台湾防空圏に侵入する中国軍機のメッセージ

今日はこの話題です。
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1.真の友人とは何があっても一緒にいるものだ


3月29日、台湾を訪問したパラオのウィップス大統領は台北で記者会見し、パラオが武漢ウイルスの封じ込めに成功したのは「台湾の医療協力があったからだ」と、外交関係を結ぶ台湾に謝意を表明しました。

ウィップス大統領は、パラオが台湾との関係を維持・強化する中で、中国からの圧力にさらされている現状について記者から問われると、「私たちは非常に小さな国ですが、友人を持ち、誰とでも仲良くすることが大切だと考えてきた。また、他の誰かの友人になれないと誰も言うべきではないと考えている……真の友人とは、何があっても一緒にいるものだ。台湾は、私たちのパートナーシップと友情の価値を常に証明してくれており、どんな時でも私たちと一緒にいてくれる。今回のパンデミックは、私たちが一緒になって問題を解決するという、そのパートナーシップを示すものだ」と語り、「国と国との往来に必要なのは相互信頼と互恵であり、脅迫や政治ゲームではない」と中国を批判しました。

ウィップス大統領は、アメリカの大使が今回の台湾訪問に同行していることについて、パラオと台湾とアメリカは武漢ウイルスの感染対策のほか、規制に従わない漁業活動の取り締まりなど多くの面で協力できると説明し、中国を念頭に「我々のような小国は容易に侵害されうる……大使が一緒に台湾に来て、友情と関与する姿勢を示し、自由と民主主義を守ろうとしていることをうれしく思う」とも述べています。

パラオでは中国人観光客が経済の活性化に貢献したのですけれども、ウィップス大統領は、北京が中国人観光客の訪問を禁止すると、パラオの観光客は減少したと指摘。武漢コロナのパンデミックによる観光客の減少で、パラオの民間企業の労働者の42%が解雇され、政府の運営を維持するためには、予算の約40%を借金でまかなわなければならなかったそうです。

ウィップス大統領は「経済を元に戻すことが重要だ。また、癌や心臓病の患者が毎月のチャーター便を待たずに台湾で治療を受けられるように、パラオ・台湾間の定期便を再開する必要がある……台湾からの外国人観光客を受け入れできる最大の理由は、人口の50%がワクチンの初回接種を受けており、ワクチン接種が完了しているからだ」と述べました。

ウィップス大統領は、台湾との関係強化がパラオの経済再生に寄与すると期待しています。


2.中国軍機の台湾防空圏進入


さて、ウィップス大統領に脅迫や政治ゲームをするなとバッサリ切り捨てられた、中国はその「脅迫や政治ゲーム」を相変わらず続けています。

3月29日、中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で、「我々はアメリカの大使がパラオの代表団の一員となっていることを注視している……台湾問題は中国とアメリカとの関係で最も重要かつ敏感な問題であり、アメリカと台湾のいかなる形の公的な交流にも断固反対する……アメリカには公的な交流をやめ、台湾独立勢力に誤ったメッセージを送ることや一線を越える試みをしないよう求める」とアメリカを牽制しました。

中国の上から目線の物言いはいつものことですけれども、それだけではありません。示威行為にも及んでいます。

この日、台湾国防部は、中国軍の戦闘機など計10機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に入ったとし、空軍による空中哨戒、警告、地対空ミサイルによる追跡・監視などで対応したと発表しました。

29日に飛来したのは、戦闘機「殲16」と「殲10」各4機と、対潜哨戒機「運8」と早期警戒機「空警500」が1機ずつ。主に台湾南西空域に進入し、「運8」は南東部に回り込んだとのことです。

また、中国は26日にも軍用機延べ20機を台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入させています。この20機という数字は、台湾国防部が統計を公表し始めた昨年9月以来最多です。

26日は駐米国台北経済文化代表処とアメリカの米国在台協会(AIT)が沿岸警備の連携強化に関する覚書を締結した日です。この日に20機を防空識別圏に侵入させ、29日のパラオ大統領の会見後に10機を侵入させる。実に分かりやすい反応です。


3.海峡中間線を超える意味


中国がアメリカに不満を示す場合の軍事行動には特徴があります。それは中国軍機にバシー海峡のセンターラインを通過させることです。

中国国民党のシンクタンク「国民政府基金」上級副研究員で台湾戦略研究所所長の傑忠氏は、昨年、中国の軍用機がセンターラインを通過したのは4回あり、そのうち3回はアメリカに直接関係するもので、1回はアメリカ保健省長官、2回はアメリカ国務次官の訪台の時だと指摘しています。基本的にアメリカが台湾との「政治交流」をグレードアップしたときに、センターラインを越える行動を起こすというのですね。

