ワクチンで繋がる日台

今日はこの話題です。
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1.日本EU首脳協議


5月27日、菅総理は欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長とテレビ会議で協議を行いました。

日本とEU首脳との定期協議は2年ぶり。菅政権では初めてのことになります。

会談後、共同声明が出されましたけれども、内容は多岐に渡ります。大きくは「新型コロナウイルスのパンデミックの収束及び強じんで持続可能な回復への支持」「貿易、連結性及びイノベーションからの利益の活用」「民主的で安定した世界のための協力」の三つに分かれ、全部で22のパラグラフあります。

三つ目の「民主的で安定した世界のための協力」では次の内容が謳われました。
18節: 「自由で開かれたインド太平洋」への協力強化、AOIP支持、ASEAN等との協力強化
19節: 軍縮・不拡散、サイバーセキュリティ協議強化、偽情報(対話の継続)、海洋安保協力強化(日EUジブチ共同訓練)
20節: 北朝鮮(CVIDを含むコミットメントの確認、拉致問題の即時解決への協力)、イラン(JCPOA支持)
21節: 東・南シナ海の状況への深刻な懸念、一方的現状変更への強い反対、台湾海峡の平和と安定の重要性
22節: ミャンマー、香港、新疆等に関する連携、中国とロシアと対話の継続、アフリカ各国との協力での連携強化
どれも日本にとって重要なものばかりですけれども、なかでも注目されるのは初めて台湾問題に言及したことです。

当該の21節では次のように述べられています。
21 我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き深刻に懸念し、現状を変更し、緊張を高めるあらゆる一方的な試みにも強く反対する。我々は、国際法、特に、平和的な手段により紛争を解決する義務に関する規定を有する国連海洋法条約(UNCLOS)を尊重すること並びに航行及び上空飛行の自由を維持することの決定的な重要性を再確認する。我々は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す。
がっつり台湾に触れていますけれども、ここでも台湾「海峡」です。

まぁ、台湾と直接言わない分、微妙なところがないとはいえませんけれども、それでも、EUとの共同声明で台湾、および東シナ、南シナ海に触れたのは大きな意味があります。EUもこの地域にに関与するということになりますから。

協議で、菅総理は中国による沖縄県尖閣諸島周辺での国際法に反する行動を改めて説明し、EU側と自由で開かれた国際秩序に反する行動に「結束して声を上げていく」と確認しています。

この共同声明に台湾外交部は「EUと日本のリーダーが具体的な行動で台湾海峡の平和と安定に対する重視の姿勢を示してくれたことを歓迎し、心から感謝する……わが国は日本やEUといった理念の近い国と緊密に協力し、民主的な価値観や国際秩序を守り、海峡と地域の平和と安定、繁栄を共に維持していく」とのコメントを発表しました。

一方、中国はいつも通りの反発。中国外務省の趙立堅副報道局長は28日の記者会見で、「日本とEUは正常な関係発展の範囲を完全に超え、第三国の利益を損なっている……台湾は中国の領土で、どの国も台湾問題に手出しするのを断じて許さない……台湾情勢について言うなら、両岸の統一が地域や世界の平和と安定を守る最適な答えだ」と主張しています。

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2.台湾支持の声


世界は台湾支持に動いています。

昨日のエントリーで、アメリカのベセラ厚生長官がWHOの年次総会で演説したことを取り上げましたけれども、その演説でも「台湾には世界保健総会のオブザーバーとして参加してもらう必要がある」と述べています。

また、台湾外交部によると、WHO総会では、台湾と外交関係を結ぶ14ヶ国が、本会議や委員会で発言したり、WHOのテドロス事務局長に書簡を送るなどして台湾支持を明らかにしました。

その他にも、アメリカ、日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、ニュージーランド、チェコ、リトアニアとヨハネ騎士団が26日までに、それぞれの方式で台湾のWHO総会参加を支持する立場を表明したとのことです。

これをうけ、台湾外交部は各国の声に耳を傾け、台湾を公平かつ尊厳ある形式でWHOの全ての会議や活動、メカニズムに参加させるよう、WHOに改めて呼び掛けました。


3.我々は怖くて使えない


台湾に対する世界の注目が集まる中、中国は嫌がらせを行っているようです。

5月26日、台湾の蔡総統は自らがトップを務める与党・民進党のオンライン会議に出席しました。

この中で蔡総統は武漢ウイルスのワクチン調達について「イギリスのアストラゼネカ、アメリカのモデルナ、ドイツのビオンテックと積極的に交渉し、アストラゼネカとモデルナからは購入できた。ビオンテックについては、同社の独工場から調達する契約が完了寸前だったが、中国が介入したため合意できていない」と発言しました。

