
1.経済危機克服指数
1月17日、韓国の現代経済研究院が武漢ウイルスによる経済危機からの克服指数なるものを発表しました。
これは、現代経済研究院が独自に導き出した指数で、消費、輸出、雇用、生産における「最大ショック幅」を100とした時、それを基準にどこまで回復したかを示すものです。
その発表によると、昨年11月現在の克服指数は79.3ポイントと、武漢ウイルスによる経済ショックの発生以来、最も高い値を示しました。
けれども、雇用は全然回復していません。
2月10日に統計庁が発表した「1月の雇用動向」によると、先月の就業者は2581万8000人で、前年同月に比べ98万2千人減少し、1998年12月の減少幅(128万3000人)以降、最も大幅に減少しています。昨年12月の減少人員は62万8000人ですから、更に深刻化しています。
特に若年層の失業が深刻で、2020年12月の韓国の失業率は4.1%ながら、世代別の失業率では、15~29歳の失業率が8.1%と倍になっています。
その背景には、労働組合が強すぎるという指摘があります。
韓国の労働組合は恒常的に経営者に賃上げなどを求め、受け入れられなければストライキを実行することで知られていますけれども、昨年12月に資金繰りに行き詰まり、更生手続きを申請した双竜自動車は、労働者側が賃上げなどの待遇改善を求め続けた結果、新しい車種の開発が進まず収益力が低下したと言われています。
自分で自分の首を絞めているといえばそれまですけれども、若者の中には家賃や生活費が払えず、借金だけが増えた人もいるようで、文在寅政権の失政と見做される日は遠くないと思いますね。
2.東学アリ
その文政権は経済には無策の状態が続いています。
2月23日、韓国銀行は、住宅ローンやクレジットカードでの借金など家計負債が2020年末で前四半期末から44.2兆ウォン(4兆2000億円)増えて、1726.1兆ウォン(約164兆円)になったと発表しました。
その一因として、過熱する不動産や株式の急騰に、借金をしてまで投資をする人も増えていることも指摘されています。
昨年3月、武漢ウイルスの感染拡大の影響で韓国総合株価指数(KOSPI)が大きく下落すると、若年層の間で少額から始められる株式投資への関心が高まりました。
政府がマンション価格の安定化を目指して相次いで打ち出した売買規制策などを敬遠して、若手の一部富裕層が不動産投資から株式投資にシフトする動きが発生。昨年5月に民間が25~39歳の男女700人を対象に意識調査を行ったのですけれども、投資の目的を「住宅購入に向けた財源調達」とする回答が61%に達したそうです。
そして、昨年10月には韓国大手の京郷新聞は20~30代の株式投資家に焦点を当てた大型特集を組みました。その記事に登場した投資家達は、武漢ウイルス禍で増幅した将来不安を訴え、株で稼いで経済的な自由を手に入れ、30~40歳までに会社を辞めたいという夢を語る人も少なくありません。
韓国では武漢ウイルスの感染拡大に伴う株価下落後、韓国株を買い支えた人たちが「東学アリ」と呼ばれ、会員制交流サイト上などで賞賛されました。
「東学アリ」とは19世紀末に日本の朝鮮進出に抵抗した東学農民戦争になぞらえ、投資規模が小さな個人投資家をアリに例えた造語です。
「東学アリ」の中心は20~30代の投資初心者で、投資規模は200万~300万ウォン(18万9千~28万3千円)程度と比較的少額にとどまるケースが目立つそうです。
これについて、SK証券の李效錫(イヒョソク)リサーチセンター資産戦略チーム長は「韓国の若年層の多くは、格差社会への不公平感を抱いている。不動産価格は上がり続けているのに、若年層の雇用状況は不安定なまま。低金利が続く中で資産形成の数少ない手段として、株式投資が選択されている」とコメントしています。
借金してまで株投資をするのもどうかと思いますけれども、貸す方も貸す方です。
もっとも、愛知淑徳大ビジネス学部の真田幸光教授によると、「1997年のアジア通貨危機を機に、韓国の金融機関が企業から個人に若干ウエートを高めた経緯がある。コロナ禍で家計が苦しくなれば金融機関は融資しなくなるが、貸したお金まで返ってこない恐れもあり、金融不安が指摘されている」ということですから、20年以上の前のツケが回ってきたと言えなくもありません。
3.みずほインパクト
こうした韓国経済の危機に、日本の金融機関も反応しています。
去年12月14日に日本銀行が発表した国際決済銀行(BIS)の国際与信統計によると、昨年9月末時点の邦銀の韓国に対する与信は280億2750万ドル(約2兆9429億円)で、同年3月末時点から8億8790万ドル(約932億2950万円)減少しています。
邦銀にはメガバンクを始めとしていくつもの銀行がありますけれども、こちらのサイトでは、2019年9月末時点のデータながら、邦銀メガバンクの韓国への貸出残高を比較しています。
件のサイトでは、みずほ銀行が韓国向け貸出の残高が多く、貸出全体に対する比率も多いことを指摘。更に銀行以外の業態でも韓国向けに貸出を行っている可能性があるとしながらも、日本との関係が悪化していることに加え、韓国経済自体が変調を来していることから、急激に韓国向けの貸出を回収している可能性があると述べています。
実際、みずほフィナンシャルグループは、2020年12月期に、2019年12月末に約82億8800万ドル(約8702億円)だった韓国への貸し出しが約69億600万ドル(約7251億円)に減少したと公表しています。
前出の真田教授は「韓国に対し、日本の金融機関の融資債権が減っているのは家計負債が多いためだけではない……米ドルの長期金利が上昇しているが、ドル建ての債務が多い韓国にとっては、これまで入っていたドル資金が米長期金利に流れ、ウォン安が起こる可能性が十分にある。そうなれば韓国企業や金融機関が債務不履行を起こす可能性も高まるため、日本の金融機関が融資を控えているのだろう」とコメントしています。
まぁ、韓国への貸出比率が他行に比べて多いとはいえ、みずほフィナンシャルグループの海外貸出全体からみれば、韓国への投資割合は3.15%程度ですから、債務不履行になっても致命傷にはならないと思いますけれども、元々みずほは、韓国への貸し出しに積極的でした。
2019年7月、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長は韓国を訪れ、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長と面談しています。
金融関係者は「佐藤会長が両オーナーに『心配いらない』という話をした。韓国企業は金利が低い日本の資金を使うのが有利で、日本の立場でも韓国のように成長の可能性と信頼が高い国が利益になるため……みずほフィナンシャルグループは約10兆ウォンを韓国で運用しているが、この規模をもっと増やすことも検討中」と話したそうですけれども、そこから2年も経たないうちに資金回収を始めたという事実が韓国経済の"ヤバさ"を物語っていると思います。
2月28日、みずほ銀行はATMやインターネットバンキングにシステム障害を起こして騒ぎになりましたけれども、「助けない、教えない、関わらない」の非韓三原則はもしかしたら、銀行界にもいえるのかもしれませんね。
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