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1.日米外相会談
5月3日、G7外相会合出席のためイギリスを訪問中の茂木外相は、アメリカのブリンケン国務長官と外相会談を行いました。
会談時間は45分ながらも、中国、北朝鮮等の地域情勢およびミャンマー情勢を議論を行っています。
外務省は会談内容について次のように発表しています。
・ 冒頭、茂木外務大臣は、先般の菅総理大臣訪米の際の米側のおもてなしに対して謝意を述べるとともに、米国が主催した気候サミットの成功に祝意を伝えました。これに対して、ブリンケン国務長官は、日米首脳会談では両首脳間で充実した議論が行われたことを嬉しく思う旨述べるとともに、気候サミットにおいて日本が示した高い野心的目標を評価する旨述べました。その上で、両外相は、日米首脳会談や気候サミットなどで得られた成果を一つ一つフォローアップし、日米同盟を一層強固なものにしていくことを確認しました。自由で開かれたインド太平洋戦略と中国抑止、台湾"海峡"防衛、ウイグル人権問題について日米で認識を一致させていること、北朝鮮については、アメリカの台北方針の説明を受けた上で拉致問題解決の支持を得るなど、必要な議論は進めた印象です。
・ 両外相は、中国、北朝鮮等の地域情勢について意見交換を行いました。
(1)両外相は、先般の日米首脳会談での議論も踏まえ、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて取り組むとともに、東シナ海、南シナ海における中国による一方的な現状変更の試みに強く反対していくこと、台湾海峡の平和と安定が重要であること、新疆ウイグル自治区における人権状況について深刻な懸念を共有し、今後とも連携していくこと等について一致しました。経済面でも、中国をめぐる諸課題への対応の必要性を再確認しました。また、中国と率直な対話を行い、課題を一つ一つ前進させていくことを確認しました。
(2)北朝鮮については、ブリンケン長官から北朝鮮レビューに関し説明を受けました。その上で、両外相は、安保理決議に従って、北朝鮮の完全な非核化が実現するよう、日米で緊密に連携していくことを再確認しました。また、茂木大臣から拉致問題の即時解決に向けて引き続きの理解と協力を求め、ブリンケン国務長官から支持を得ました。さらに両外相は、日米韓の緊密な連携の重要性を改めて確認しました。
・ 両外相は、ミャンマー情勢について深刻な懸念を共有するとともに、引き続きミャンマー国軍に対し、暴力の停止をはじめ、一貫したメッセージを送ること、及びASEANの取組を後押ししつつ、連携を強化していくことで一致しました。
・ 両外相は、新型コロナ感染症の状況を見極めつつ、できる限り早い時期に茂木大臣が訪米し、外相会談を行うことで調整を続けていくことを再確認しました。
2.日英外相会談
同じく3日、茂木外相はロンドン郊外でイギリスのラーブ外相と会談しています。
会談では、中国について、「海警法」施行を含め、東・南シナ海で一方的な現状変更の試みを継続・強化していることへの深刻な懸念を共有し、日英と同志国で緊密に連携していくことで一致。更に、香港情勢やウイグル自治区の人権状況に関しても深刻な懸念を共有したと伝えられています。
また、ラーブ外相は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)へのイギリスの加入申請に言及し、茂木氏が歓迎。イギリスが議長を務める11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向けた協力も申し合わせたということです。
対中問題はもとより、香港問題とTPPはイギリスにとって重要な問題ですから外相会議での議題に上るのも当然です。
イギリスは、インド太平洋地域を重視する姿勢を鮮明にし、G7に韓国、オーストラリア、インドを加えた民主主義10ヶ国の枠組み「D10」で中国に対抗することを提唱しています。
2月10日のエントリー「イギリスD10構想の弱点と中国の策謀」で、筆者は、D10構想は国際協調重視路線を打ち出しているアメリカのバイデン政権にとっても比較的乗っかりやすい枠組みではないかと述べましたけれども、今回のG7外相会談でD10構想についての足掛かりを得られるのかは一つの注目点かもしれません。
3.米韓外相会談
ただ、そのD10構想において、足並みを揃えるのか怪しい国があります。韓国です。
5月3日、訪英中の韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は、ロンドンでアメリカのブリンケン国務長官と会談しました。
韓国外務省の発表では、21日にアメリカで予定されているバイデン大統領と文在寅大統領の対面で初となる首脳会談の準備状況などについて協議し、「朝鮮半島の完全な非核化」に向け緊密に連携していく方針を確認したとのことです。
会談ではブリンケン国務長官は、対北朝鮮政策について、トランプ前大統領が目指したような完全な非核化と制裁の全面解除といった「一括取引」とも、「戦略的忍耐」と称するオバマ元大統領時代の事実上の問題放置とも異なる「実用的なアプローチ」について説明したのに対し、鄭外相が「現実的な方向での決定だ」と歓迎の意を示したと報じられています。
ただ報じられているのはこれと、朝鮮半島の非核化に向け日米韓3ヶ国の連携を推進するために協力する旨くらいです。
この米韓外相会談についてのアメリカ国務省側の発表は次の通りです。
ブリンケン国務長官と大韓民国のチョン外相との会談米韓同盟の確認と北朝鮮の非核化、およびそれに伴う日米韓3ヶ国の協力だけです。同日行われた日米外相会談とはかなり趣が違います。なにせ中国の「チ」の字も出てきません。
以下は、スポークスパーソンのネッドプライスによるものです。
アントニー・J・ブリンケン国務長官は本日、ロンドンで韓国の鄭義溶外相と会談しました。ブリンケン長官と鄭外相は、米韓同盟がインド太平洋地域および世界の平和、安全、繁栄の要であることを再確認しました。長官と外相は、COVID-19や気候危機などの世界的な脅威に対処するための米韓協力の重要性を強調しました。また、ブリンケン長官とチョン外相は、朝鮮半島の非核化に向けた日米韓3カ国の協力など、共通の安全保障目標を守り、推進するために協力していくことを強調しました。
日米外相会談で、中国、北朝鮮、ミャンマー等の地域情勢やウイグル人権問題まで触れるなど「パートナー」を感じさせるものとは対照的です。
対中政策を話題にしなかったのか出来なかったのかは分かりませんけれども、中国に対し、民主主義対専制主義だと掲げたバイデン政権にとって、韓国は、はなはだ頼りない同盟国に見えているのではないかと思います。
また、イギリスのD10構想にしても、中国に頼りすぎているサプライチェーンを見直すという話も入っていることを考えると、たとえG7で中国への対応を纏めることが出来たとしても、D10に拡大したときに韓国が足を引っ張ることがないとはいえません。
まずはG7外相会合でどのような結論が出るか。注目です。
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