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1.フジ・メディア・ホールディングスは総務省に相談していた
4月8日、フジテレビなどを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスの金光修社長、和賀井隆専務、清水賢治取締役、都内で記者会見を行いました。
フジ・メディア・ホールディングスは2012年9月から14年3月までの約1年半、外資規制に違反していた疑いがあることが、今月5日に報じられ、違反状態にあったことを認めていたことについて次のように述べました。
月曜日に私が取材を受けた。7年前のことで記憶があいまいだったが対応した。より具体的に説明できる状況になったので、この場を設けた。会見の場で金光社長は、14年末の時点でこの件について総務省に確認していたことを明らかにしました。金光社長によると、12月ごろ弁護士事務所などと相談し、それに合わせ総務省の感触をとっておいたほうがいいと判断し、書類を持たず口頭で過去に外国人議決権比率が(規定を)超えていたと伝えたそうです。
一番重要なミスは、議決権比率の過誤で外資規制違反になっていたこと。おわびを申しあげる。大変申し訳なかった。外国人に与える議決権がわずかながらオーバーしていた。
このミスに初めて気が付いたのは14年9月末の株主名簿確定の際に気が付いた。それ以前に知っていて、隠していた事実はない。14年末に、私が総務省の担当部署に相談に行った。総務省から現状について確認があり、口頭で厳重な注意を受けた。20%を0・0008であれ、0004であれオーバーしたのは事実。その後は適正にやっている。
総合的に判断し、過去にさかのぼっての有価証券報告書などの訂正、公表はしなかった。今から振り返れば、総務省に報告が終わった時点で、公表していた数字を訂正しておけばよかった。
金光社長は、そのときの総務省側の担当者について「1人か、2人でした。『今は正しくなっているんですか』と確認を受けた」と述べ、放送法違反で認定放送持ち株会社の認定を取り消されるかについては「それはされることはないと感触を持った」と当時を振り返っています。
2.認定を取り消さない総務省
フジ・メディア・ホールディングスの会見の翌9日、武田総務相は閣議後の記者会見で、フジテレビなどを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスが放送法の外資規制に違反していた問題で、放送持ち株会社の認定は取り消さない考えを示しました。
武田総務相は2014年12月に総務省の当時の放送政策課長がフジ・メディア・ホールディングスから一時違反状態になっていたとの報告を受けたことを認めた上で「違反状態がその時点で存在しないのであれば、放送法上、取り消しができないと判断した」とフジ・メディア・ホールディングスの認定を取り消さないと述べました。
武田総務相によると、1981年に旧郵政省が外資規制違反と取り消し処分の関係について内閣法制局に相談し、整理した見解があるそうです。その見解は「外資規制については、違反の事実をもって直ちに免許が無効となるものではなく、取消という行政処分を実施する必要がある。このため、取消処分を行う時点で取消事由が存在することが必要となっており、当該事由が存在しないのであれば、取消処分を行うことができない」というものです。要するに現行犯でない限り取り消しできないということです。
武田総務相は「2014年当時は、当時の担当者がこの考え方に則り、認定の取消処分を行うことはできないと判断したものと考えられております。このような考え方については、総務省としては、今でも妥当であると、このように考えております。したがって、フジ・メディア・ホールディングスについて認定取消はできないものと考えております……フジ・メディア・ホールディングスは、当時の認定時において外資規制に抵触せず、その認定は適正であったのに対し、東北新社は、そもそも当初の認定時において外資規制に抵触しておりました。本来であれば認定そのものを受けることが出来なかったという点で大きな違いがあるということを、ご理解をいただきたいと思います」とその処分の違いの理由について述べています。
筆者は4月8日のエントリー「フジ・メディア・ホールディングスの外資規制違反疑いについて」で、認定取り消しされた東北新社とフジ・メディア・ホールディングスとの違いについて「東北新社とフジ・メディア・ホールディングスとでは現行犯と過去犯罪という違いがある」と述べましたけれども、やはりこの点が認定取り消しの成否を分けたようです。
3.停波出来ないなら時短せよ
ただ、現行犯でなければ処分できないという理屈だと、バレなければヨシ、違法状態が解消してから報告すれば取消などの行政処分を受けずに逃れられることになってしまいます。
これについて武田総務相は、現行法の外資規制が適切に遵守されているかを確認した上で、外資規制の趣旨にのっとり、こうした事案が発生しないような総務省の認定申請時や認定後、定期的に、外資比率の数値とその裏付けとなる資料を求めることや、外資規制審査に係る担当部署を設置するなど、審査体制の強化を考えるとしていますけれども、後手に回った感は否めません。
筆者は件のエントリーで、東北新社の認定が取消しされたという前例が重く圧し掛かってくるとした上で、もし、フジ・メディア・ホールディングスに何のお咎めもなかったとしても、それで世間が許すかどうか、と述べましたけれども、案の定ネットでは「何その窃盗しても返したからセーフみたいな言い訳」とか「違反していた期間の10倍、放送禁止にして停波させろ」とか「東北新社の取り消しを取り消せよ」など炎上しています。
やはり、東北新社とフジ・メディア・ホールディングスとの処分の違いにダブスタを感じているようです。
これについて、経済評論家の渡邉哲也氏は「フジ・メディア・ホールディングスは上場企業なのに放送法違反を知っておきながら公表せず、IRでも証券取引法でも問題がある。東北新社は同様の問題で放送免許の取り消しとなっただけに、法の下の平等で、フジ・メディア・ホールディングスも放送免許取り消し処分としなければならないが、社会的影響が大き過ぎるとあって、政府も総務省も困っている」と述べています。
また、外資に"乗っ取られている"との懸念については「外国資本の出資比率が高くても結局、株主総会で影響力を出すか出さないかの話で、放送法で20%以内に抑えられていて、外国人が経営に何かしらの影響を発揮した話はない」とする一方で「外国資本の影響は、株式の保有よりも番組スポンサーとなって、意に反する番組を作らせない、自社に都合の良いCMを流させる方が怖い。放映権料が安価になっている中で、そちらの方の影響が大きくなっている」と指摘しています。
テレビ局の電波利用料が携帯キャリアの10分の1以下と非常に安価であることは以前から指摘されていることですけれども、そこを逆手にとって、外資が番組スポンサーとなって意に反する番組を作らせないというのは確かに懸念すべきことです。
フジ・メディア・ホールディングスの放送免許取り消しの社会的影響が大き過ぎるというのであれば、武漢ウイルスで緊急事態宣言を出して経済活動を停滞させるのも同じです。
飲食店に時短営業を要請するのなら、いっそのことフジ・メディア・ホールディングスにも、"時短放送"をさせたらどうかとも思います。
例えば、夜9時から朝8時まで停波するとかすれば、その分CMも減りますし、見せしめ効果も抜群です。これなら下手な行政処分なんかをするよりも、余程世間を納得させられるのではないかと思いますね。
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