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1.米朝対話の再開を促す文在寅
4月16日、韓国の文在寅大統領は21日に掲載されたアメリカのニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに応じ、朝鮮半島の非核化について、韓国にとって生存に関わる問題とし、「1日も早く向かい合って座ることが問題解決の最も重要な出発点」と述べました。
文大統領は、トランプ前大統領の対北朝鮮政策について、完全な成功を収めることはできなかったとしながらも、トランプ政権の成果を土台にさらに進展させていけばその実りをバイデン政権が得ることができると述べ、「バイデン大統領が朝鮮半島の完全な非核化と平和定着のために実際的・不可逆的進展を成し遂げた歴史に残る大統領になることを願う」と語りました。
文大統領は、北朝鮮が実施した核施設の廃棄や、今後行われる可能性のある段階的な措置を挙げ、これに相応するアメリカの譲歩が合っていれば、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など北朝鮮の資産廃棄につながるだけでなく、不可逆的で完全な非核化につながると見通しました。
そして、米中間の関係悪化は朝鮮半島の非核化のための全ての交渉を損なう可能性があるとし、「もしアメリカと中国の軋轢が激化すれば、北がそれを利用しようとする可能性がある」と述べ、米中が北朝鮮問題、気候変動を含んだ世界の懸案と関連して協力するよう促しました。
北朝鮮問題を解決したければ、米中対立を止めよと言わんばかりの物言いです。
その文在寅大統領はアメリカに要求する一方で、中国にはだんまりです。
4月20日、文大統領は、中国で開催された「2021年ボアオ・フォーラム年次総会」の開幕式にビデオメッセージを寄せ、その中で、世界が新型コロナウイルス感染症危機を克服し、包容的回復を成すためのアジアの役割とグローバル・ガバナンスの強化方案を提案。包容性が強化された多国間主義の協力と自由貿易強化を通じて、世界経済回復を早めることを強調しながら、お互いの違いを認め共同の利益を追求することを訴えました。
また、新技術分野でも中国との協力を否定しませんでした。これらは当然ながら、アメリカのバイデン政権の対中政策とは全くマッチしません。
2.グランドバーゲンはしない
こうした文大統領の一連の発言について、梨花女子大学のパク・インフィ教授は「中国に親和的メッセージを出したのと比較し、アメリカに対するメッセージが攻撃的に受け止められる側面がある……特にシンガポール合意を履行すべきという警告は、あたかも会談決裂のすべての責任をアメリカに転嫁しているとみなされる余地がある……バイデン大統領も北朝鮮との対話の必要性を知っている状況で出たこうしたメッセージが、アメリカに不必要な誤解を与えないか憂慮される」と述べています。
実際、アメリカは4月30日、サキ大統領報道官が記者会見で、北朝鮮政策の見直しを終えたのかと問われ「私達の目標は、引き続き、朝鮮半島の完全な非核化だ。過去4回の政権の努力ではこの目標を達成できなかったことを明確に理解した上で、私たちの政策は、グランドバーゲンの達成や戦略的忍耐に重点を置くものではない。我々の政策は、北朝鮮との外交に門戸を開き、それを模索し、アメリカ、同盟国、展開している軍隊の安全を向上させるための現実的な進展を目指す、調整された現実的なアプローチを求めるものだ」と言明しました。
サキ報道官は、過去4回の政権では目標を達成できなかったことを理解した上で、北朝鮮政策を見直したと言っています。これは殆ど、文大統領がいうやり方では目標は達成できないと言っているようなものです。
3.ワクチンの代わりに中国を選択した
文大統領は、5月21日にバイデン大統領との対面での米韓首脳会談を行う予定ですけれども、主要議題として北朝鮮政策が上がると見られる他、韓国大統領府が「韓(朝鮮)半島の完全な非核化、恒久的な平和定着進展に向けた協調をはじめ、経済・通商などの協力や気候変動、新型コロナウイルスなど地球規模の課題について深く議論する」と述べるなど、アメリカの半導体サプライチェーン強化や韓国のワクチン確保をめぐる協力もテーマになるとみられています。
