ミャンマー暫定政権の再総選挙宣言

今日はこの話題です。
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1.民主主義への攻撃だ


2月1日、アメリカのバイデン大統領は、ミャンマーのクーデターに関して声明を発表し「民主主義と法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ。軍が直ちに権力を手放し、拘束した人々を釈放するよう国際社会は一致して圧力をかけるべきだ……民主化の発展が逆戻りするなら制裁に関連する法律などを再検討したうえで適切な行動をとる」と、制裁の復活も辞さない構えを見せました。

これを受け、サキ報道官は記者会見で「同盟国などと、さまざまなレベルで集中的な協議を行っている」と各国と協議を始めたことを明らかにしています。

国務省によると、日米間ではソン・キム次官補代行と外務省の市川北米局長がミャンマー情勢について協議し、民主主義をどう取り戻すかや、人権の尊重、拘束された人々の釈放など、ミャンマーをめぐる懸念を共有したとしています。

この動きについて、オバマ政権時代にで、ミャンマー問題担当特別代表やミャンマー大使を務めたデレク・ミッチェル氏は、NHKのインタビューに対して「ミャンマー軍が他の国々から制裁を科されて孤立すれば、中国は空白を埋める機会と見てミャンマー軍に接近する可能性がある。影響力を拡大するために中国がミャンマーの混乱に乗じるのではないかと強く懸念していて、対策を考えなければならない……ミャンマー軍に対して対価を払わせるのと同時に、打開策の提示も検討すべきだ。われわれは硬軟織り交ぜた思慮深い戦略を持つべきで、軍への関与も必要だ……バイデン政権にとって最大の課題は、ミャンマー軍への圧力と対話の双方で国際社会を結束させられるかどうかだ。バイデン政権は民主主義の価値観を守るため同盟国の結束を掲げていて、新政権にとって最初の試練だ」と述べ、制裁や圧力だけでなく軍との対話や交渉も重要だという認識を示しつつ、同盟国と足並みをそろえた政策を実行に移せるかどうかが問われていると強調しています。

昨日のエントリーでは、経済制裁はミャンマーを中国側に押しやるだけとも述べましたけれども、やはりそういう懸念を持っているということです。ただ、対応について同盟国と足並み揃えてとなると時間もかかりますし、船頭多くして船山に登るではないですけれども、蓋を開けてみればなんら有効な手立てを打てないなんてこともあり得ます。


2.ミャンマー暫定政権総選挙の再実施を表明


一方、ミャンマーはというと、2月1日、国軍系ニュースがこの先1年を期限とする国家緊急事態の宣言を発表しました。

更に国軍は声明で「選挙管理委員会が問題を解決できなかった。多くの抗議が起きており、国家の安定性を維持するためだ」と述べ、拘束した国民民主連盟(NLD)のウィン・ミン大統領の代理として、国軍出身のミン・スエ副大統領が臨時大統領に就き、ミン・アウン・フライン国軍総司令官が司法、立法、行政の全権を掌握したと伝えました。

一方、国民民主連盟(NLD)の報道官は、アウンサン・スー・チー氏が首都ネピドーの自宅に軟禁されていると明らかにしました。AFP通信によると、アウンサン・スー・チー氏は事前に「クーデターを受け入れないように」と、国民に抵抗を呼び掛ける声明を残していたようです。

現在、ミャンマーでは、地元テレビ局の放送が中止され、ネピドーなどへの通信回線も遮断。銀行の預金引き出しなども停止されたと伝えられています。

国軍は「国民民主連盟(NLD)は開会を延期せず、不当な手段で国を乗っ取ろうとしている。選管を改革し、自由で公正な選挙を実施する」と、近く国軍の全権掌握下で総選挙を実施する意向だとしていますけれども、これが正当化されるかどうかは、選挙不正が証明できるかどうかと、それを受けた民意が支持するかどうかに掛かっています。


