名指しされたウイグル人弾圧疑い企業

今日はこの話題です。
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1.ウイグル弾圧企業は取引停止


2月21日、日本の主要小売り・製造業12社が、取引先の中国企業で、新疆ウイグル自治区などでのウイグル人に対する強制労働への関与が確認された場合、取引を停止する方針を固めたことが共同通信の取材で分かったと報じられています。

米英両国がウイグル人の強制労働を理由に自治区に関連した綿製品などの輸入規制に相次いで踏み切っていて、日本企業も対応を迫られていたのですけれども、そもそもの切っ掛けは、昨年3月に、オーストラリアの安全保障シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の調査報告書で指摘されたからです。

件の報告書は「売りに出されたウイグル人~新疆を越える再教育・強制労働・監視(UYGHURS FOR SALE, ‘Re-education’,forced labour and surveillance beyond Xinjiang)」というもので、その概要は次の通りです。
◆2017年以降、100 万人以上のウイグル人、テュルク系民族、ムスリム少数派が「再教育キャンプ」に姿を消している
  ・抑留者は政治的な教化を受け、宗教や文化を放棄することを余儀なくされる。政府が主導する組織的な文化的大量虐殺プログラムと呼ぶ専門家もいる。
  ・新疆地区内外で再教育キャンプから直送された人々の強制労働が実施されている

◆オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は中国の9つの省にある27の工場を特定した。
  ・これらの工場は83の世界的有名ブランドのサプライチェーンを部分的に担っている
  ・少なくとも8万人のウイグル人が「新疆援助」として知られる中央政府の政策の下で、新疆から転出し、工場に配属されたと推定されている。
  ・地方政府、民間のブローカーは一人の移送につき金銭の支払いを受けている
  ・ASPIの調査では、最近2019年の時点で、新疆外のウイグル人労働者を虐待的な労働移動プログラムを通じて使用し、直接または間接的に利益を得ている可能性のある82の外国企業と中国企業が確認されている。
その82社は名指しされていて、次の通りです。
アバクロンビー&フィッチ、エイサー、アディダス、アルストム、アマゾン、アップル、ASUS、BAICモーター、ベストウェイ、BMW、ボンバルディア、ボッシュ、BYD、カルバンクライン、キャンディ、カーターズ、セルッティ1881、長安自動車、シスコ、CRRC、デル、エレクトロラックス、フィラ、ファウンダーグループ、GACグループ(自動車)、ギャップGeely Auto、General Motors、Google、Goertek、H&M、Haier、Hart Schaffner Marx、Hisense、日立、HP、HTC、Huawei、iFlyTek、Jack & Jones、ジャガー、ジャパンディスプレイ、L.L.Bean、ラコステ、ランドローバー、レノボ、LG、李寧、市長、明津、メルセデス・ベンツ、MG、マイクロソフト、三菱、ミツミ、ナイキ、任天堂、ノキア、オクルス、オッポ、パナソニック、ポロ・ラルフローレン、プーマ、SAICモーター、サムスン、SGMW、シャープ、シーメンス、スケッチャーズ、ソニー、TDK、トミーヒルフィガー、東芝、清華通芳、ユニクロ、ヴィクトリアズ・シークレット、ヴィボ、フォルクスワーゲン、シャオミ、ザラ、ゼニア、ZTE。
そして、それぞれの企業(International brands supplied by factory)についてウイグル人強制労働(Transfers of Uyghurs out of Xinjiang)との関わりを下請けの中国側企業(Chinese factories involved )の具体名をあげて表にしています。

この82社リストに、11社の邦人企業があり、ウイグル人強制労働との関わりを現した表に良品計画(MUJI)、しまむら(Shimamura)、京セラ(Kyocera)の3社があります。


2.どのような見解をお持ちでしょうか


この「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の報告書について、日本在住のウイグル人達の集りである「日本ウイグル協会」が昨年4月30日付で、件の82社リスト内の日本企業11社の社長宛に書簡で質問と要望を伝えました。

その質問とは次の通りです。
1. 上記の報道にみられるように、貴社の製品がウイグル人の強制労働によって製造されている可能性については、どのような見解をお持ちでしょうか。
2. 1 の質問に対し、もし、貴社が現時点では確認できない場合、中国政府やサプライヤーに対し、企業倫理と人道
的立場から、上記報道について確認していただくことは可能でしょうか。
3. サプライヤーの選定において、人権デューデリジェンスの義務化を実施していますでしょうか。
4. 仮に貴社の製品がウイグル人の強制労働によって(一部であれ)製造されている場合、その製品を中国において
製造・調達することを、国際法・国内法の順守、企業倫理、人道的見地から停止することは可能でしょうか。
5. 貴社がウイグル人の強制労働に意図せず関与している疑いが浮上していることについて、実態調査を行い、疑惑を
払拭するための対策を講じる意思の有無について聞かせてください。
日本ウイグル協会は昨年5月20日までに回答するようにと要望したのに対し、期日までにパナソニック以外の10社が回答しました。次の表はその回答の概要です。

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この回答に今度は、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が噛みつきました。

「ヒューマンライツ・ナウ」は回答した11社について、回答したことそのものと、人権方針やサプライヤーに対する調達ガイドラインといった取組みを行っていることを評価する一方で、TDK、ソニー、日立製作所の3社は質問に対する答えをしていないこと、2次以降のサプライヤーに対して調査されていないこと、第三者機関による客観的な調査だったのか不明であること、等を指摘し、更なる調査を提言しました。

まぁ、この指摘および提言自体は妥当なものではないかと思います。


3.フォローアップ調査


こうした動きを受け、「日本ウイグル協会」は、昨年12月に「ヒューマンライツ・ナウ」と共同で、「貴社のウイグル人強制労働問題に対する取組みに関するフォローアップ調査」と題する調査票を、先の11社と良品計画を加えた計12社に送付し、その回答を公表しています。

質問は次の3つです。
1)貴社の製品に関するサプライチェーン全体とウイグル人の強制 労働に関係性の有無について、更なる実態調査を実施しましたか。
2)サプライヤーの選定方法や人権デューデリジェンスの実施方法 について、対応した点がありますか。
3)貴社の製品がウイグル人の強制労働によって(一部であれ)製造されていたことが発覚した場合、その製品を中国において、製造・調達することを、国際法・国内法の順守、 企業倫理、人道的見地から停止する方針ですか。
前回の調査では、ウイグル人の強制労働が発覚したら取引を停止することは可能か、というド直球な質問がありましたけれども、果たして今回のフォローアップ調査でも「調達を停止できるか」と質問しています。

この3番の質問に対する12社の回答の概要は次の通りでした。

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12社のうち実に8社が「中止または停止」と回答しています。そして残り4社のうち3社は「検討または適切に対処する」というものでした。最後の1社は回答がなく、その企業は前回と同じパナソニックでした。

共同通信は「日本の主要小売り・製造業12社が、ウイグル人に対する強制労働への関与が確認された場合、取引を停止する方針を固めた」と報じていますけれども、このフォローアップ調査とは完全に一致しているという訳ではありません。

もちろん、共同通信の独自取材によって12社全部から取引停止するという言質を得ているのかもしれませんけれども、フォローアップ調査を見る限り、企業ごとに温度差というか多少の対応に差があるようにも思えます。

とりわけ、回答を寄越さないパナソニックについては、別に疚しいことがあるのでは、とは言いませんけれども、他社とは対応に差がついており、それがおおやけに晒されているということには、もっと注意を向けたほうがいいのではないかと思いますね。



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