アメリカに門前払いされるユニクロ

今日はこの話題です。
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1.ユニクロ製品差し止め


5月19日、アメリカの税関・国境警備局(CBP)は、中国新疆ウイグル自治区産の綿製品をめぐる輸入禁止措置に違反したとして、ファーストリテイリング社が展開する衣料品店「ユニクロ」の男性用シャツの輸入を1月に差し止めていたことが明らかになりました。

米税関・国境警備局(CBP)によると、1月5日、カリフォルニア州内の税関は、アメリカが制裁対象とする中国の「新疆生産建設兵団(XPCC)」が原料綿の生産に関与した疑いがあるとして、ユニクロのシャツをロサンゼルス港で押収したそうです。

これに対し、ファーストリテイリング社は3月末に、対象製品の原材料は中国やXPCCと無関係だと反論する手続きを行っていました。

19日、今回の差し止めについて、ファーストリテイリング社は、「決定は非常に遺憾」とのコメントを公表し、「サプライチェーンにおいては強制労働などの深刻な人権侵害がないことを確認している……生産過程で強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみ使用している」と述べ、「輸入要件を満たしていることを示すためにあらゆる証拠を提出した」としていますけれども、米税関・国境警備局(CBP)は証拠不十分で却下しています。


2.綿とトマト


米税関・国境警備局(CBP)は昨年11月30日に「新疆生産建設兵団(XPCC)」とその関連組織の綿製品の発売中止命令を出しました。

そして今年1月13日には、アメリカのすべての入国港において、中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品およびトマト製品を差し止める命令を発令しています。

4月14日、カゴメが新疆ウイグル自治区産のトマトペーストについて、「人権問題への懸念の高まりや、品質や調達の安定性、コストなどを考慮した」として製品に使うのを、2021年中にやめることを明らかにしましたけれども、あるいはこれも、米税関・国境警備局(CBP)の差し止め命令を受けての措置かもしれません。

1月13日の差し止め命令について、米税関・国境警備局(CBP)は「新疆ウイグル自治区で全部または一部が生産された綿花、トマトおよびその下流製品に対して発行され、これらの投入物を組み込んで新疆ウイグル自治区外で生産された下流製品も含まれる。これらの製品には、アパレル、繊維製品、トマトの種、トマト缶、トマトソース、その他綿花やトマトを使用した製品が含まれる。輸入者は、輸入しようとする製品が、原材料の生産や収穫を含むサプライチェーンのどの段階においても強制労働を利用していないことを確認する責任がある」とコメントしています。

綿とトマトの製品については、少しでも該当していれば、最終生産地がどこであろうとアウトだということです。

米税関・国境警備局(CBP)によると、1月13日の差し止め命令は、2021年度に入ってから発行した4つ目の命令で、新疆を原産地とする製品については2つ目とのことです。そして、2020年度に発行した差し止め命令13件のうち8件は、中国での強制労働によって作られた商品に関するものとしています。


3.中国リスクへの対応不可避


米税関・国境警備局(CBP)は、綿製品とトマト製品について、サプライチェーンのどの段階においても強制労働を利用していないことを確認する責任があると述べていますけれども、では具体的に何を確認すればよいのか。

これについて米税関・国境警備局(CBP)は強制労働で生産されていないことを証明するために、外国の売り手が署名した原産地証明書の3ヶ月以内の提出を要求しています。

ただ、その原産地証明書も標準的なものでは駄目で、連邦規則集「19CFR12.43-許容性の証明」で定められたものでなければならないとしています。

それによると、商品およびそのすべての構成要素の出所を特定し、そのすべての構成要素の生産のいかなる段階においても指定された種類の労働力が使用されていることを示さなければならないとなっています。

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米税関・国境警備局(CBP)はその裏付けとなる文書として、以下を要求しています。
綿製品の場合:糸生産者からの宣誓供述書と、原綿の供給元を特定する原綿の供給元。糸と原綿の発注書、請求書、および支払い証明。原綿の綿と綿の生産者を特定する記録を含む、糸の生産ステップと生産記録のリスト。綿花栽培者から糸製造業者への輸送書類。綿を選んだ従業員のサポート文書、タイムカードなど、賃金支払いの領収書、および糸生産者に販売された原綿に関連する日次プロセスレポート。

トマト製品の場合:トマトの種子、トマト、またはトマト製品の原産地を示すサプライチェーンのトレーサビリティ文書を提供します。親会社とトマトの種子やトマトを調達した不動産の両方を特定するトマト加工施設からの宣誓供述書。トマトの種子、トマト、またはトマト製品の発注書、請求書、および支払い証明書。原材料を調達した加工施設および不動産から。トマトの種子、トマト、および/またはトマト製品のすべての生産記録。種子から完成品、農場から米国への出荷までのすべてのステップを識別します。
原産地から、下流の製品の生産と加工、そしてアメリカに輸入されるまで全てのサプライチェーンを調べ上げて提出しなければならないという中々に厳格な規定です。

今回、製品差し止めになったユニクロ製品について、ファーストリテイリング社はあらゆる証拠を提出したと述べていますけれども、米税関・国境警備局(CBP)は、「生産、加工、処理の記録が未提出」および「関係者や工場の場所が不明」と指摘しています。要するに規定に対して証拠が足らないと門前払いを食らった訳です。

ユニクロ製品のアメリカ輸出については、ファーストリテイリング社がこれらをきちんと出さない限り許可されないと思われます。

綿製品とトマト製品の差し止め命令が出たのが1月13日でそこから証拠提出の期限である3ヶ月を足すと4月13日になります。カゴメが新疆ウイグル自治区産のトマトを使わないと発表したのが4月14日であることをみれば、あるいはカゴメも原産地証明を揃えることが出来なかった可能性も考えられます。

このように、アメリカへの綿製品、トマト製品の輸出で、ファーストリテイリング社が証拠不十分で門前払いされ、カゴメはリスク回避で撤退したことを考えると、生半可な証拠では太刀打ちできないことが分かります。

今はまだ綿製品とトマト製品だけですけれども、その他製品に範囲が拡大されると、相当な影響が出るものと予想されます。

2月23日のエントリー「名指しされたウイグル人弾圧疑い企業」で、強制労働への関与の疑いのある企業が多数あることについて取り上げましたけれども、今回の件はそれら企業含め、中国に関わることのリスク対応を迫られることになるのではないかと思いますね。



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