3.十分に監視できなかった投開票


ミャンマーの今回の総選挙では、投票所での開票は、選挙法の規程により、その場で投票所のスタッフ、投票所代理人、及び一般市民の前で行われることになっていました。

ところが、投票所が4万ヶ所もある上に全国政党が連邦団結発展党と国民統一党の2つしかなく、全国の選挙区を他の民主化政党の関係者が監視することができませんでした。

また、民主化政党が候補者を立てた選挙区であっても、資金的・組織的制約から全ての投票所に候補者の代理人を派遣できなかったばかりか、民主化政党間、あるいは国民統一党を含めて野党間での連携がなく、投開票の状況を十分に監視できなかった事情もあったようです。

ミャンマーでは、選挙戦に敗れた候補者が連邦選挙管理委員会に不服申し立てをするためには、相手候補や投開票時の不正の証拠を集める必要がある上に、1件につき100万チャット(1000ドル以上)の費用が必要になり、負担がかかるばかりか、ミャンマーの連邦選挙管理委員会が昨年11月6日に各政党に対し、選挙結果に不服がある場合は法律に基づき、正式に申し立てをするようにとのレターの中で、外国メディアに不正を告発することは、選挙法違反であると警告しています。

要するに、特に小政党にとっては、不服申し立てをしにくくしている訳です。

国軍は1月26日の報道官記者会見で、有権者の二重登録など不正投票が疑われる事例が「860万人分あった」と述べていますけれども、投票所の監視が十分行き届いていなかったのが本当だとすると、不正があったとも、なかったとも証明することは難しいような気がします。


4.不正投票はあったのか


選挙不正というと、例のアメリカ大統領選を連想してしまいますけれども、ミャンマーの投票集計はどうだったのかという点も気になります。

こちらの記事では、前回2015年のミャンマーの総選挙での開票作業について報告していますけれども、特段マニュアルもないらしく、それぞれの投票所ごとに委ねられている様子が報告されています。

開票には各政党から監視員が立ち会っているとなっていて、例のドミニオンだとかスマートマティックのような集計機械についての記載がないので、使われたのかどうか分かりません。

ミャンマーの有権者は約3830万人。今回の投票率は約71%ですから約約2750万人が投票したことになります。これを4万ヶ所の投票所で割ると、単純計算で一ヶ所あたり700票かそこらです。上下院それぞれで投票したとして倍にしても1500票かそこらでしょう。

であれば、手作業でも十分数えられる範囲だと思います。

あとは各投票所での結果をまとめて集計する段階で何かあったのかどうかですけれども、これは分かりません。

もっとも、前回2015年の総選挙の話ですけれども、こちらの「Election universe」というサイトの、「ビルマの歴史的な投票」という記事では「国際的なオブザーバーは、選挙内の多くの不規則性に気づきました。ただし、アナリストは、特にこのプロセスの重要性を考慮すると、選挙はほぼ公正であったことに同意します」と記載されています。

この「Election universe」サイトは、世界中の選挙プロセスに関する包括的な情報を提供することを目的としていて、選挙管理、選挙制度、法的枠組み、選挙データ、選挙技術、有権者登録、その他の重要な選挙関連の主題を扱った詳細な記事を公開している、としています。

ところがこのブログの運営は、スマートマティック社がやっているのですね。

件の記事で「国際的なオブザーバーは、選挙内の多くの不規則性に気づきました」とある以上、不正だと断言できないまでも、何か見つけたということだと思いますし、今回の選挙にしても軍が不正投票が疑われる事例が860万人分あったという以上、それなりの証拠を持っている可能性はあると思います。

それにスマートマティック社やドミニオンなどが絡んでいるのか分かりませんけれども、ポイントはやはり証拠とそれをもって世論を納得させられるかに掛かっていると思います。

ミャンマーのクーデターについて、バイデン氏は「民主主義と法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ」と述べていますけれども、選挙不正とて民主主義に対する直接攻撃です。

もし、仮にスマートマティックやドミニオンなどによる不正集計だと明らかになったとしたら、今度はアメリカ大統領選にも間違いなく飛び火することになるかと思います。

続報を待ちたいと思います。


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