

1.与党が大敗したソウル・釜山市長選
4月7日、韓国のソウルとプサンで市長選挙の投開票が行われ、いずれも最大野党の候補が与党候補を抑えて当選しました。
ソウルの市長選挙は、保守系最大野党「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)氏が57.5%の得票率で、与党「共に民主党」の朴映宣(パク・ヨンソン)氏をおよそ18ポイントの差で抑え当選しました。
また、プサン市長選挙も、李明博政権元高官で国民の力の朴亨ジュン氏が与党の金栄春・前海洋水産相におよそ28ポイントの差をつけて当選しました。
呉氏は「新型コロナウイルスや経済難で苦しむ市民を考えると重い責任を感じる」と強調し、朴亨ジュン氏も「選挙で表れた民心に従い国政を大転換する契機になることを願う」と語りました。
来年3月の大統領選挙の前哨戦と位置づけられた今回の選挙は、革新系の与党「共に民主党」と保守系の最大野党「国民の力」が真っ向から対決する構図となったのですけれども、文政権のおよそ4年間で首都圏のマンションが2倍近く値上がりするなど不動産価格の高騰が続く中、土地住宅公社の職員らが開発計画の発表前に値上がりが見込まれる土地を不正に購入していた疑惑が先月に浮上。
これにより、格差の解消や公正な社会の実現を掲げてきた文大統領の支持率は2017年5月の就任以来、最低の30%台前半に落ち込んでいました。
対する最大野党はソウルの市長選挙で中道系の第3野党「国民の党」との間で候補の一本化に成功し、選挙戦し「文政権に審判を」と訴え、政権への批判票を幅広く集めました。
韓国では2016年以降、主要選挙でいずれも革新系政党が勝利していて、昨年4月の総選挙も、与党側が全体の5分の3に当たる議席を獲得するなど圧勝していました。
それがわずか1年でこれです。
2.ネガティブキャンペーンを繰り返した泥仕合選挙
今回の両市長選は与野党両陣営がネガティブキャンペーンを繰り返し泥仕合となりました。特にソウル市長選は政策論争そっちのけのスキャンダル暴露合戦に終始しました。
与党候補だった朴映宣氏は、もとMBCテレビのニュースキャスターで、国会議員を4期、中小ベンチャー企業相も務めたベテラン政治家です。抜群の知名度を誇り、ソウルで初の女性市長になるうる候補として、与党唯一の「必勝カード」と期待されていました。
ところが、東京のマンションを投資目的で購入したことや日本車を愛用していることが世間に知れわたり「東京朴」とさえ揶揄されていました。
今回のソウル市長選挙では自身の資産が暴露され、TV討論会では、20代の若者を蔑み、論理も根拠もなしに相手を非難するだけの言動で、更に支持率が落ち込みました。
一方、野党統一候補の呉世勲氏は2006~11年にソウル市長を務めた人物で、ソウル市長在任時代に税収が多い区の税金を地域共同開発に投資しながら、ソウル特別市内の未開発地域を整備する「共存政策」を実施しました。
呉世勲氏は、2010年頃、小学校低学年と中学生までを含む給食無償化に対し、「福祉ポピュリズム」だという理由で反対し、進歩勢力のソウル市教育監と対立しました。呉世勲氏は、住民投票を行い「負けたらいさぎよく市長職を辞任する」と宣言。2011年8月に行われた住民投票では、投票率が25.7%と、開票が可能な投票率33.3%を達成できず、投票は無効。無償給食に関する案件は全て否決されました。
その後、呉世勲氏は宣言通りに辞任しました。
韓国では、毎年公共機関を対象に、国民と内部職員によるアンケート及び、不公正取引の有無などから「公共機関の清廉度評価」を行うのですけれども、今回の選挙ではこの清廉度評価で下位だったソウル市を、呉世勲氏が史上初の1位に2度も押し上げるなど、呉世勲氏のソウル市長時代の功績が再び伝えられ、支持を広げました。
選挙戦は当初、与党がやや優勢な局面もあったのですけれども、野党側が候補を一本化すると、与野党の支持は逆転。今回の結果へとなりました。
3.非民主的手段に出る可能性
選挙結果を受けて、大統領選挙に向けて与野党ともに党内の候補者選びを加速させる見通しですけれども、政権与党にとって今回の敗北は大きな打撃で、残る任期が1年余りの文政権の求心力の低下は避けられないという見方も出ています。
ある大統領府関係者は「選挙に敗れるという前提下で、不動産など主要政策課題を推進する方案を模索してきた……だが、予想を越える大きな敗北のせいで、今後は何をしても容易ではないという気がする」と話し、別の関係者は「静かに任期を終えること以外に今は他に何があるか。政権再創出にも赤信号がついたことを認めざるを得ない」とコメントしています。
慶應義塾大学の西野純也教授は、「与党の大敗だ」と述べたうえで「支持率が下がっている文在寅政権にとっては来年に迫る大統領選挙の前哨戦である重要な選挙に負けたことで求心力の低下に拍車がかかり、あらゆる政策を推し進める力が落ちてくることになる」と指摘していますけれども、文政権のレイムダック化は避けられない状況になってきました。
ただ、それでも、文在寅政権は選挙そのものをちゃぶ台返しする可能性があるという見方もあります。
ジャーナリストの室谷克実氏は、前回の国会議員選挙で3ヶ所の開票所で期日前投票分の与党得票率がまったく同じという「信じがたい偶然」が起き、票読み取りのコンピューターソフトが不正操作されていたという疑惑が燻っているとした上で、与党の首席代弁人が投票2日前に「野党候補が勝っても、当選無効となる可能性が非常に大きい」と述べたと伝えています。
これについて室谷氏は、「野党候補の選挙公報内容に重大な虚偽があった」といった有権者からの告発を根拠に、政権が自在に動かせる組織である選挙管理委員会が「当選無効」を決定し、当選者を引きずり下ろす算段が進んでいると見なくてはならないと警告しています。
室谷氏曰く、文大統領にとって最大の課題は、次の大統領選挙でも与党候補が勝つことであり、「次の選挙で負けたら、我々はみんな監獄行きだ」と分かっている勢力は、どんな非民主的な手段でも講ずるとし、"民主主義ボケ"した日本人の目で、韓国情勢を見ていてはならないとまで述べているのですね。
そこまで無茶をやるのかと俄かには信じられないのですけれども、これまで色々とやらかしまくっている文政権ですからね。次の大統領が誰になるにせよ、韓国が今の国際法違反を解消しない限り、日本は"丁寧に無視"する路線を維持するしかないかと思いますね。
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