一帯一路の新戦略と孔子学院

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2021-04-20 221502.jpg


1.途上国の債務不履行懸念


1月6日、格付け会社フィッチ・レーティングスは、世界的に政府債務が過去最高ペースで増えている状況による打撃が新興国市場に偏るとの見方を示しました。

フィッチは、政府が医療への支出拡大や、武漢ウイルスのパンデミックの打撃を受けた経済の支援策を導入する中、世界の政府債務は10兆ドル増の77兆8000億ドルと、世界の国内総生産(GDP)比で94%に達していると試算しています。

フィッチによると、先進国の国債利回りは過去10年間で平均4%から2%へ低下した一方、新興国市場の国債利回りは4.3%から5.1%へ上昇したとのことで、フィッチの国債格付け部門を率いるジェームス・マコーマック氏は、「新興国の債務が急速に増えていることは不安事項だ。2020年にいくつかの新興国市場で債務返済への支障が見られた一因だ……21年は債務不履行に陥る国が増える。債務緩和対策も注目されるだろう」と指摘しています。

こうした中、4月19日、中国商務省の銭克明副大臣は、中国が「一帯一路」構想を通じて途上国における債務持続性を推進すると表明しました。

環境に優しい低炭素プロジェクトや、環境への影響の軽減を目指した高水準のインフラプロジェクトなど、安定したキャッシュフローと利益を生み出すプロジェクトの推進を約束し、途上国の債務不履行懸念を払拭しようとしています。


2.健康シルクロード


2月2日、中国商務部は、2020年の商務関連の取り組みと状況に関する記者会見を行い、172カ国・地域を対象とした中国の2020年の対外直接投資は、前年比0.4%減の7597億7千万元、対外工事請負の完工高は1兆1千億元、新規契約額は1兆8千億元と発表しています。

これまで「一帯一路」沿線国向けの直接投資は着実に伸長。伝統型インフラプロジェクトが多く進められていたのですけれども、昨今の武漢ウイルス禍によって、中国から技術者・労働者が移動できず、中断を余儀なくされています。

更に「一帯一路」沿線国では、武漢ウイルス禍に伴う財政支出の拡大を余儀なくされ、経済規模が相対的に小さい国では、国際通貨基金(IMF)に緊急融資を要請するケースが増えています。その影響で大型プロジェクトのみならず、中小型プロジェクトも中断を迫られる状況にあるようです。2020年度の中国の対外直接投資がマイナスになったのもその影響だと思われます。

そこで中国は、武漢ウイルス禍の払拭のために、「健康シルクロード」と称して、「一帯一路」沿線国へのワクチン協力を積極的に展開し、影響力の保持を狙っています。

実際、武漢ウイルス禍の初期は、中国発でウイルスが自国に拡散したと中国に批判的だった少ないない沿線国が、ワクチン協力を受けて中国歓迎に態度が変わってきているという指摘もあります。

ただ、昨今の米中対立が激しさを増す中、「一帯一路」沿線国の歓心を繋ぎとめる策として、5Gに代表されるデジタルインフラを展開するという見方もされています。

実際、昨年5月の全人代では、5G、AI、IoT、ブロックチェーンなどの7分野へのインフラ建設を強化する方針を発表しています。このデジタルインフラを「一帯一路」沿線国に展開することは、武漢ウイルス禍後を見据えた関係深化の布石になると思われます。


3.一帯一路の新戦略


「一帯一路」沿線国での伝統型インフラプロジェクト中断などから、一部では一帯一路の行き詰まりを指摘する声もあるようなのですけれども、情報戦略アナリストの山岡鉄秀氏は、「国連で中国支持に回る弱小国家群は既に支配されている。それらの国々は中国の監視技術で徹底管理され、重要インフラを抑えられ、デジタル人民元を使うようになる」と述べています。

山岡氏によると、最近、中国は「一帯一路」戦略を新たなものに見直しているのではないかと述べています。それは次の通り。
・中心国と周辺国の違い
・中心国の交代、アメリカンドリームの終焉
・獲得すべきは人的資源
・貿易可能品の生産が要
・中国が輸出すべきは統治メカニズム
・都市単位で狙う特区の合法的統治
・文化的多様性はトラブルの原因 中国語・中国文化で統一
・1000万人都市で中国人は100万人以下
・2080年までに1000万人都市×100=10億人
・オリジナルチャイニーズ10億+ニューチャイニーズ10億
山岡氏はこの「一帯一路新戦略」によって、中国は周辺国への移民を1割以下に抑えながらも、周辺国に統治メカニズムを輸出して、その国に「特区」作らせる。そしてその特区を中国語・中国文化で染め上げることによって、人種に関係なく、チャイナタウン化していくというのですね。

これはある意味、かつての中国と朝貢国の関係を、中国と周辺国の都市との間で作ろうとしているとも言えます。これも一種の大中華帝国構想なのではないかと思いますね。




4.孔子学院と死神


昨今、中国政府の宣伝活動に使われていると指摘され、アメリカで全閉鎖が噂されている孔子学院ですけれども、中身は必ずしもそうではないという報告があります。

筆者も3月8日のエントリー「過去を教え現在を弾圧する中国」で孔子学院に潜入取材したルポライターについて取り上げたことがありますけれども、某M大学孔子学院の「通訳実践講座」では、社会主義核心価値観や、『習近平談治国理政』など習近平の関連文献」は全く読まされなかったと報告しています。

けれども、先に紹介した山岡氏の「一帯一路新戦略」の一つである「文化的多様性はトラブルの原因 中国語・中国文化で統一」に従えば、中国語や中国文化を相手国に広げさえできれば、それで十分に戦略目標を達成することになります。

筆者も件のエントリーで、中国政府がイデオロギー色を薄めてでも文化を教える目的は、中国に「親しみ」を持ってもらうことと、中国語に触れる人を増やすことであり、それによって中国当局の工作がやりやすくなると指摘しましたけれども、やはり孔子学院は「一帯一路新戦略」にがっつり組み込まれているように思います。

中国政府は「文化的多様性はトラブルの原因」と規定していますけれども、もしもこれが真実であれば、世界宗教など存在できなくなります。

民族を超えて広がる宗教があるということは、どの民族にも共通して当てはまる真実があるからでしょう。

3月22日のエントリー「覇権を狙う独裁政治と腐敗した民主政治」で述べましたけれども中国はその宗教すら共産党政府の支配下に置こうとしています。

要するに共産党政府が神になろうとしている訳です。けれども、その神は人権を弾圧し、民を苦しめています。ということは中国の神は神でも悪神か死神の類でしょう。

ならばこそ、我々は死神を招き入れるのではなく、正義の神の側に立つべく行動しなければならないのではないかと思いますね。

2021-04-20 221501.jpg


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック