フジ・メディア・ホールディングスの外資規制違反疑いについて

今日はこの話題です。
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1.フジ・メディア・ホールディングスの外資規制違反疑い


4月6日、武田総務相は閣議後の記者会見で、フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスが放送法の外資規制に違反していた疑いがあることについて、「徹底的に調査する。調査結果を踏まえ、適切に対処したい」と総務省の担当部局に調査を指示したことを明らかにしました。

また、全ての放送持ち株会社やテレビ局、ラジオ局に対し、外資規制の順守状況を月内に報告するよう要請したとしています。


フジ・メディア・ホールディングスは放送法の「認定放送持ち株会社」として認定を受け、複数の放送局を子会社として持っているのですけれども、放送法では、放送事業者に対し外資の出資比率を議決権ベースで20%未満とするよう定めています。

この規定は、放送局などが利用する電波は公共性が高く、「日本国民」の利益を優先するために設けられたものです。

従って、これに違反すれば総務相は認定を取り消さなければいけなくなり、認定が取り消されれば、複数の地上波放送局を子会社として傘下に持つことができなくなります。

フジ・メディア・ホールディングスは、この議決権の総数の計算に誤りがあり2012年から2014年にかけて外国の法人などが持つ議決権の比率が20%以上となり、放送法で定められている外資規制に違反していた疑いがあることが明らかになっています。

しかも、フジ・メディア・ホールディングスは2014年9月時点で外資比率が20%を超えていたことを把握しながらも公表せず、総務省にも報告していなかったのですね。

外資規制を巡っては、総務省幹部らを接待していた放送事業者会社の「東北新社」が2016年10月に衛星放送事業の申請を行った時点から、外資規制に違反していたことが判明し、子会社の衛星放送事業は、来月1日付での認定取り消しが決まってます。

このことからフジ・メディア・ホールディングスに対しても放送事業の認定取り消しの可能性が取り沙汰されているのですけれども、これについて武田総務相は、「事実関係を把握していないのでコメントは控える」と述べるにとどめています。


2.国会報告要求


今回の問題を受けて、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が国会内で会談し、武田総務大臣が調査を指示したことを踏まえ、総務省に対し、事実関係を詳しく調べ、衆議院総務委員会に報告するよう求めることで一致しました。

森山国対委員長は、記者団に対し「かなり前の話で、大事な問題なので、総務省に遺漏なきよう調査をお願いすることに尽きる。野党からは、当時の関係者や現在の経営責任者の参考人招致を強く求められたが、総務省の調査も進んでくるので、時期を見て協議させてもらいたい」と述べています。

一方、安住国対委員長は記者団に対し「違反をわかっていながら放置していたところに認識の甘さがある。地上波を持つということは、それだけの社会的責任を負っており、ルールを守らなければ資格そのものが問われる。過去の経緯について本格的な調査が必要で、今の社長に国会に来てもらいたい。総務委員会での参考人招致を求めていく」と、フジ・メディア・ホールディングスの経営幹部を参考人として招致するよう求めるとともに、ほかの放送事業者にも違反の疑いがないか確認する必要があると述べ、引き続き協議するとしています。


3.議決権の取り扱いに関する過誤


今回の問題の経緯については、フジ・メディア・ホールディングスが「当社の過年度における議決権の取り扱いに関する過誤について」という文書で発表しています。

該当部分を引用すると次のとおり。
2.経緯

(1)当社は2012年4月に、株式会社ディ・コンプレックスの株式の33.3%を保有する株式会社NEXTEPを従来の持分法適用関連会社から完全子会社にしました。その際、株式会社ディ・コンプレックスは当社の株式を50株保有しており、本来であれば同社の保有する当社株式は相互保有株式として議決権から控除すべきでしたが、当社の株主名簿の確定作業の中で適切に把握ができずに過誤が生じておりました。

(2)その後、2014年9月末の株主名簿の確定作業において、当社内の確認作業を見直したところ、株式会社ディ・コンプレックスが保有する当社株式が相互保有株式として取り扱われていなかったことが判明し、議決権から控除する取り扱いといたしました。

(3)その際、それ以前の株主名簿確定時における取り扱いについて、開示書類等の訂正を行うかどうか検討いたしましたが、専門家の意見等も踏まえ、総議決権に占める割合が0.002%~0.004%と訂正内容が軽微であり、自発的訂正が必要とされる事由には該当しないと判断いたしました。

(4)また、外国人議決権比率については、2014年9月末時点で20%未満と適正な状況であったため、当時は開示等の必要はないと判断しました。

(5)ただし、昨今の他社の事例における放送法に関する問題等を踏まえ、この度、改めて当時の状況を確認し、公表することといたしました。
この経緯については、4月5日、フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長が朝日新聞の取材に次の様に答えています。