傑忠氏によると、台湾の "防空識別圏 "の西南部での中国軍の訓練は常態化しているものの、"海峡のセンターライン"を軍用機が超えることはないのだそうです。

仮に中国が台湾の武力侵攻をする場合でも、台湾南西部の空域は軍事的に非常に重要で、バシー海峡を突破することで台湾の東側の西太平洋に戦力を投射することができます。

そうすれば、台湾をそこから攻撃し、同時にその位置でアメリカを迎え撃って介入することもできる訳です。

26日と29日の中国軍機による台湾の防空識別圏侵入では、対潜哨戒機である「運8」を台湾南東部に回り込ませています。つまり、有事の際にはこの方面から台湾に駆けつけることになるであろうアメリカに対し、近づけさせないというメッセージであり、おそらくは、アメリカの空母打撃群を意識しての示威行為なのではないかと思います。

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4.台湾空軍は数分で全滅


台湾南西空域もさることながら、中国が台湾を武力侵攻する際にもっとも警戒するのは、当然ながら在日米軍の存在です。

3月16日、日米防衛相会談の際、日米は台湾海峡有事の際、緊密に協力することを明らかにしています。

アメリカのシンクタンクであるランド研究所上級安全保障専門家のティモシー・ヒース氏は、「もし北京が台湾への攻撃を決定すれば、人民解放軍の将軍たちは、沖縄と日本の米軍基地に大規模なミサイル攻撃を仕掛ける強い動機付けを持つだろう……このような紛争では、中国人民解放軍の艦船や軍用機が日本の海洋領土や空域に侵入する可能性があり、日本はそれを防御する必要がある」と述べています。

また、オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute)の防衛戦略・能力担当シニアアナリストであるマルコム・デイビス氏は在日米軍基地を指して「中国の対干渉戦略の考え方は、『アンチアクセスとエリアディナイ(A2/AD)』を強調しており、これには前方基地への攻撃も含まれている……さらに、アメリカ軍がこれらの地域に配置されていなかったとしても、中国は日本の介入を効果的に防ぐために、日本の基地を早期に攻撃する可能性が高い……もし、抑止力が働かず、中国がグレーゾーン内で挑発行為を行ったり、最悪の場合、台湾自体への直接攻撃を行ったりした場合、アメリカ、日本、オーストラリアは確実に対応を調整するだろう……もちろん、全ての関係者には台湾を支援するために介入しないという選択肢があるが、そうすればアメリカ主導のアジアの安全保障秩序が崩壊し、中国がすぐに埋めるであろう力の空白が生じることになる」と警告しています。

台湾を攻める側にしてみれば、当然考えることです。

3月27日、ランド研究所で国防総省のウォーゲームを支援する元当局者のデビッド・オクメネク研究員は、NBCに台湾防衛についてのシミュレーション結果についてコメントしています。

それによると、「台湾の空軍は数分間で全滅し、太平洋地域のアメリカ空軍基地が攻撃を受け、アメリカの戦艦と戦闘機は中国の長距離ミサイルに阻止される……シミュレーションでアメリカが断固介入した場合にも、侵攻を退けることは成功しなかった」という結論になったのだそうです。

これが本当であれば、衝撃的な結果です。

数分で台湾空軍が全滅するのであれば、制空権も航空優勢もヘッタクレもありません。

もし、中国が台湾を占領して台湾海峡やバシー海峡が封鎖されてしまったら、日本に中東からの石油・天然ガスが入ってこなくなり、あっという間に干上がってしまいます。

それに、日本の米軍基地にミサイル攻撃を仕掛けなくとも、日本の無人島、例えば、尖閣を攻撃するだけで、在日米軍や自衛隊の手をそちらに割かせることが出来ます。陽動ですね。

なんとなれば、わざわざ耳目が集まっている尖閣ではなく、全然別の海域で警戒すらしていなかったような小島を同時多発で複数占拠したら、それだけで台湾救援どころではなくなるかもしれません。

日米は中国との戦争に備えよ」で、台湾有事について、日米ともに準備が出来ていないと指摘されていることを取り上げましたけれども、やはり早急に台湾有事に対する対策を取らないとかなり拙い状況に陥るかもしれませんね。



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