

1.誰でも騙されると思うなよ
6月3日、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長はCNNのインタビューで、司会者に電子メールの内容からファウチ氏と武漢の研究所に関係する人物らが極めて近しい間柄にあるのが分かるとの指摘が出ているがどう考えるかと問われ、「馬鹿げている」、「あのメールからどうしたらそのような考えに至るのか、見当もつかない」と答えました。
その上で、現在も変わらない認識として、ウイルスの起源は動物から人への感染である公算が最も大きいと確信していると言明したものの、ただ他に起源がある可能性を排除するわけでは全くないとし、研究所からの流出が原因ということもあり得ると付け加えました。
これは、情報公開法(FOIA)に基づき、BuzzFeed Newsが2020年1月から6月までのファウチ氏のメールを入手し、3200ページ以上を公開。また、ワシントンポストが2020年3月から4月にかけてのメールから、860ページ以上の抜粋を公開したことを受けてのものです。
それによると、2020年1月末、「コロナにはHIVの遺伝子構造を持つタンパク質が挿入されている」と発表したインド人科学者らの論文を撤回させようとしていたことや、「コロナは人為的に開発されたと思われる箇所がある」と指摘するメールを受け取っていたことが発覚。

更には、ウイルスは中国の研究所から漏れたとする連絡や、果ては「コロナウイルスは生物兵器として開発された(Coronavirus biowepon production method)」とするメールすらあることが報じられています。
筆者は2020年2月16日のエントリー「石正麗、誰でも騙されると思うなよ」で、HIVの遺伝子情報が挿入されたとするインド人科学者論文について触れたことがありますけれども、当時は陰謀論として一笑に付されていた人工説が既に一部の研究者の間で語られていたということです。まさに"誰でも騙されると思うなよ"です。
また、武漢ウイルスが生物兵器として開発されたというメールが届けられたのが2020年3月11日、送信者が元アメリカ空軍中将のマキナニー将軍ですから、おそらくアメリカ政府もこの時点で武漢ウイルスの性質について知っていたものと思われます。
道理で当時、アメリカが非常事態宣言をバカスカ出して、入国者を厳重に検査・隔離する措置を行っていた訳です。
2.ファウチ氏と武漢ウイルス研究所
6月4日、ウォールストリートジャーナル紙は「ファウチ氏と武漢ウイルス研究所」という社説を掲載し、ファウチ氏の一連のメールが武漢ウイルスの発生源に関するより多くの疑問を浮かび上がらせると主張しました。
それによると、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は2014年から2019年にかけ、非営利団体エコヘルス・アライアンスを通じて、武漢ウイルス研究所に340万ドル(約3億7400万円)を送金していたことを取り上げ、このエコヘルス・アライアンス代表のピーター・ダシャック氏が2020年4月、ファウチ氏に対し、「公の場で立ち上がり、科学的証拠が自然界起源説を裏付けていると言明したことに対し、われわれのスタッフや協力者を代表して、個人的に感謝を述べたい……あなたの勇気ある、信頼ある声によって発せられたコメントは、ウイルスの起源について流れている作り話を一掃するのに役立つだろう」とメールしていたことを指摘。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金はコウモリのコロナウイルスの研究に費やされ、武漢ウイルス研究所はウイルスの毒性や感染力を高めるための機能獲得実験を実施していた公算が大きいとしています。
ファウチ氏は2020年2月のメールで、自らの部下にあたるヒュー・オーキンクロス氏にコロナウイルスの機能獲得実験に関する論文を送付して「この論文を読め」と命じ、「今日中にやらなくてはならない任務がある」と述べたそうです。
オーキンクロス氏は論文について、彼らは「我々に、海外で行われているこの作業との何らかのつながりがあるかを判断しよう」としていたのだろうと述べています。
ファウチ氏はそれ以降、彼の所属する組織は機能獲得の研究への資金提供は行っておらず、エコヘルス・アライアンスの資金はサンプル収集のために利用されるものだったし「武漢ウイルス研究所に関するもの全てを保証することはできない。我々にそれは無理だ」と発言を微妙に軌道修正を始めています。
冒頭で取り上げたようにファウチ氏は自身の電子メールについて、「文脈から外れて引用される可能性が極めて高い。全文の意味がとらえられていない」と誤解されていると発言していますけれども、ウォールストリートジャーナル紙の社説は「そうであればなおのこと、アメリカと武漢ウイルス研究所および機能獲得の研究とのつながりを調査するべき」だと主張しています。その通りです。
実際、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が、武漢ウイルス研究所が機能獲得実験を審査し、承認していたことをオーキンクロス氏からファウチ氏に報告していたことが、公開されたメールにあることが明らかになっています。

3.ファウチゲートを解明せよ
6月3日、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は、ファウチ氏が中国に対し武漢ウイルス研究所の職員のカルテを公表するよう求めたと報じました。
アメリカ情報機関は武漢で初の武漢ウイルス感染が報告される1ヶ月前の2019年11月、武漢ウイルス研究所の研究員3人が体調悪化で診療を受けていたとの内部報告について、詳しい調査を進めていますけれども、ファウチ氏は「2019年に病気になったと報じられている3人のカルテが見たい。本当に病気になったのか、もしそうならどんな病気だったのか」と述べました。
そして更に「数年前に病気になった鉱夫も同じだ。……その人たちのカルテはどうなっているのか。彼らにウイルスがあったのか。それは何だったのか。Sars-Cov-2の起源はその洞窟にあって自然に広がり始めたのか。研究室から漏れたことは十分に考えられる」とコウモリの排泄物を掃除するために鉱山に入った後に病気になり6人のうち3人が死亡した鉱夫の記録にも関心を示しました。
あるいは、ファウチ氏は、武漢ウイルス研究所の研究員と鉱夫のカルテを比べることで、武漢ウイルスが自然由来なのか研究所由来なのか見当がつくと考えているのかもしれませんけれども、それ以前に、公開されたファウチ氏メールによって、ファウチ氏自身が武漢ウイルスの危険性を知っていながら、それを無視したことが示唆されています。
路徳社は6月4日の記事で、中国ハルピンのある看護師が2020年2月17日にファウチ氏宛に「ハルピンの死亡者数は公開されている数よりもはるかに多く、病院のホールで死亡した人と医療スタッフはすべて死亡者に数えられていない。また、医療スタッフには防護具(PPE)がなく、死亡する前に診断を受けていない患者は、すべてウイルスによる死亡者としてカウントされていない」というメールを送ったものの、ファウチ氏が、これを無視して別の人に転送したことを取り上げ、「ファウチがとっくに中共ウイルスの真相を知っていて、それをわざと避けていたことを証明している」と批判しています。
今回のメール公開は、ファウチ氏のこれまでの発言の信憑性を大いに疑わせるものであることは間違いないでしょう。ファウチ氏が今更、発言を軌道修正したくらいでどうこうなるとも思えません。
ファウチの闇。「ファウチゲート」の解明は武漢ウイルスの真相のみならず、その原因や責任までも明らかにすることに繋がるのではないかと思いますね。
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