【外資規制違反の疑いについて】

 ――(本来入れるべきではない、番組制作会社が保有するFMH株について議決権を誤って算入していた)14年9月以前の状態についてはどう認識しているのか

 ちゃんと訂正をしておくべきだったというふうに、考えている。そこの判断が極めて甘かった。

 ――外資比率について、20%を超えていた計算になるが

 正確に何%であるかという認識はないが、(外資規制違反の)可能性としては極めて高い。

 ――当時は何%になるかという計算はしていなかったのか

 当該部署は当然、計算しているんだろうと思うが、今の時点でどうだということに関しての認識が、正確なものがない。
金光社長は2014年9月当時は常務で株式の担当ではなく、今回の件で報告を受けた2014年11月時点では、外資規制違反の疑いが解消された後だったそうなのですけれども、いくら株式担当でなかったとしても放送事業認定に関わる大きなことで、訂正内容が軽微だからと内輪で済ませていたのはどうかと思います。


4.放送法第116条


今回の問題について、一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員で株式会社アシスト社長の平井宏治氏がこちらで解説しているのですけれども、平井氏は「放送業界への外資規制は世界の常識」とした上で、2021年3月12日時点で、フジ・メディア・ホールディングスと日本テレビホールディングスの外国人等議決権比率は、全議決権の5分の1を超えていると指摘しています。

これだけを聞くと、今現在も放送法に違反しているのではないかとも思ってしまうのですけれども、違反ではないのには裏があって、"名義上"の議決権割合で5分の1以内に収めているからです。

放送法第116条に「外国人等の取得した株式の取扱い」が定められているのですけれども、第116条第3項2では次の様になっています。
三  当該基幹放送事業者が特定地上基幹放送事業者である場合 電波法第五条第四項第二号 又は第三号 に定める事由
2  前項の基幹放送事業者は、社債等振替法第百五十一条第一項 又は第八項 の規定による通知に係る株主のうち外国人等が有する株式のすべてについて社債等振替法第百五十二条第一項 の規定により株主名簿に記載し、又は記録することとした場合に欠格事由に該当することとなるときは、同項 の規定にかかわらず、特定外国株式(欠格事由に該当することとならないように当該株式の一部に限つて株主名簿に記載し、又は記録する方法として総務省令で定める方法に従い記載し、又は記録することができる株式以外の株式をいう。)については、同項 の規定により株主名簿に記載し、又は記録することを拒むことができる。
このように外国人が5分の1を超える分の株式を保有する場合について、名義を書き換えることを拒否できるとしているのですね。名義を書き換えないことで、その株には議決権を与えず、見かけ上の議決権割合を5分の1以下に抑えることが出来るようになるというわけです。

フジ・メディア・ホールディングスは、2012年4月にディ・コンプレックス社を子会社にした際に、ディ・コンプレックス社が持っていたフジ・メディア・ホールディングスの株を正確に把握できていなかったため、計算がズレてしまい、外資比率が20%を超えてしまった。それを2014年9月に見直した場合に、超えているのが分かったので、正しく計算をやり直して5分の1以内にしたということのようです。

これに対し東北新社は、名義変更拒否をしなかった結果、外国人議決権割合が5分の1を超えて取り消しになったということのようです。

従って、東北新社とフジ・メディア・ホールディングスとでは現行犯と過去犯罪という違いがあるとは言えます。


5.外資規制に引っかかったマスコミの未来


先に取り上げた日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏は、放送業界の外資規制で注目すべきは、名義書換拒否を怠った東北新社ではなく次の4点を挙げています。
 1)いかなる経緯で、外国人等持ち株比率が高くなったのか
 2)30%を超える株式を保有する外国人等株主はどの国か
 3)ファンドなど匿名性のある投資手段を利用する資金の出し手は誰か
 4)外国人等による株式の保有が、番組内容に何らかの影響を与えていないか
平井氏は、地上波放送から国際情勢や安全保障問題などを取り上げる番組が姿を消し、国民が知るべき内容はほとんど報道されなくなったのは外国の意思を反映しているのかと危惧し、政府は、安全保障の観点から実態調査を行うことができないのかと警鐘を鳴らしています。

総務省の調査でどこまで明らかになるのか分かりませんけれども、一部の上場放送会社の外国人持ち株比率が高くなった経緯については是非明らかにしていただきたいと思います。

さらに今回の問題では現行犯とはいえ、既に東北新社が衛星放送事業の認定取消しされたという前例が重く圧し掛かってきます。

まぁ、これも、マスコミが菅政権叩きを狙ってか、総務省接待問題と絡めて叩きまくったお陰で、放送法の外資規制に引っかかったことが明るみになったことも大いに影響していると思いますけれども、それが逆にブーメランとなってフジ・メディア・ホールディングスに返って来ている気もしなくはありません。

もしも、フジ・メディア・ホールディングスに何のお咎めもなかったとしても、それで世間が許すかどうか。まずは総務省の調査結果がどうなるかでしょうね。



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