反発したとの見方が強いようです。
そうしたことでアメリカは韓国の兪氏を支持するというよりは、オコンジョイウェアラ氏でなければ誰でもよいという消極的支持だと見られています。
そもそも選好度調査では、104対60という圧倒的票差でオコンジョイウェアラ氏が支持されています。そのような状況で、アメリカが中国に近いことを理由に拒否権を行使すれば、今度は逆に中国が韓国の候補に拒否権を行使する可能性も出てくることが予想されます。
今の所、中国はオコンジョイウェアラ氏を内々に支持していても、公式には立場を表明していません。それは、中国がオコンジョイウェアラ氏の支持を明確にすれば、アメリカが反対すると見ているのではないかとの観測もあります。
4.全会一致できなければ投票
イギリスのガーディアン紙は、「11月9日までアメリカがオコンジョイウェアラ候補を支持しない場合は、WTOの25年の伝統を破り、規定に基づいて投票により次期事務局長を選出する可能性がある」と述べ、ウォールストリート・ジャーナル紙も「11月9日の会議では、必要ならばこのような合意の前例を破り、最後の方法として投票が実施されることがありうる」と伝え、EU加盟国のある代表は「投票になれば、ナイジェリア候補の勝利の可能性は99%」だとコメントしています。
ただ、WTOの専門家は「アメリカの意思に反する次期事務局長が任命されれば、今後のWTOの活動に大きな制約が生じるだろう」と述べ、オコンジョイウェアラ氏が事務局長になった場合、WTOの機能が停滞する可能性があるとも警告しています。
こうした状況に、韓国の中央日報は、11月3日の米大統領選でトランプ大統領が再選されれば、トランプ大統領はオコンジョイウェアラ氏の事務局長就任に一層の反対を示し、EUなどとの摩擦がさらに大きくなる可能性があり、バイデン氏が当選すれば「妥協の余地が生まれる」と伝える一方、専門家からは「兪氏を支持するメンバーが想定よりも少ない状況で、韓国がこのまま身を引かずに事務局長選びに残り続けることは難しい。一方で身を引いてアメリカのメンツを潰すことも恐れている」との指摘が出ていて、韓国外交部の報道官が29日に「韓国政府はWTO各メンバーの立場と期待を尊重するつもりだ」とコメントしたことを紹介しています。
一方、朝鮮日報は「オコンジョイウェアラ氏と兪氏の2人が任期を分け合うことも考えられる」との見方も出ていることを伝えたそうですけれども、これは解決策というよりは"妄想"に近い意見です。
なぜなら、WTOでは任期を分け合うやり方は認められていないからです。
5.板挟みの韓国
確かに過去にはWTO事務局長の任期を分け合った事例があります。
1999年のWTO事務局長選挙でニュージ―ランドとタイの候補者のどちらにするか加盟国間で調整がつかず、任期を2人で分け合うことで決着。1999年から2002年まではニュージ―ランドの候補が、2002年から2005年まではタイの候補がそれぞれ事務局長を務めました。
WTOはこれを教訓に2003年に新ルールを導入。コンセンサスを得られそうにない候補者は「自発的に撤退」が求められ、投票は「最後の手段」とされることが定められました。
つまり、WTOが兪明希氏候補に辞退勧告をして、最悪の場合に投票になると言われているののは、この新ルールに則って進めているだけだということです。
ただ、スイスのザンクトガレン大学で貿易問題を研究するサイモン・イブネット教授は、投票にまで持ち込まれた場合、「彼らはそれとない拒否を好む。あからさまな投票で負けるのは国の屈辱になる」とWTOの大国にとって採決は好ましくない前例になると指摘しています。
このままWTOが新しい事務局長すら決められない事態となると、現在、議論が進んでいるWTO改革は頓挫しWTOの求心力が低下してしまうことも懸念されています。
板挟みの韓国がどう動くのか、いずれにせよ11月9日には何らかの答えが出ることになります。
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