中国を強く牽制したG7外相会合共同声明

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1.G7外相会合共同声明


5月6日、イギリスのロンドンで開かれていたG7外相会合は、議論の成果を盛り込んだ共同声明を採択し閉幕しました。

今回の外相会合では各国外相が中国についてさまざまな懸念を指摘したことを受け、共同声明も中国を強く牽制する内容となっています。

共同声明から中国に関する部分を抜粋すると次の通りです。
インド・太平洋
11. 我々は、インド太平洋地域およびASEANからのG7ゲストの外相との議論を歓迎する。我々は、ASEANの中心性およびインド太平洋に関するASEANの展望への支持を再確認し、展望に沿った具体的な協力を検討することにコミットする。我々は、COVID-19のパンデミックからより良く立ち直り、気候変動の差し迫った要求に対応するために持続可能な回復を追求する上で、G7メンバー、ASEANおよび他の地域のステークホルダーの間の協力の強化が不可欠であることを認識する。

12. 我々は、法の支配、民主主義的価値観、領土保全、透明性、人権と基本的自由の保護、紛争の平和的解決に基づき、包括的で自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明し、これらの努力について、幅広い活動を通じてASEANや他の国々と協力していく意向を強調する。優先事項として、我々は、質の高いインフラ投資のためのG20原則、および透明性、グリーン、デジタル移行の最高基準に合致した質の高いインフラ開発およびプロジェクトを通じて、地域の接続性を向上させることの重要性を強調する。私たちは、民間資本にインセンティブを与える必要があることを認識している。

中国
13. 我々は、中国が先進的な技術力を持つ大国・経済体として、ルールに基づく国際システムに建設的に参加することを奨励する。気候変動や生物多様性の損失を含む地球規模の課題に対処する行動をとること、COVID-19からの経済的回復を促進すること、現在のパンデミックとの戦いを支援し、将来のパンデミックを予防することは、中国を含むすべての我々の利益になる。我々は、地域および世界の平和、安全、繁栄を促進するために、中国と協力する機会を求めている。

14. 国際法および国内法に基づく義務に従い、我々は中国に対し、人権および基本的自由を尊重するよう求める。我々は、新疆ウイグル自治区およびチベットにおける人権侵害および虐待、特にウイグル人、その他の民族的・宗教的少数派グループのメンバーが標的とされていること、「政治的再教育」キャンプの大規模なネットワークが存在すること、および強制労働システムや強制不妊手術の報告について、引き続き深い懸念を抱いている。私たちは、認識を高め、ビジネスコミュニティに助言と支援を提供することを含め、国内で利用可能な手段で強制労働の事例に取り組むことの重要性に同意する。私たちは、現地の状況を調査するために、新疆ウイグル自治区への独立した自由なアクセスを強く支持する。私たちは、国連人権高等弁務官のそのようなアクセスを引き続き求める。

15. 我々は、3月12日の声明を想起し、香港の選挙制度の民主的要素を根本的に破壊しようとする中国の決定に重大な懸念を抱いている。私たちは中国に対し、中英共同宣言や基本法に記されたものを含む国際的なコミットメントと法的義務に従って行動し、香港の高度な自治と権利・自由を尊重することを求める。私たちは中国と香港当局に対し、権利と自由、民主的価値を擁護する人々を標的にすることをやめ、司法制度の独立性を守り、事件が本土に移送されないようにすることを求める。

16. 開かれた社会と、透明で予測可能な国際的なルールと基準のシステムの中で行われる自由で公正な貿易を支持する国として、我々は、貿易、投資、開発金融を含む、そのような自由で公正な経済システムを損なう行為に対する懸念で一致している。我々は、恣意的、強圧的な経済政策や慣行に直面しても、グローバルな経済の回復力を育むために協調して取り組む。我々は、中国に対し、そのグローバルな経済的役割に見合った義務と責任を引き受け、履行するよう求める。

17. 我々は、中国が、サイバーを利用した知的財産権の窃盗の実施または支援を控えることを含め、サイバー空間において責任ある行動をとるという公約を守ることを奨励する。

18. すべての人が関心を持つ問題に関するグローバルな協力を強化するためには、国際機関における包括的なプロセスを確保することが不可欠であると考える。私たちは、台湾が世界保健機関(WHO)のフォーラムや世界保健総会に有意義に参加することを支持する。国際社会は、COVID-19パンデミックへの取り組みに成功した台湾の貢献を含め、すべてのパートナーの経験から利益を得ることができるはずである。