現在、ワクチン確保に苦しんでいる韓国にとっては、この会談でワクチン確保の道筋を付けたい思惑もあるという意見もありますけれども、そう簡単にはいかないという指摘もあります。
千英宇(チョン・ヨンウ)元青瓦台外交安保首席秘書官は「アメリカは絶えず中国に対抗するアメリカ側に立ってほしいと要請してきたが、韓国政府は毎回拒否してきた……アメリカの要求には背を向けながら、突然『同盟にワクチンを支援すべき』という要求をして、アメリカが受け入れるのか……文政権のクワッド加入拒否は結果的にワクチンの代わりに中国を選択するという失策となった」と述べています。実に御尤もです。
4.一年以内に監獄に行く可能性がある
任期が残り1年となった文大統領を取り巻く環境は極めて厳しくなっています。4月のソウル・釜山両市長選では与党候補が惨敗。韓国の民間世論調査機関「韓国ギャラップ」が4月30日に発表した文大統領の支持率が29%と初めて3割を切りました。
これについて、政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表は「20%台の大統領支持率は民主党が政権再創出をするのに負担になる数値」であり「党が大統領と距離を置き始めながらレームダック化が現れるだろう」と予測しています。
実際、4月7日のソウル・釜山市長補欠選挙の惨敗を受け、共に民主党の内外から、一層徹底的な反省と刷新を求める要求が続出。1年生議員約50人は「共に民主党初当選議員による共同立場文」を発表し、共に民主党の党憲と党規に従えば、今回の補欠選挙では共に民主党は候補の公認をすべきではなかったと主張しました。
そして具体的な施策として、民主党が「傲慢」だと思わせた強硬論を主張した人物らが次期指導部に出馬しないことの要求や、「チョ・グク元法務部長官、チュ・ミエ前法務部長官切り捨て論」、「大統領と民主党の道徳的優越主義を前面に出した"自分たちの過ちの合理化"などに対する批判」などが続出しています。
次期大統領について、現在有力候補として与党「共に民主党」からは李洛淵(イ・ナギョン)前代表と丁世均(チョン・セギュン)前首相、それに李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事の3人の名前が挙がっています。
世論調査では李知事が他の二人をリードし、独走状態にあるのですけれども、李知事は与党内では非主流派で文在寅派に属していないことに加え、常日頃から「大小に関わらず、非正常、不公正については厳重に責任を問わなければならない」と語るなど文在寅大統領にとっては、後継者として推したくない人物のようです。
この見方は与党外にもあって、かつて朴槿恵前政権下で与党代表を務め、現在は無所属の洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員は、5月14日に選挙区の大邱の事務室で開かれた記者懇談会で取材陣から「誰が与党の大統領候補になると思うか」と問われ、「いま与党の課題は、文大統領が退任した後に彼の安全を守ることができる候補を見つけることだ……文大統領の立場では李知事は絶対に違う。最も危険な候補……文大統領は李知事以外に信頼できる人をどうつくるかを考えてい
るはず……李知事が大統領になれば文大統領は1年以内に監獄に行く可能性がある。誰になるかは分からないが、これだけは自信を持って言える」と話しました。
けれども、残り任期1年を切ったこの段階で「信頼できる人を作る」といってもどうすればよいのか。
もしも、ここからの起死回生があるとするならば、アメリカの要求を全て飲んで、クワッドに参加。対中包囲網の形成に関わると同時に、日本と関係改善すべく、いわゆる元徴用工問題を国内で解決し国際法違反状態を解消する。そうでもない限り無理ではないかと思います。
あるいは米韓首脳会談で目の覚めるような成果を上げるくらいしかないと思われますけれども、これまでの文大統領を見る限り、その望むは薄いと思います。
まずは、今週末の米韓首脳会談でどんな結果が出るのか。注目していきたいと思います。
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