中国海警法に潜む野心を食い止めよ

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。



1.領海内での武器使用は排除されない


2月17日、海上保安庁の奥島高弘長官は定例の記者会見で、中国が海上警備にあたる海警局に武器の使用を認める法律を今月1日から施行したことに関連し「これまでのところ、沖縄県の尖閣諸島周辺海域での海警局の船の動きに大きな変化は認められない」と述べ、引き続き動向を注視する考えを示しました。

奥島高弘長官は、尖閣諸島周辺の日本の領海内で中国海警局の船が武器を使用した場合の対応について、「国際法上、許容される範囲内において、海上保安庁法第20条第1項で準用する警察官職務執行法7条の要件に該当する場合には警察比例の原則に基づき、武器を使用することは排除されないと認識している」と述べました。

そして、「尖閣諸島周辺海域は、依然として予断を許さない厳しい情勢にある……これまでのところ現場海域において、海警局の船の動きに大きな変化は認められない」と述べた上で「様々な事象が発生した場合に備え、領海警備態勢を強化してきている。海警局の船の動きについては、わずかな変化も見逃すことがないよう緊張感を持って冷静にかつ、きぜんとして対応を続ける」と引き続き動向を注視する考えを示しました。

ただ、中国船の動きに大きな変化はないといっていますけれども、それは、ここ最近の話であって、もっと長いスパンで見ればそんなことは言えません。

2021-02-22 085601.jpg


上の図は海上保安庁が発表している、中国海警局に所属する船舶等による接続水域内入域及び領海侵入隻数のグラフですけれども、2012年9~10月あたりから、接続水域侵入も領海侵犯も激増していることが分かります。

この急増した2012年秋は、習近平主席が権力を握った時期です。

2012年11月の全人代で、胡錦濤・温家宝らが引退し、11月15日に開催された第18期1中全会で習近平は党中央政治局常務委員に再選されると共に、党の最高職である中央委員会総書記と軍の統帥権を握る党中央軍事委員会主席に選出されています。

この時期から尖閣への接続水域侵入も領海侵犯も劇的に増え、それ以降ずっとこの水準を保っています。つまり、習近平主席は尖閣侵略を企図している訳で、"中国船の動きに大きな変化はない"というのは、尖閣が侵略され続けているということです。


2.中国海警法


今回、中国が定めた海警法は、こちらの中国の司法部ホームページで公開されていますけれども、ジャーナリストの福島香織氏は最大のポイントとして、第20条の、「中国当局の承認なしに、外国組織、個人が中国管轄の海域、島嶼に建造建や構築物、固定、浮遊の装置を設置した場合、海警がその停止命令や強制撤去権限をもつ」を取り上げ、条文を続けて読むと、「例えば尖閣諸島周辺で日本人が漁業を行ったり海洋調査を行うには、中国当局の承認と監視が必要で、承認を得ずに漁業や海洋調査を行って海警船に捕まった場合、罰金を支払う、あるいは書面で罪を認めれば、連行されて中国の司法機関で逮捕、起訴されることはないが、日本人が「尖閣諸島は中国の領土である」と認めた証拠は積み上がる」と指摘しています。

中国の海警法に警戒感を示しているのは日本だけではありません。

1月29日、ベトナム外務省の報道官は「ベトナムは国連海洋法条約に基づいて、水域の管轄権を証明する十分な法的根拠と歴史的証拠を有している……関係国がベトナムの主権を尊重し、緊張を高める行動を行わないよう求める」とする声明を出し、2日前の27日には、フィリピンのテオドロ・ロクシン外相が「法律制定は主権者の特権だが、南シナ海は開かれていることを踏まえると、海警法は戦争を仕掛けるという脅迫だ……抵抗しなければ、屈服したとみなされるだろう」とツイートし、既に外交ルートで抗議していることを明らかにしました。

これに関連し、フィリピンのオンラインメディア「ラップラー」は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が、年内策定を目指している南シナ海の紛争抑止に向けた「行動規範(COC)」について、「COCは策定前に死んだも同然だ」と批判しています。


3.話し合いで解決しよう


こうした日本およフィリピンなどの反応に対し、中国は牽制と言い訳を始めました。

2月17日、中国メディアの環球網は、海上保安庁の奥島高弘長官が尖閣諸島での武器使用を「排除しない」と述べたことを報じ、緊張感をもって万全の体制で臨む姿勢を示したと伝えました。

また、防衛省の山崎幸二統合幕僚長と米軍のミリー統合参謀本部議長が同日テレビ会議形式による会談を行ったとし、日米制服組トップ同士の会談にて双方が中国海警法について意見交換を行うとともに、「自由で開かれたインド太平洋」を維持する上で、インド太平洋地域に米軍が配備される重要性や、日米関係のさらなる強化の必要性で一致したと報じました。