東シナ海・南シナ海
25. 我々は、東シナ海および南シナ海周辺の状況について、引き続き深刻な懸念を抱いている。我々は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸の問題の平和的解決を奨励する。我々は、緊張をエスカレートさせ、地域の安定と国際的なルールに基づく秩序を損なう可能性のあるいかなる一方的な行動にも強く反対することを再確認し、地域における軍事化、強制、威嚇の報告について深刻な懸念を表明する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の普遍的かつ統一的な性格を強調し、海洋と海におけるすべての活動を支配する法的枠組みを定める上で、UNCLOSが重要な役割を果たしていることを再確認する。我々は、UNCLOSに基づく仲裁裁判所が下した2016年7月12日の裁定を、重要なマイルストーンであり、南シナ海における紛争を平和的に解決するための有用な基盤であると考えている。
このように中国について用いた文言は過去のG7声明に沿うものの、今回は多数の懸念事項が列挙され、新疆とチベットにおいてウイグル族などへの人権の侵害や虐待、大規模な『政治的再教育』収容所ネットワークの存在、強制労働や不妊手術の強制に触れるなど、具体的な内容まで踏み込んだ印象です。

また、台湾についても、「世界保健機関(WHO)のフォーラムや世界保健総会に有意義に参加することを支持する」と明記され、武漢ウイルスについても「パンデミックへの取り組みに成功した台湾の貢献」と評価するなど、もう半分以上、国として扱っているようにさえ見えます。


2.中国とニュージーランドの間には見解が一致しない問題がある


今回のG7外相会合について、茂木外相は閉幕後、オンラインで記者団に対し「外相間で忌憚なく、率直な議論を行い、G7が結束して国際社会をリードしていく決意を確認した。基本的な価値や原則を共有するG7の連携の意義を改めて強く実感した……中国についてはG7各国ともに関心が高く、さまざまな側面から発言があった。議論を通じて、中国に対して主要な経済国としてルールに基づく国際システムに建設的に参加するよう求めることで一致した」と述べています。

確かに共同声明では中国に対し、国際ルールに従うよう再三再四勧告されていますから、相当に中国に対する懸念の発言が相次いだものと思われます。

中国に対する懸念はG7だけではありません。

5月3日、ニュージーランドのアーダーン首相はオークランドで開催されたチャイナ・ビジネス・サミットで講演し、「中国とニュージーランドが同意しない、同意できない、同意しないことがいくつかあることを認める必要がある」と中国とニュージーランドとの間には見解が一致しない問題があると指摘しました。

アーダーン首相は「ニュージーランドは、透明性と法の支配に焦点を当てた、開かれた多元的民主主義だ……私たちは、新疆ウイグル自治区のウイグル人の人権状況に関する深刻な懸念について公にコメントした……私は、2018年9月の広東省党書記や、2019年に訪問した中国の指導者など、何度も中国の上級指導者にこれらの懸念を提起した……私たちは政府として、香港の人々の権利、自由、自治に関して継続的な否定的な進展についても話してきた……世界における中国の役割が大きくなり、変化するにつれ、われわれのシステムの違い、それらのシステムを形成する利益や価値観の違いを調整することが難しくなっているのは周知のことだろう」と述べ、「世界における中国の役割が成長し変化するにつれて、私たちのシステム間の違い、そしてそれらのシステムを形作る利益と価値観が調和するのが難しくなっていることは、ここで誰の注意も逃れられない……これは私たち、そしてインド太平洋地域だけでなくヨーロッパや他の地域の他の多くの国々も取り組んでいる課題だ」と指摘しています。

そして、「重要な力として、中国がパートナーを扱う方法は私たちにとって重要だ」とし、「中国もまた、国連安全保障理事会の常任理事国を含む、成長する大国としての責任と一致する方法で世界で行動することを自らの核心的利益と見なすことを望んでいる」と述べています。


3.国際世論と台湾有事


このように、国際世論は中国の横暴を批判する方向で固まりつつあるといってよいと思いますけれども、批判や話し合いで行いを改める中国であれば、何も苦労しません。

3月22日、アメリカ、EU、イギリス、カナダは中国でウイグル族への迫害が続いているとして、一斉に対中国制裁を発動。中国の当局者ら4人と、ウイグル族の人たちの「収容施設」を管理する公安当局の組織を対象に、EU域内の資産凍結やEUへの渡航を禁じました。

更に、翌23日には、オーストラリアとニュージーランドも共同声明を出し、「措置を歓迎し、深い懸念を共有する。中国に国連の専門家や独立したオブザーバーのアクセスを認めるよう求める」と米英加とEUの制裁措置に対する支持を表明しています。

そこへ今回のG7外相会合での共同声明です。中国が行いを改めなければ、何らかの追加制裁を検討しなければならないと思いますし、あるいは、台湾をWHOの会議に参加させることで、中国を逆上させて手をださせ、それを理由に軍事力をも視野にいれた制裁まで視野に入れているかもしれません。

今回のG7外相会合は、国際世論を対中封じ込め、対中制裁で固めようとする動きだと思いますけれども、同時に台湾有事に備える必要があると思います。


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