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1.トリプル選に全敗した自民
4月25日、北海道、長野、広島で菅内閣発足後初となる国政選挙の投開票が行われました。
ご存じのとおり結果は自民の全敗です。
とりわけ、注目されたのが、参院広島選挙区の再選挙でした。
2019年の参院選で、元法相の河井克行被告と妻の案里氏が2900万円の現金をバラまいて、公職選挙法違反で逮捕。案里氏は議員辞職に追い込まれ、代わりの候補として、自民党は元官僚の西田英範氏を擁立しました。
選挙戦の前半は出馬表明が早く、自民党、公明党の組織票で勝る西田氏が優位とされ、菅総理も「1勝2敗か」と口にするほど広島だけは何とか勝てるだろうと見られていました。
ところが、選挙直前に野党統一候補として出馬表明した元アナウンサーの宮口治子氏が猛追。西田氏は中盤から河井夫妻の問題に触れ、「河井夫妻は逮捕されても歳費をもらっていた。もらえない仕組みが必要。コロナで多くのお店の方々、多くの生活者、みなさんの生活が厳しい。なぜ国会議員だけ特別なのか?」と訴えると、風当りの強い河井夫妻の煽りを食って西田氏の票は伸び悩み、結果惨敗となりました。
2.観測気球と政局
この結果を受け、自民の閣僚経験者は「衆院選に向けて、人事刷新の声は出てくる……何か変えた感じがしないと衆院選は厳しい。夏には内閣改造や党人事の話が盛り上がってくるのではないか」と述べ、菅降ろしの声も上がっていると伝えられていますけれども、ネットなどでは二階幹事長に責任があるから二階幹事長を更迭すべきだ、などいう声が上がっています。
その二階幹事長ですけれども、なにやら菅政権後を見据えた動きも見え隠れしています。
4月15日、二階幹事長はCS番組の収録で「これ以上とても無理だということだったら、これはスパッとやめないといけない。オリンピックでたくさん感染病を蔓延させたら、なんのためのオリンピックか分からんです」と武漢ウイルスの感染状況次第では五輪の「開催中止」も選択肢の一つであると発言しました。
政権与党の幹事長が開催中止に言及したと内外で衝撃が走り、周囲は火消しに追われたのですけれども、二階幹事長は、19日の記者会見でも「とてもこれでは無理だと、誰もがそう判断する状況になった時のことを言っている。やめることに重点を置いて言っている訳ではないのです。そういう時がくればスパッとやめる。それはもう当然のことですね」と再び中止を口にしました。
この発言について、関係者から二つの見方が出ているそうです。
一つは観測気球、もう一つは政局です。
前者については、五輪中止の可能性をあえて口に出すことで世間の反応を伺うとともに、いざという場合の「地ならし」を始めたという、関係者の見方が伝えられています。
そして後者については、当時訪米直前だった菅総理に対し、日米首脳会談で、対中強硬路線に踏み込むことがないように、『いざとなったら菅政権の生命線である五輪なんぞ中止に追い込んで、お前の首もスパッと切るぞ』という二階氏流の牽制球だ、という見方です。
実際、日米首脳会談後の19日に、再び五輪中止を口にしたところを見ると、二階幹事長自ら、菅降ろしの種を撒いたと見えなくもありません。
3.安倍前総理再々登板説
けれども、だからといって、菅降ろしすればそれでよいという訳にはいきません。後継の総裁を誰にするかという問題があるからです。
今年は総選挙があります、総裁選の前になるか後になるか分かりませんけれども、いずれにしても総選挙に勝てる総裁を立てる必要があります。それは、今回のトリプル選挙で全敗しているだけに猶更です。
これについて、二階幹事長は既に布石を打っているような気がします。
それは、安倍前総理の再々登板です。
前回の総裁選は菅氏、岸田氏、石破氏の三者で争われました。結果は菅氏の圧勝に終わりましたけれども、3位の石破氏は総裁候補レースから脱落したともみられる中、岸田氏は2位に滑り込み、次期総裁の目を残しました。
