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1.自由の象徴たるトランプ
2月15日、アメリカのトランプ前大統領はフロリダ州のウエストパームビーチで、集まった多くの支持者の前に姿を現しました。
車内から手を振る形での登場でしたけれども、トランプ前大統領の車列が人々の前を通り過ぎると、支持者たちは声をそろえて「USA」と繰り返し、ある参加者は「あれが私の大統領だ」と叫ぶなど熱狂的なまでの人気を見せつけました。
ある支持者の一人はTV局WPECに対し、トランプの政治生命は終わったという考えを「100%否定」し、「始まったばかりだ」と述べ、支持者の心の中心には、「自由」への信念と、「自由の象徴たるトランプ」への支持があると語っています。
2.キングメーカーとでも何でも呼べばいい
2月14日、トランプ前大統領は弾劾裁判で無罪評決を勝ち取りましたけれども、評決では、共和党上院議員は50人中43人が無罪票を投じました。
無罪票を投じたサウスカロライナ州選出のリンゼー・グラム上院議員は、今後の共和党にトランプ前大統領の役割について、「ドナルド・トランプは共和党のなかで、最も力強いメンバーだ……このMAGA(Make America Great Again)運動は、続けていく必要がある」と述べています。
共和党支持層からのトランプ前大統領への支持は圧倒的です。
議会襲撃事件からわずか数日後のロイターとイプソスの世論調査では、共和党支持層の70%がなおもトランプ前大統領の大統領としての仕事ぶりを評価すると答えていますし、その後の調査でも、再出馬が認められるべきだとの回答は同程度あります。
2016年大統領選挙の予備選に名乗りを上げたマルコ・ルビオ上院議員の側近だった共和党ストラテジストのアレックス・コナント氏は、「共和党は本物のジレンマに直面している。トランプ氏がいると勝てないが、同氏なしには勝てないのも明らかだという状況にある」とコメントしています。
トランプ前大統領は、これまで大統領選再出馬を匂わせてきましたし、また今回の弾劾裁判で有罪に賛成した共和党議員に対しては、次の選挙の予備選で刺客を立てるのを熱心に支援したがっているとも伝えられています。
トランプ前大統領の側近は「再出馬するかは彼次第だが、彼は共和党の方向性に際し、まただれが党のメッセージを真剣に唱導するのかを評価する上で、なお甚大な影響力を持っている……これはキングメーカーとでも何でも呼べばいい」と語っているようですけれども、共和党内で力を持っていることは間違いないでしょう。
3.共和党分裂
共和党内にはこうしたトランプ前大統領の影響力を疎ましく思っている議員もいます。
弾劾裁判の評決でトランプ前大統領の無罪を支持した共和党上院のミッチ・マコーネル院内総務は裁判終了の直後、1月6日の議会襲撃について「出来事を誘発した事実上の、そして道義的な責任がある」とトランプ前大統領を非難しました。
弾劾裁判の評決で無罪評を投じておきながら、責任があると批判する。マコーネル院内総務のこの"コウモリ"的な立ち位置は、トランプ前大統領と距離を取ろうとしていることを見せることで、トランプ前大統領やその支持者達の全面的な怒りを躱しつつ、トランプ前大統領の影響力を削ごうとしているのだと指摘されています。
これに対し、前述のリンゼー・グラム議員は「共和党員がこの件についてどう考えているかということから見れば、マコーネル院内総務の話は"外れ値"に当たると思う」と発言しました。
グラム議員は1月に弾劾裁判の実施が決定した後、トランプ前大統領に盾突く共和党議員は誰であれ、党から「抹消されることになるだろう」と述べていたのですけれども、"外れ値"だと名指しされたマコーネル院内総務は、抹消対象だと警告したことになります。
グラム議員はマコーネル院内総務の発言は2022年中間選挙で共和党の助けにならないと述べ、「マコーネル氏の発言を考えるに、彼はこれで心の重荷を下ろした気分だろうが、不幸にも共和党への重荷を増やしてしまった」と指摘。中間選挙の共和党候補者は必ずや、マコーネル氏のトランプ氏非難についてどう考えるか、聞かれることになると語っています。
4.反トランプ党
更には共和党内には「反トランプ党」結成の動きも燻っています。
共和党穏健派のメリーランド州知事、ラリー・ホーガン氏はNBCの「ミート・ザ・プレス」で、党の精神を巡って大きな党争が繰り広げられることになると発言。その上で「われわれはトランプ氏の熱狂的支持者層から離れていき、党が常に依って立ってきた基本理念に立ち返ることになると思う」と話していますけれども、ロイターは、2月5日、政権の要職に就いた経験もある120人以上がオンライン会議を開催したと報じました。
記事によると、出席者には元議員らのほか、ブッシュ政権、レーガン政権、そしてトランプ政権の当局者も含まれていたそうで、オンライン会議を共同で主催した下院共和党会議の元政策立案責任者、エバン・マクマリン氏は、会議を開いたのは「共和党の大部分の議員たちが、米国の民主主義を過激化させ、脅かしている」ためだと明らかにしています。
出席者の多くは、多くの共和党議員がジョー・バイデン勝利の結果の承認を拒否したことに、幻滅しているとし、出席者のうちおよそ40%が新党の結成に賛成しているとされています。
新党の党名として「インテグリティ」や「中道右派」などが挙げられたそうで、今後の選挙で独自候補を擁立するほか、無所属を含め所属政党を問わず、中道右派の候補を支援することを検討していると伝えられています。
もっとも、マクマリン氏によると、共和内に「派閥」を結成することも、選択肢に挙がっているようです。
この会議の開催について質問されたトランプ前大統領側の広報担当者は、「その負け犬たちはジョー・バイデン票を投じたときに、共和党を離れている」と述べ、冷たく突き放しています。もう相手にしていない感じですね。
5.第三政党を求める声
こうした共和党の内紛をよそに、アメリカの世論は増々第三政党の登場を求めるようになっているようです。
調査会社ギャラップが1月21日~2月2日に実施した最新の調査結果によると、民主・共和両党が「十分な働きをしている」と回答した人は33%であるのに対し、「第三政党が必要」と答えた人は62%と、昨年9月の57%から5ポイント増加しました。
これは、ギャラップが2003年に同じ調査を開始して以来、最も高い割合で、新党の創設を支持する人は、共和党支持者の63%、無党派層の70%。民主党支持者46%に及んでいます。
また、共和党支持者のうち、トランプ前大統領に共和党のリーダーであり続けてほしいと希望している人は68%。党がさらに保守化することを望む人は40%となっています。
1月28日のエントリー「トランプの脅し」で、トランプ前大統領が率いる架空の「愛国者党」は、有権者のほぼ4分の1(23%)の支持を得るという世論調査結果を取り上げましたけれども、万が一、トランプ前大統領が新党を立ち上げでもしたら、共和党は分裂必至になります。
はやくも2022年の中間選挙に向けて政局となりそうな動きですね。
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