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1.日本人の同僚から質問があるので、さっと答えていただければ
1月12日、アメリカ・バイデン政権のサキ報道官は会見で、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の辞任について問われ、森氏の発言は容認できないと答えたと報じられています。
原文はこちらのホワイトハウスのブリーフィングですけれども、件の質問は山とある記者質問の中のほんの最後に"付け足し"のようにされた質問です。
しかも質問した記者本人が「日本人の同僚から質問があるので、さっと答えていただければ」という程度の軽い扱いです。
次に引用します。
Q.Jen, I have a question from a Japanese colleague, quickly.「女性が会議で話しすぎている」というフレーズが単なる引用だったのが、あたかも森前会長自身が発言したという前提からズレた質問であるのを脇においたとしても、サキ報道官の「we certainly didn’t approve of those comments.(もちろん、そのようなコメントを(良い)とは認めない)」という答えも、質問の「sexist(性差別主義者)」という言葉に応じた答えのようにも見え、やはりサキ報道課も事情を殆ど知らず、当たり障りのない受け答えをしただけではないかという印象を受けます。
MS. PSAKI: Okay, go ahead.
Q. He’s asking if the White House has a reaction to the resignation of Yoshiro Mori, the head of the Tokyo organizing committee, who had sexist comments on the fact that women talk too much in meetings.
MS. PSAKI: Let me — well, we certainly didn’t approve of those comments. Let me work to get you a more specific reaction from our team.
Thanks so much, everyone.
サキ報道官は、この件について、具体的な反応が得られるように働きかけてみましょう、と社交辞令とも本気ともつかぬ答えで締めていますけれども、いずれにせよ、重く受け取っているようには見えません。
これは、外務省が正確な情報と顛末をきちんと、アメリカに伝えればよいように思えます。
2.この件を非常に真剣に受け止めています
なぜ、サキ報道官は森前会長発言についてよく知らない、あるいは重い問題のようにはとらえていないかと筆者が思うのかというと、バイデン政権高官がまさに、女性蔑視発言を行い、脅迫した事件があるからです。
ポリティコ紙記者のタラ・パルメリ女史は、バイデン政権のダックロー副報道官と、バイデン氏の選挙運動を報道したアクシオスのジャーナリストであるアレクシー・マッキャモンドさんとの交際について調査をしていたのですけれども、ダックロー副報道官は、タラ・パルメリ女史に直接電話を掛け、「お前を破壊する……もし、この件を発表したのなら、お前の評判を台無しにしてやる」と脅し、更に、蔑称的で誤解を招くようなコメントもしたと伝えられています。
当然このことは大問題となり、先に取り上げた森前会長発言に関する質問を行われたのと同じ会見で、記者がサキ報道官に質問をぶつけています。次にそのやり取りを引用します。(機械翻訳)
Q わかりました。 もう一つ質問を あなたの代理の女性記者がある記事のコメントを求めてきた女性記者をいじめたとの発言をしたことで 一週間の停職は誰の考えによるものですか 辞職や解雇の可能性はありませんが そして、コメントを求めてきた女性記者に性差別的な発言をしたのに、どうやってこの人を、女性記者を相手にした広報の仕事に就かせておくことができるのでしょうか?ダックロー副報道官は1週間の停職処分になったのですけれども、サキ報道官はダックロー副報道官の言動について、真剣に受け止めているとし、「完全に受け入れられないものだ(It’s completely unacceptable.)」と述べているのですね。これは森前会長の「時間が掛かる」発言のときに応じた「もちろん、そのようなコメントを(良い)とは認めません(we certainly didn’t approve of those comments.)」とは明らかに違います。
MS.PSAKI:まず最初に言わせてください、明らかに、ケイトラン、私はこの件を非常に真剣に受け止めています。 私は女性ですが、この町で20年近く、報道やコミュニケーションの仕事をしてきました。 皆さんの多くは私を知っていますし、私と親しく仕事をしてきましたし、大統領を含め、この建物にいる多くの人を知っていると思いますが、この疑惑を非常に真剣に受け止めています。
あなたが質問している副官のTJダックロは記者に謝罪しています - 発言があった直後に記者に謝罪しました。 彼は私生活に関連した話で白熱した会話をしていました。 それが許されるとは言っていませんが、ホワイトハウスやホワイトハウスの政策などに関連した問題ではなかったことをはっきりさせておきたいのです。
これは大統領が定めた行動基準ではなく、私が定めた行動基準でもなく、私は彼の直属の上司です。
最初の謝罪に加えて、彼は記者に個人的なメモを送り、深い後悔を表明した。 君が指摘したように 彼は1週間の無給停職処分を受けた これは重要なステップだ 私はそのような措置がとられたことを知りませんので、皆さんに確認してもらいたい。
それに加えて、彼が復帰したらポリティコの記者とは一切仕事ができなくなります。 誰もが誰かに不快な思いをさせたくないし、不快な立場に置かれたくないし、それは許される行動ではありません。
そのため、このような措置がとられたのですが、私たちはこれは重大な処分だと考えています。
Q しかし、彼は今後も女性記者と仕事をすることになるでしょう。 ただの敵対的な会話ではありませんでした。 私たちはおそらく、そのようなことを何度も経験していると思いますし、その逆もあるでしょう。 そういうこともあります。 しかし、この報告書によると、彼が使ったとされる言葉は間違いなく性差別的なものです では、その部分にはどう対処していますか?
MS. PSAKI: 完全に受け入れられません。 彼はそれを知っています。 そのことについては彼と話し合ってきました。 だからこそ、私たちも連絡を取りました - 今日より少し前ですが、彼らの会話の直後に、私の同僚であるケイト・ベディングフィールドは『プレイブック』の編集者に連絡を取り、謝罪を伝えました。 私たちはそこのあらゆるレベルで謝罪を伝え、このようなことは二度と起こらないことを明確にしました。 ホワイトハウスでは絶対に許されません。
なにより、最初に「very seriously(非常にシリアスに)」と断っていますからね。そこまで重く受け止めているということです。これと比べれば、森前会長の発言の件は明らかに軽い扱いです。
3.バイデン、言い訳はなしだ
けれども、それほどのことをやらかしたダックロー副報道官は一週間の停職なのですね。日本からみれば、マスコミに切り取り報道されて吊し上げになった森前会長が辞職したことと比べれば随分と軽い処分のように見えます。
もっとも、アメリカではこの件で騒ぎになっているようです。というのも、バイデン大統領は就任当日に「政権職員が同僚に対して無礼な振る舞いをしたら、私がその場でクビにする」と支持者たちに誓っていたのですね。
しかも「言い訳はなしだ(No ifs, ands or buts)、みんなだ(everybody)」と強い口調で言い切っています。
にも拘わらず、クビはおろか、一週間の停職とはどういうことだ、と炎上しているというのですね。まぁ当然でしょう。
果たしてバイデン氏が自分の言ったことを忘れているのか、口だけだったのかは分かりませんけれども、少なくとも言動不一致であることには違いありません。
日本のマスコミはこうしたバイデン政権のダブスタ、不安定ぶりを殆ど報じていませんけれども、森前会長が女性蔑視発言をしただのなんだの切り取り報道で遊んでいる暇があるのなら、ダックロー副報道官の言動と並べて、女性蔑視発言とはどういったものかというものを検証するくらいすべきではないかと思いますね。
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