
1.中央経済工作会議
12月16日から18日に掛けて、中国の北京で中央経済工作会議が開かれました。
この中央経済工作会議は、現在の経済情勢を判断し、翌年のマクロ経済政策を決定する最高レベルの会議で、毎年1度行われます。
中央経済工作会議の開催前には、中央指導者らが全国各地で1ヶ月以上をかけて調査研究を実施、経済政策についての検討が行われます。
今年の会議には習近平国家主席、李克強首相、栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正の各中央政治局常務委員が出席しました。
この会議で習近平主席は重要演説を行い、来年の8つの主要な任務を設定しました。
その任務とは次の通りです。
1「国の戦略的科学技術能力の強化」一見して内向きの政策が多いようにも見えますけれども、筆者が注目しているのは五番目の食糧問題です。
2「産業チェーンのサプライチェーンの独立した制御可能性の強化
3「内需拡大の戦略的基盤の遵守」
4「改革と開放の包括的推進」
5「種子と耕作地の問題を解決する」
6「独占禁止を強化し、資本の無秩序な拡大を防ぐ」
7「大都市の未解決の住宅問題を解決する」
8「炭素のピークと炭素の中立性で良い仕事をする」
中国は、2018年には32億人民元を使って7.27万トンの食糧を輸入するなど、既に食糧の純輸入国となっています。
会議では、120万平方キロメートル、実に全国土の8分の1を食料生産のための耕地にするという「レッドライン」を明記したようです。
2.食べ残し禁止
今から約半年前の8月11日、習近平国家主席は、「飲食店での浪費をやめ、節約習慣をしっかり育てよ」という最高指令を突然出しました。
人民日報は8月12日付と13日付の記事、習近平主席が「飲食物の浪費は衝撃的で心が痛む」と語り、食料を無駄にしないための対策を取るように命じたと伝えました。
現在、中国都市部の外食産業で1年に出る残飯は1700万~1800万トンと推定され、3000万~5000万人分の1年間の食料に相当するといわれています。
実は、習近平主席は2013年から食べ残しをしないように求めていたのですけれども、今年また改めて指示を出したのは、食料問題が切迫する可能性があると見ているからです。
今年は、長江流域を中心に大雨による水害があり、食料輸入であるアメリカとの関係が極めて悪化していることも不安材料です。
習近平国家主席は7月に「国内大循環を主体として、国内外の双循環が互いに促進する経済の新発展モデルを目指す」と外需の落ち込みを内需で補完する"双循環経済"への転換を表明していますけれども、この食べ残し禁止もあるいは"双循環経済"の一環なのかもしれません。
習近平主席の指示を受け、たとえば、遼寧省ではレストランでの食事で例えば10人なら8人分だけ注文する「Nマイナス2」節約法や、湖南省では食べる前に測った体重によって料理の品数を決める対策が呼び掛けられ、北京ダックの名店・全聚徳は「浪費制止監督員」という新ポストを設けて客に「皿に残すな!」と要求するなどしているようです。
この人権度外視のやり方はいかにも中国らしいといえばらしいです。
そして、今月22日から26日にかけて北京で行われる、第13回全人代(全国人民代表大会常務委員会)の第24回会議で、「食品廃棄物対策法」の草案が正式に提出されました。
なんでもこの対策法は食糧の浪費を罰する法律のようですけれども、見方によれば、それまでして食料消費を抑えないといけない事態になっているともいえます。
3.大停電と食料生産
それに追い打ちを掛けているのが、中国各地で深刻化している電力不足です。
電力不足といえば、工業生産へのダメージが思い浮かびます。それは当然そうなのですけれども、食料生産とて電力は使われます。
農業におけるエネルギー消費は、大きく、生産現場で直接燃料や電力を使用することにより消費される直接消費と、購入した機材の製造に要したエネルギーを消費したと見なす間接消費の二つに大きく分けられます。
直接消費は、トラクター、収穫機、乾燥器などの燃料や畜舎や温室の冷暖房、照明などが代表的なものと数えられ、間接消費は、肥料、農薬、農業機械、ビニル資材、育苗ポットなど製造から輸送まで幅広く存在します。
電力を直接使うものに限定しても、畜舎や温室の冷暖房、照明や給排水ポンプなど多岐に渡ります。
現在、中国国有送電企業は、電力需給が逼迫しているとして「戦時状態」を宣言し、街灯の明かりは消えて真っ暗となり、既に工場生産に影響が出ている状況です。
市民生活とて3℃まで下がらないとエアコンは使用禁止、エレベーターも碌に動かない。
更には、1月から物流にまで制限を掛けるなんて噂さえ出ているそうです。ここまでくると、ロックダウンするのと殆ど変りません。
人様でさえ、こんな扱いなのに、畜舎の豚、牛、鶏などはもっと酷い扱いになると予想されます。
穀物、野菜とて給水・排水ポンプが使えないとなったら、水害、干害のどちらにも対応できなくなります。
この冬から来年春に掛けて、中国で大食糧危機が起こるかもしれません。
もしそうなったら、今年頭に武漢ウイルス禍でマスクが店先から無くなったように、日本国内の食料を買い占めて中国本土に送る輩も出ないとも限りません。
注意が必要かもしれませんね。
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