岸田氏は衆院広島1区で当選を重ね、2012年には宏池会の会長となっています。現在も広島選出の自民党衆参議員の半数が岸田派に所属しており、今回の広島再選挙はお膝元での選挙です。
岸田氏は3月末に3度目の自民党県連会長に就任後、4月8日の再選挙告示前から地元に張り付き、選挙戦の陣頭指揮に当たっていました。
定数2の参院広島選挙区は、これまで与野党がそれぞれ1議席を分け合ってきたものの、自民候補は野党候補の2倍ほどの得票で圧勝してきたのですね。
けれども、今回の広島再選挙は、河井克行元法相と夫人の案里氏による買収事件を受け、党として挙党態勢を組めず、前回、案里氏を応援した菅総理さえも広島に入れないという状況でした。
そのため、選挙戦は岸田派所属議員や秘書を大量動員した「宏池会選挙」となり、いわば岸田氏の力量が問われる選挙にもなっていたのですね。その結果が今回の惨敗です。
4.二股を掛ける二階幹事長
自民党内では「再選挙で負ければ、岸田氏は総理・総裁候補から脱落する」との見方もあるそうです。経済評論家の渡邉哲也氏は岸田氏の次期総裁どころか、岸田派すら厳しくなったとの見方をツイートしています。
これでもし、岸田氏の次期総裁がなくなったとなると、前回総裁選を菅総理と争った候補はいなくなります。
勿論、総裁選では、各派閥がそれぞれ候補を出すでしょうけれども、総選挙に勝てる顔かとなると、今一つ微妙なところです。
けれども、ここで安倍前総理が再々登板となると、総選挙でも勝てる可能性がぐっと高まる。二階幹事長の発言はそのための布石なのではないかということです。
安倍前総理は自民党内の保守系グループや議員連盟の役員に相次いで就任し、憲法改正への熱意を口にしています。更には4月22日のシンポジウムに出席した際、「新しい薬が大変よく効き、あと2回ぐらい点滴をすれば一応治療が終わる」と健康不安説を払拭するかのような発言までしています。
党内では「再々登板が視野にあるのでは」との臆測も出ているそうですから、じわりと準備を進めていると見えなくもありません。
そしてまた、仮に、安倍総理が再々登板しなかったとしても、前回の総裁選で石破氏が脱落し、今回の広島再選挙で岸田氏を潰した今、菅総理が総裁選に出馬し、二階幹事長がそれをバックアップして、総選挙でギリギリでもなんでも勝つことができれば、菅政権が継続する目も出てきます。
二階幹事長はこれらを読み取った上で、総理でいたければいうことを聞け、と菅総理にプレッシャーをかけると共に安倍前総理には、総裁選のライバルは潰しておきましたよ、と"貸し"を作った。
つまり、どう転んでも自分は生き残るという二股を掛けているのではないかということです。
従って、菅総理が二階幹事長を切ることができなければ、このまま二階幹事長が引いたレールの上を走らされる可能性が高まってくるのではないかと思います。
もし、菅総理が二階幹事長の思惑を打ち破ろうとするのなら、総裁選前に解散に打ってでて、しかも勝たなければなりません。
4月16日、菅総理は訪問先であるアメリカのワシントンで初会談したバイデン大統領について記者団に「一緒にやりたい人」と表明しましたけれども、引き続き連携するため総裁選に再出馬する考えかと問われると、「解散して勝たなければ続かない」と述べ、衆院選の勝利が先決だと見解を示しています。
東京五輪・パラリンピックは7月23日から9月5日まで、自民党総裁任期は9月30日で衆院議員任期は10月21日。
菅総理は4月6日、日本テレビの単独インタビューに対し、自民党総裁選より前に衆議院の解散総選挙を行うことは「当然、あり得る」と述べ、一部では6月の国会会期末に解散、7月4日投開票かという説も取り沙汰されていますけれども、今回の三連敗と緊急事態宣言と厳しい状況が続いています。
果たして菅総理がどういう判断を下すのか。政局の風が強まってきたように思いますね。
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