2021年版の外交青書

今日はこの話題です。
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1.安保上の強い懸念


4月27日、外務省は2021年版の外交青書を公開しました。

今回の外交青書の目次から巻頭特集と第一章の見出しを拾うと次の通りです
巻頭特集 新型コロナウイルス感染症への対応
 1 新型コロナの発生・拡大と国際社会への影響
 2 外務省を含む日本政府の取組

第1章 2020年の国際情勢と日本外交の展望
 1-1 情勢認識
 1-2 米国と中国を中心とする動き
 2  日本外交の展望
  特集 日米豪印外相会合
巻頭特集と第一章の見出しを見るだけで、今の日本が最重要視している内容が分かります。

例えば、巻頭特集の武漢ウイルス感染症への対応ついては「多国間主義の重要性が再確認される契機となった。一方で、世界保健機関(WHO)を始めとする国際機関の機能や中立性が改めて問われるきっかけともなった」との認識を示していますし、第一章の2020年の国際情勢と日本外交の展望では、「日本が政治、安全保障及び経済上の国益を確保し、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値に基づいた、日本にとって望ましい国際秩序を維持・発展させていくためには、国際情勢の変化を冷静に把握し、その変化に対応しながら、戦略的に外交を展開していく必要がある」と大方針を示しています。

とりわけ、第1章では、「1-2 米国と中国を中心とする動き」として、米中関係を独立した項目で取り上げていて、今年は米中関係が日本の外交に大きく影響を与えると見ていることが分かります。

この「1-2 米国と中国を中心とする動き」の中の小節(3)米中関係では次のように述べられています。
(3)米中関係
2020年、トランプ前政権下における米中関係は、緊張の度合を深めた。2019年に続き、両国は通商問題や先端技術をめぐる競争など様々な分野で厳しく対峙し、それは政治、外交、軍事・安全保障、メディア、教育などにも及び、相手国への非難や制裁が頻発した。例えば、米国連邦議会では、6月に「ウイグル人権政策法」、7月に「香港自治法」が成立するなど中国に対する厳しい制裁を含む対応を求める声が高まったほか、安全保障上の懸念などを理由に、多くの中国企業に対して規制が強化された。

また、米国が7月末にスパイ活動と知財窃取の拠点であるとして、ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖させると、これに対抗して中国も成都にある米国総領事館を閉鎖させた。さらに、新型コロナをめぐっても、トランプ大統領は「中国ウイルス」と表現するなど、ウイルスの蔓延拡大に対する中国の責任を強調した。また、2021年1月には、米国は、新疆ウイグル自治区における人権状況を「ジェノサイド(集団殺害)」と判断した。

バイデン政権は、厳しい対中姿勢を基調としながらも、国際保健をめぐる課題や気候変動問題など協力できる分野では協力を模索することが予想される。

2021年2月、バイデン大統領就任後初めての米中首脳電話会談が行われ、米国務省は、バイデン大統領が中国の強圧的で不公正な経済慣行、香港での弾圧、新疆ウイグル自治区での人権侵害、台湾を含む地域での強圧的行動に対する懸念を強調したと発表した。

一方、中国側発表によれば、習近平国家主席は、協力は米中双方の唯一かつ正しい選択肢と述べ、各種の対話メカニズムの再構築を提案するなど、新政権との協力関係の構築に期待をにじませた。

世界第1位、第2位の経済大国である米中両国間で安定的な関係が構築されることは、日本のみならず、国際社会全体に関わる問題であることから、引き続き今後の動向が注目される。
このように、「バイデン政権は、厳しい対中姿勢を基調としながらも協力できる分野では協力を模索する」とした上で、安定した米中関係の構築は国際社会全体に関わる問題である、としています。


2.ウイグル自治区の人権状況について深刻に懸


また、中国の動向についても、途上国へのワクチン供給などを例に挙げ「外交面において国際社会における影響力の拡大を図った」と指摘し、東・南シナ海での中国の海洋進出の動きについては、前年の20年版では「地域・国際社会共通の懸念事項」としていたのを、今回の21年版では「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている」とさらに踏み込んでいます。