台湾はアストラゼネカとモデルナに計数百万回分のワクチンを発注しているのですけれども、およそ70万回分しか届いておらず、接種率は約1%にとどまっているそうです。

ビオンテックのワクチンについては、中国の上海復星医薬が、中国本土・香港・マカオ・台湾でワクチンを独占的に販売する契約をビオンテックと結んでおり、先週末にビオンテックのワクチンを台湾向けに供給する用意があると表明していました。

これに対し蔡総統は「開発元のメーカーと交渉することによってのみ、品質と安全性への直接的な保証と責任を得ることができ、法的・政治的リスクを回避できる」と述べ、開発元のメーカーから直接購入するか、国際的な枠組み「COVAX」を通じた調達を検討する考えを示しています。

また、26日、中国で対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は、上海や江蘇の民間機関が台湾にワクチンを寄贈する意向を示しているとし、「人為的な政治のハードルがなければ、寄贈は問題にはならない」と障害を取り除くよう台湾側に呼び掛けました。

けれども、台湾行政院の羅秉成(らへいせい)報道官は、ワクチンは命を救えるものの、ワクチン自体にリスクが存在することを忘れてはならないと言及。そのため、非常に慎重に包括的な審査を行っているとコメントしました。

羅報道官は、「中国が打っているものは、われわれは怖くて使えない」と、中国からワクチンを直接購入すれば、安全性や有効性、合法性などに高いリスクと懸念が生じると指摘し、ワクチンは国民の健康に関わるため、購入は必ず中央政府が統一的に執り行うと説明しています。賢明な判断だと思います。


4.ワクチンで繋がる日台


そんな台湾に手を差し伸べたのが日本です。

5月28日、茂木外相は、国内の接種対象を上回る分はほかの国、地域へ提供していくとして、台湾への提供も検討する考えを示しました。

茂木外相はこの日の定例会見で次のように述べています。

我が国としては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて、あらゆる国・地域において、安全で有効なワクチンへの公平なアクセス、確保されることが重要であると考えておりまして、来週にはCOVAXワクチン・サミットを共催いたしまして、菅総理と私が出席をし、その実現に向けた協力を国際社会に呼びかける予定であります。

こうした観点も踏まえて、国内の接種対象者の数量を上回る分のワクチンの、現在不足している他の国・地域への供給の在り方についても、早急に検討し、具体的な方針を決定したいと考えております。

10年前の東日本大震災のとき、台湾は一早く義援金を募り、様々な支援をしていただいた、これは国民の皆さんもよくご存じのことであると思っております。一方、台湾は昨年来、この新型コロナ、かなり効果的に抑えてきたのですが、ここにきて感染が拡大していると、おそらく7月ぐらいになりますと、生産体制、かなり整ってくると思うのですが、その以前の段階においては、ワクチンが不足している状況、このような状況にあると思っております。そういった、それぞれの地域における状況であったりとか、我が国との関係等々も考えながら、しっかり検討していきたいと思っています。

東日本大震災のときに助けてくれた台湾に対する恩返しのニュアンスも感じさせますけれども、これに対し、台湾・中央感染症指揮センターの陳時中(ちんじちゅう)指揮官は記者会見で、ワクチンが台湾に入ってくることは「もちろん歓迎する……時期は早いほうがいい」と早期の実現を願う考えを示しました。

これについても、中国政府は「台湾がワクチンを利用して独立を謀ろうとしても目的は達成できない」と台湾を牽制しています。けれども、加藤官房長官が、記者会見で「日本としては、あらゆる国と地域において、安全で効果的なワクチンへの公平なアクセスが確保されることが重要だと考えている」と述べた通り、日本政府はワクチンの公平な分配を建前に使っています。

もとよりWHOはワクチンの公平な分配を訴えていますから、COVAXの枠組みを使いながら台湾にワクチンを供給するのはなんら咎められるものではありません。

実際、台湾にどれくらい提供することになるのかは分かりませんけれども、これはこれで日本のワクチン外交の一種かもしれません。ただ、台湾に提供することを匂わせ、そのように報道されること自体、台湾への支持になりますし、中国への牽制になるでしょうね。

こうしてみると、日本と台湾の繋がりは増々強くなっているようにも思います。

これから増々台湾は世界の注目ポイントになってくるのではないかと思いますね。


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