その上で環球網は「釣魚島は中国固有の領土であり、海警法は中国の国内法である」とした上で、あるアナリストの見方として「日本の政府やメディアがこれを話題にするのは全く意味がなく、むしろ地域の緊張をあおる行為である。日本は『4つの原則的共通認識』の精神に基づき、対話を通じて意見の相違をコントロールし、関係海域の平和と安定を守るべきだ」と伝えました。

日本がはっきりと立ち向かうと姿勢を見せた途端、「海警法は国内法だ」とか「話し合いで解決しよう」だの言い訳しました。

けれども、「話し合いで解決しよう」といったのは"どこかのアナリスト"であって、中国政府の公式声明でもなんでもありません。こんな言い訳を何万個聞かされたところで意味がありません。中国政府が「海警法」を定めた以上、その本音はあくまでも海警法の文面がどうなっているかで見るべきだと思います。


4.口撃の段階で優勢を取れ


駐中国フィリピン大使を務めているスタ・ロマーナ氏は、今回の海警法について「中国は外務省のスポークスマンと同様に中国大使館を通じて、フィリピンや特定の国をターゲットにしていないこと、また、最初は力に頼らないからと、我々を安心させようとしている」と記者会見で述べました。

また、海警法の文言についても、当初の草案よりも「より穏健」であると指摘しました。

実際、海警法の草案は11章80条と、可決された法律の11章84条とは異なっています。

例えば、先に紹介した第20条は可決された海警法では次のような記述となっています。
第二十条 未经我国主管机关批准,外国组织和个人在我国管辖海域和岛礁建造建筑物、构筑物,以及布设各类固定或者浮动装置的,海警机构有权责令其停止上述违法行为或者限期拆除;对拒不停止违法行为或者逾期不拆除的,海警机构有权予以制止或者强制拆除。

第二十条 外国の団体又は個人が中国の管轄水域及び島嶼・礁上に、中国の主務官庁の承認を得ずに建築物若しくは工作物を建設し、又は各種の固定装置若しくは浮遊装置を配備した場合、海警機関は、一定期間内に上記の不法行為の停止又は撤去を命じる権利を有し、不法行為の停止を拒み、又は一定期間経過後に撤去しないときは、海警機関は、不法行為を停止し、又は撤去を強制する権利を有する。(機械翻訳)
これに対し、草案では上記にあたる第18条で次のようになっていました。
第十八条 对外国军用船舶和用于非商业目的的外国政府船舶在我国管辖海域违反我国法律、法规的行为,海警机构有权采取必要的警戒和管制措施予以制止,责令其立即离开相关海域;对拒不离开并造成严重危害或者威胁的,海警机构有权采取强制驱离、强制拖离等措施。

第十八条 非営利目的で使用される外国軍艦及び外国政府船 海上警察機関は、外国軍艦及び外国政府船舶が本国の管轄水域内で商業目的で本国の法令に違反した場合には、必要な警戒及び取締りの措置を講じ、直ちに当該水域からの退去を命じる権利を有するものとする。
必要な警戒・管理措置を講じて停止させ、直ちに関連海域からの離脱を命じること。
船舶が出港を拒否し、重大な危害や脅威を与えた場合には、海上警察庁は強制撤去、強制牽引などの措置をとる権利を有しています。
海上警察庁は強制立ち退き、強制曳航などの措置をとる権利を持っている。
草案からの違いについて先に取り上げた福島香織氏は「ニュアンスが若干マイルドになった印象もある」と述べていますけれども、草案にあった「強制牽引」だとか「強制立ち退き、強制曳航」といった文言が「不法行為の停止又は撤去」になったくらいで、筆者には果たしてマイルドになったと言えるのかどうかよく分かりません。

いずれにせよ、いくらかマイルドに表現したところで、中身そのものが後退している訳ではありません。

ただ、単なる抗議をしただけのフィリピンには、「特定の国をターゲットにしていない」とか「最初は力に頼らない」といった具合に、上から目線でコメントしたのに対し、武力行使も辞さないとはっきりと言った日本に対しては「話し合おう」と下手のコメントをしていることは注目してもよいかと思います。

これらを見ると、特に対中国には攻撃の前には"口撃"があり、"口撃"の段階で優勢を取ることが非常に大事なことではないかと思えてきます。

いずれにせよ、中国は尖閣侵略を予定通り進めており、海警法もそのためのものであるという認識で対応すべきだと思いますね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック