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1.医療崩壊するインド
インドでの武漢ウイルス感染が依然拡大しています。
5月3日、インド政府は新たに36万8147人が新型コロナウイルスに感染し、3417人が亡くなったことが確認されたと発表しました。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、3日午後7時現在(日本時間)で死亡した人は21万8959人で、メキシコを上回りアメリカとブラジルに次いで世界で3番目となっています。
インドでは感染の急激な拡大で病床や医療用の酸素の不足が続いていて、南部カルナタカ州の病院では2日夜から3日朝にかけて、入院していた武漢ウイルス感染患者など24人が酸素供給の遅れが原因で死亡したと現地メディアが伝えています。
首都ニューデリーでも、邦人女性が感染して死去したことが報じられていますけれども、こちらも感染と診断されたものの病院が満床で入院できず、自宅療養中に容体が急変、酸素レベルが下がり亡くなったということです。
インド政府によると首都でも依然、連日2万人以上の感染が続き、重症の感染者であっても病院に入院できない「医療崩壊」の状態が続いているのだそうです。
2.助けると言って牽制する中国
この事態に世界各国がインドへの支援表明に乗り出しました。アメリカは1億ドル(約110億円)分の医療物質を供給する方針を打ち出し、1100本の酸素ボンベに加え、2万回分の抗ウイルス薬「レムデシビル」や2千万回分のワクチンを生産できる原材料も提供。ドイツが人工呼吸器や医療用マスク、フランスが液体酸素、イギリスが空気を吸い込んで酸素を排気する酸素濃縮機などの供給を表明しました。
日本も4月30日に人工呼吸器と酸素濃縮機を供与する手続きを始めています。
4月29日、インドのシュリングラ外務次官は記者会見で「40カ国以上から支援の申し出を受けた」とコメントしています。
その支援を申し出た国の中に中国もいます。
4月27日、中国はアフガニスタン・パキスタン・ネパール・スリランカ・バングラデシュの5ヶ国とオンライン会議を開き、武漢ウイルスに対応するための「非常物資準備金」を新設することを決定しました。
中国の王毅外相はこの日の会議について「新型コロナ対応連帯のため」とし「中国と南アジアは非常物資を備蓄する」と述べた後、「今日の会議が新型コロナと戦っているインドに役に立つことを望む」と述べました。
実は、中国はこの会議にインドも招待していたのですけれども、インドは参加せず、申し出もシカトしています。
その理由の最大のものはもちろん国境の係争地域で対立する中国との関係が冷え込んでいるからですけれども、それ以外にも中国との「ワクチン外交」も関係しているとの見方があります。
ワクチン製造大国として知られるインドは近隣国などへワクチンの無償提供を進め、同じく自国産ワクチン供給で周辺国への影響力を強めようとしている中国と「ワクチン外交」で対抗しあっていました。
これが今回の感染爆発によってワクチン輸出は中断を余儀なくされています。これにより隣国バングラデシュはワクチン需給計画に支障が生じ、インドに不満をあらわにしています。
中国はここを狙っているというのですね。
ここでインドが中国製ワクチンの提供を受けると、インドは中国に敗北した形になりますから、その周辺国も雪崩を打って中国に靡く可能性も出てきます。
また、同時にこれは日米豪印のクワッドに楔を打たれる事にもなります。それを考えると、インドが迂闊に中国に援助を求めることはできないと思われます。
3.ロシアにアプローチするインド
こうしたことを背景にインドは、ロシアにアプローチしています。
4月28日、インドのモディ首相とロシアのプーチン大統領と緊急電話会談を行い、4月中旬に使用承認しているロシア産ワクチン「スプートニクV」をインドでも製造することを確認しました。
インドはイギリスのアストラゼネカのワクチンを、インドのセラム・インスティチュート・オブ・インディアが製造した「コビシールド」と、別のインド企業であるバーラト・バイオテックがインド政府系機関と共同開発した純国産の「コバクシン」の2つのワクチンを製造、使用しているのですけれども、これにロシア産ワクチンも追加するということです。
もっとも、このインドで生産するロシア産ワクチンはインド国内だけでなく、ロシアや第三国で利用することも想定しているそうですから、インド政府は単に今の国内の感染爆発の対応だけでなく、その先の「ワクチン外交」を睨んでいると思われます。
もしも、インドが中国に屈してしまえば、最悪クワッドが崩壊しかねませんし、また、バイデン政権が敵視し始めたロシアが中国と手を組むような事態になってしまっても、またロシア経由でインドが揺さぶられかねません。
その意味ではバイデン政権はロシアを敵視するべきではありませんし、ロシアはクワッド側に引き入れることは出来ないまでも、引き付けておかなければいけないと思います。
今回の印露電話会談では、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を新設することで合意していますから、インド経由でロシアをこちら側に引き付けておくラインが出来ました。
日米はクワッドを維持するためにも、インドへの協力はもちろんのこと、バイデン政権にロシアを敵視するなと説得する必要もあるのではないかと思いますね。
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