そして、沖縄県尖閣諸島周辺で活動する中国公船についても、「尖閣諸島周辺の我が国領海で独自の主張をする中国海警船舶の活動は、そもそも国際法違反であり、外交ルートを通じ、厳重な抗議と退去要求を繰23 尖閣諸島に関する日本政府の立場についてはくり返し実施してきている。引き続き、日本の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下、冷静かつ毅然と対応していく」と記しました。

また、新疆ウイグル自治区の人権状況にも「日本としては、新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻に懸念しており、国際社会
における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要と考えている」と強調。

更に、2012年版まで「重要な地域」と記述していた台湾については、2013年に「重要なパートナー」に改め、2015年から「基本的価値を共有」や「大切な友人」との表記を加えていたのですけれども、今回も「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」と表記しています。

これらについては、先日の日米首脳会談と共同声明の内容に沿ったものだという印象を受けます。


3.日本は手を伸ばし過ぎてはならない


4月30日、環球時報は、日本政府が発表した「外交青書」について、中国国防部の報道官が「非常に危険だ」とコメントしたことを報じました。

記事では、国防部の呉謙(ウー・チエン)報道官が記者会見で「日本政府が先日発表した外交青書にて、中国の軍事的台頭が顕著であり軍事費を大幅に増加させ、軍備の増強や東シナ海、南シナ海での活動が日本を含む国際社会に強い憂慮を生んでいると記載されたほか、台湾について『極めて重要なパートナー』と位置付けたことについてどう考えるか」との質問に「日本政府が外交青書にていわゆる『中国の軍事的脅威』を喧伝し、中国の内政に乱暴に干渉することは、重大な過ちであるとともに無責任な行動である」とし、中国政府として強い不満を示すとともに、日本政府に対して抗議を行ったことを明らかにしたと伝えました。

そして尖閣諸島について「中国の不可分な領土の一部である」、領有権争いのある南シナ海の島や付近の海域について「争うべくもない主権を持っている」という従来の中国政府の主張を繰り返し、中国の政府と国による、自国の主権、利益、安全を守る意志が揺らぐことはないと述べました。

また、台湾問題については「純然たるわが国の内政であり、いかなる国によるいかなる手段による台湾問題への干渉を絶対に許さない……日本は手を伸ばし過ぎてはならない。また、非現実的な幻想を抱くことは非常に危険だ」と日本を牽制しました。


4.台湾有事に備えて議論すべきことが山積


5月1日、防衛省統合幕僚監部は、中国海軍のフリゲート艦1隻が同日、沖縄県の与那国島と台湾の間を北上し、東シナ海に入ったと発表しました。

中国のフリゲート艦は沖縄本島と宮古島の間を南下して太平洋に入り、その後、与那国島の西方へ進んだとのことです。領海侵入や自衛隊の艦艇、航空機への危険な行動はなかったということですけれども、これは前日に中国国防部が日本の外交青書を受けて「台湾に手をだすな」と抗議したことを形に表したものではないかと思います。

この中国艦による与那国-台湾間の通過を防衛相が公表するのは今回が初めてのようなのですけれども、これは中国の台湾に手をだすなという抗議に対する答えであると同時に、日本国民に紛争の危険が高まっていると自覚を促すという二つの意味があるようにも思えます。

今回の中国海軍フリゲート艦による航行について、日本維新の会の足立康史議員は「台湾有事に備えて、議論すべきことが山積。例えば指揮権。日米連合司令官を置かなくていいとは思えない」とツイートしていますけれども、まったくその通りです。

秋までに行われる衆院選で、各党が台湾有事についての政策を公約として明解にするのか分かりませんけれども、すくなくともそれが出来ないような政党に日本を預けるのは少し厳しいのではないかと思いますね。



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