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1.スイス人道貿易協定
2月25日、イランがアメリカの制裁により韓国で凍結された70億ドル(約7400億円)相当の原油輸出用資金の返還を求めている問題で、韓国が資金の一部をスイスのイラン側銀行口座に送ることにアメリカが同意したことが明らかになりました。
韓国の外交部当局者は記者団に対し、凍結されたイラン資金の一部をスイスの人道貿易チャンネル「スイス人道貿易協定(SHTA)」を通じて返還する方法に同意したかという質問に「方法についてはOKをしたと見ていいが、全体的にどのように送金するかについては協議しなければならない」と答えました。
「スイス人道貿易協定(SHTA)」とは、国交を断絶した状態が続くアメリカとイランの「仲介役」を務めるスイスが、イランへの人道支援を実施するために整えたチャンネルで、スイスとイランの外交関係樹立100周年を記念し、昨年初めに開設されました。
「スイス人道貿易協定(SHTA)」では、アメリカ政府が承認したスイス企業を通じて医薬・医療品や食料品など人道的物品を購入し、イランに輸出。代金はスイス銀行が保証し、韓国内に凍結された資金の一部がスイスにあるイランの口座に振り込まれ、イランで必要な人道的物品を購買できるという仕組みです。
アメリカはこれを使っての返還を承認したようなのですね。
2.韓国に不信感を持つイラン
2月22日、イラン政府は公式ホームページで、イラン中央銀行のヘンマティ総裁が前日にユ・ジョンヒョン駐イラン韓国大使と面会し、韓国内の凍結資産の移転と使用方法に合意したと発表しました。
それによると、イラン政府は「韓国大使館の要請で行われた同日の会談で、イランの資産をイランが望むところに移転することで合意し、イラン中央銀行が韓国側に移転を望む資産の金額と送金銀行を通知することにした……韓国大使が『韓国はイランが韓国内のすべての資産を使用するために必要なあらゆる措置を取る準備ができている』とし、『これにはいかなる制限や制約もない』と述べた」と明かしています。
ヘンマティ総裁は、ソウルの態度の変化を歓迎しながらも、「イランは態度の変化と協力の強化を歓迎するが、イラン中央銀行は韓国の銀行がここ数年間イランとの協力を拒否したことに対し、補償を要求するための法的手続きを引き続き進める……韓国側はこの否定的な記録を消すために多くの努力をする必要がある」と付け加えています。
これをみると、イランは韓国に相当不信感を抱いていることが分かります。
3.言い訳できなくなった韓国
今回の返還交渉について、22日にイランメディアが「イラン中央銀行のアブドルナーセル・ヘンマティー総裁が韓国の要請でテヘランの韓国大使館でユ・ジョンヒョン大使に会い、凍結資金の移転および使用方案に合意した……韓国政府はイランの凍結資金を移転するためのすべての措置を取る準備ができていて、上限ラインや制限はない」と話したと伝えたのですけれども、韓国外交部は「凍結資金を自由に持っていくことができるといった合意はなかった……イランの主張には重要な前提が抜けている。国連分担金や人道的目的の使用はもちろん、スイスの口座への送金問題は、特にアメリカとまず合意に達してこそ実行に移すことができるという問題がある点」と否定していました。
また、韓国・中央日報はこれまで、韓国が救急車の提供を提案して断ったとか、凍結資金の利子を受け取ることにしたとか、例を挙げながら、今回のイラン側の発表について「フェイクニュース」に近いとか、交渉状況を歪曲した等と批判しています。
更に、その理由として「米国の経済戦争は失敗」という世論形成を狙っているのではないかとか、6月のイラン大統領選挙を控え、経済状況の悪化などでイランの強硬派が勢いを付けている中、現政権を担うロウハニ大統領など穏健派は再選のために成果を見せる必要があるのだとか、いろいろの憶測記事を載せています。
けれども、これまで、相手が発言していなくても、自分の都合のよいように好き勝手に発表するのは、韓国の得意技です。したがって、仮にイランに同じことをやられたとしても、フェイクニュースだなどと訴えたところで、周囲はあまり相手にしないような気もします。
韓国政府はスイスの口座への送金にはアメリカの同意が必要だと嘯いていましたけれども、そのアメリカが同意した以上、それを言い訳には出来なくなりました。
4.韓国を値踏みしているアメリカ
今回、アメリカが同意した「スイス人道貿易協定(SHTA)」による資金返還ですけれども、昨年初めの開設からこれまで殆ど機能していませんでした。
昨年4月12日、国連のイラン政府代表部は報告会で「イランは新型コロナウイルスの感染拡大による最悪の状況を経験している。アメリカの制裁は、患者の特定と治療および感染拡大防止にイランが効果的に取り組むことを著しく妨げている……アメリカ財務省は2月27日、大騒ぎをしながら"スイス人道貿易協定(SHTA)"を締結し、一部の人道物資に関しイランとの取引を容認した。にもかかわらず、この狭いチャンネルは現在の状況下でイランが必要とする人道物資の需要を満たすには至っていない」と説明し、イラン国外で凍結中の資金を指定されたスイスの銀行に送金することはほとんど不可能、あるいは非常に困難でこのシステムは機能していないと強調していました。
それが、今回、「スイス人道貿易協定(SHTA)」による資金返還に合意したのは、無論、トランプ路線を否定するバイデン政権になったこともあると思いますけれども、それ以外にも、同盟国が同盟国としての責務を果たすかどうかを測っている面もあるようにも思います。
つまり、韓国がイランに対し、資金をきちんと変換し、"約束を守る"のかどうかを見ようとしているのではないかとううことです。
そして、もしイランに資金を返還したら、同様に、日本に対しても慰安婦合意を守るように迫る。"約束を守る"という点において、イランに対する対応と日本に対する対応が同じになるのかならないのか。
これは、ある意味、韓国を値踏みしているともいえるのではないかと思います。
韓国がバイデン政権にいくらの値がつけられるのか分かりませんけれども、これまでの態度を続ける限りはそれほどの値段にはならないように思いますね。
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