
1.テキサス州選挙訴訟を棄却
12月11日、アメリカ連邦最高裁は、テキサス州がペンシルベニア、ジョージア、ミシガン、ウィスコンシンの4州への訴訟を棄却しました。
棄却理由は、「テキサス州は他の州が選挙を実施する方法について、裁判で認められる法的利益を示していない」というもので、「テキサス州の当事者適格の欠如」と判断されたということです。
テキサス州に対しては、関係ないのに訴えるな、と門前払いした訳で、テキサス州が訴えていた違憲の主張を認める認めない云々はノータッチです。
尤も、棄却の判断については、アリト判事とクラレンス・トーマス判事が手続き上の理由で反対。残りは賛成だったようで、完全拒絶という訳でもないようです。
ただ、そうはいっても、原告のテキサス州を始め、憲法を遵守している州がそれで納得するとは思えません。審理されたのなら兎も角、門前払いですから。
実際、テキサス州議会のアレン・ウェスト共和党委員長は棄却を受けて「最高裁判所は、17の州と106の米国下院議員が参加したテキサス州の訴訟を棄却し、州は違憲行為を行い、自国の選挙法に違反する可能性があると布告した。法律を遵守する他の州に損害を与える影響をもたらすが、有罪の州は何の影響も受けない。この決定は、州が米国憲法に違反する可能性があり、責任を問われない可能性があるという前例を確立する。この決定は、立憲共和制の将来に広範囲にわたる影響を及ぼす。おそらく、法を遵守する州は、結束し、憲法を遵守する州の連合を形成する必要がある」との声明を発表しています。
2.合衆国憲法第三条
今回の棄却ではっきりしたのは、州が米国憲法に違反して、選挙法を遵守している州に損害を与えることがあっても、他州が当該州を訴えることは認められないということです。
一方、テキサス州が激戦4州を訴える資格がないと却下されたということは、逆にいえば、資格要件を満たす当事者の州が訴えるなら受理するという意味でもあるし、或いは州内の問題は州内で解決しろということでもある訳です。
選挙人を選ぶ権限を州議会が持っている以上、州議会が動けば結果は変わる可能性があるということです。
また、ネットの一部では棄却文に、合衆国憲法第3条(ArticleⅢ)に基づいて棄却したと示したことに注目しています。合衆国憲法第3条(ArticleⅢ)は次の通りです。
第3条連邦裁判所の管轄権は、合衆国憲法第3条第2節に定められているのですけれども、その下の第3節では反逆罪について触れられていて、反逆罪の処罰を宣言する権限は連邦議会が持つと定められています。
第1節 合衆国の司法権は、一つの最高裁判所、並びに連邦議会が随時制定、設置する下級裁判所に帰属する。最高裁判所及び下級裁判所の判事は、善行を保持する限り、その職を保ち、またその役務に対し定時に報酬を受ける。その額は在職中減ぜられることはない。
第2節 司法権は次の諸事件に及ぶ。すなわち、本憲法、合衆国の法律及び合衆国の権限により締結され、又は将来締結される条約の下に発生するすべての普通法及び衡平法上の事件。大使その他の外交使節及び領事に関するすべての事件。海事裁判及び海上管轄に関するすべての事件。合衆国が当事者の一方である争訟。二つ又はそれ以上の州の間の争訟、一州と他州の市民との間の争訟、[7]異なる州の市民の間の争訟、異なる諸州の付与に基づく土地の権利を主張する一州の市民間の争訟、並びに一州又はその市民と、他の国家、外国市民又は外国臣民との間の争訟。[8]
2 大使その他の外交使節及び領事に関する事件、並びに州が当事者であるすべての事件については、最高裁判所が第一審管轄権を有する。前項に述べたその他すべての事件については、最高裁判所は、連邦議会の定める例外の場合を除き、またその定める規定に従い、法律及び事実に関し、上訴管轄権を有する。
3 弾劾の場合を除き、すべての犯罪の裁判は陪審によって行われるものとする。裁判はその犯罪が行われた州で行われる。ただし、犯罪地がいずれの州にも属しない場合は、裁判は、連邦議会が法律で指定する場所で行われる。
第3節 合衆国に対する反逆罪は、合衆国に対して戦争を始め、又は敵に援助及び便宜を与えてこれに加担する行為のみに限られる。何人も、同一の明白な行為に対する2人の証人の証言があるか、又は公開の法廷における自白に基づく場合を除いては、反逆罪として有罪の宣告を受けることがない。
2 連邦議会は、反逆罪の刑罰を宣告する権限を有する。しかし、反逆罪の判決に基づく私権剥奪によって、その処罰を受けた者の生存中を除くほか、血統汚損又は財産没収が生じてはならない。
ネットでは、これらの記載から、この案件は連邦最高裁の管轄範囲外の訴訟ですよ、と暗に仄めかしているのではないかというのですね。
なるほど。そういう見方はしていませんでした。
もしも、トランプ陣営が全て「計画通り」に事を運んでいるのだとしたら、今後、舞台は段々と軍事裁判へと移っていくのかもしれません。

3.トランプの粘り
こうした事態にトランプ大統領が大統領令あるいは戒厳令の発令するのではないかとの声が益々高まっています。
12月6日、ジョン・ラトクリフ国家情報長官はFOXニュースのインタビューで、世界的なコロナウイルスに高い伝染性があることを中国共産党は既に知っていたが、中国から世界各地に拡散させたと指摘。ウイルスは世界経済を破壊し、アメリカ人の数十万人を含む数百万人の命を奪っただけでなく、同時に、悪い政治的影響を引き起こした。アメリカでは、疫病の状況は人々の投票対象にとどまらず、投票方法にも影響を与えたと述べました。
ラトクリフ国家情報長官は、10月21日に記者会見で「一部の有権者の登録情報がイランとロシアに別々に入手されたことを確認した。イランが有権者を脅し、社会不安をあおり、トランプ大統領に打撃を与える目的でなりすましメールを送っている」と、イランとロシアが大統領選に介入を試みた疑いがあると発表していたのですけれども、今度は中国も武漢ウイルスを使ってアメリカを攻撃したと述べた訳です。
ラトクリフ国家情報長官は、諜報機関からの情報は、中国がアメリカにとって最大の国家安全保障上の脅威であることを示しているとも述べています。
なんでも、ラトクリフ国家情報長官は選挙の45日後にあたる12月18日にそのレポートを出すと言われています。
その内容がどこまで踏み込んだものになるのか分かりませんけれども、内容によっては大統領令発令の可能性も考えられます。
ただ、筆者としては、トランプ大統領はそのレポートが出されたあと、その内容を受けて、激戦州を筆頭として各州議会が自身の州の不正を正すべく立ち上がるのどうかを見極めた上で、大統領令を出すのかどうか判断するのではないかという気がします。
ここまで来ても、まだなお、「法と秩序」を尊重し、我慢し続けるトランプ大統領。物凄いタフネスです。
トランプ大統領のキャンペーンと粘りは確かに世論を変えつつあります。それが来年の大統領指名までに実のかどうか。まだまだ目が離せません。
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