

1.日本の慎重な対応を求める
7月11日、韓国の外交部当局者は、文在寅大統領が東京五輪に合わせて訪日し、菅義偉首相と首脳会談を行う方向で調整を進めていると日本のメディアが報道したことについて、「両国は外交ルートを通じ、東京五輪を両国の懸案解決の契機として活用する案を緊密に協議してきた……懸案解決のモメンタムがつくられ、適切な格式を備えるという前提で韓日首脳会談開催の可能性も検討したのは事実」と明らかにしました。
と同時にこの当局者は、外交当局間の協議内容が日本政府の当局者らの話を引用する形で一方的にメディアに流出されていることについて「こうした状況では、両政府間の協議継続は困難で、日本側が慎重に対応することを促す……政府は韓日関係を巡り、歴史と未来志向的な協力を分離して対応するという『ツートラック』で両国関係の改善のため努力してきた」と述べ、協議撤回の可能性も示唆しました。
韓国側が日本に慎重に対応しろとクレームを入れたのは、11日、日経新聞が、菅総理と文大統領が東京五輪で首脳会談を開く案を日韓両国政府が調整する作業に突入したと報じたことや、時事通信が「日本側はあくまでも儀礼的会談という立場であるのに対し、韓国側は両国の懸案を論議する本格的会談を求めている……直前まで調整が続く見通し」と伝えたこと。また、共同通信が首相官邸消息筋の話として「一人当たり原則で15分程度になるかもしれない」と報道したことなどを指していると思われます。
けれども、韓国政府はこれまで公表しないと合意した会談内容を自分に都合のよいように、発表しては、相手から幾度となく「そんなこと言ってない」と否定されてきた、いわゆる「前科持ち」です。
見方によっては、同じ手法で日本からやり返されたと見えなくもありませんけれども、それでも日本の方は、一応マスコミが報じただけで政府は何も発表していません。まぁ、実際は政府からマスコミへの意図的なリークの可能性が高いと思いますけれども、駆け引きというか、土産なしで来るのなら、来なくていい、という外交メッセージにはなっているかと思います。
2.ハードルを下げる韓国
それでも韓国政府は何が何でも日韓首脳会談をしたいと足掻いています。
7月11日、韓国大統領府の関係者は中央日報とのインタビューで、「青瓦台の最終立場は日本と解決しなければならない三大懸案のうち、少なくとも一つについて誠意ある議論がなされてこそ文大統領の訪日を検討することが出来るということ」とし「日本側が最後まで前向きな態度を見せない場合、文大統領の開幕式不参加を宣言するしかない」と述べています。
韓国側がいう三大懸案とは、慰安婦・強制徴用労働者問題、核心部品に対する日本の輸出管理、福島原発処理水放流問題なのだそうです。
けれども、慰安婦・強制徴用労働者問題は既に韓国の国内問題ですし、核心部品に対する日本の輸出管理は、単に厳格適用しただけで、韓国が基準を守るかどうかだけの韓国側の問題です。そして福島原発処理水にしても日本は、国際基準をがっつり守っていて、なんの問題もありません。
従って、この三大懸案は韓国の国内問題と日本へのイチャモンにしか過ぎず、日本に対する交渉カードにも何にもなっていません。
まぁ、韓国政府とて、それは分かっているのでしょう、上述の関係者は「いずれも首脳会談一回で解決しにくい事案ということは分かっている……韓国の立場は、韓日首脳が急を要する懸案について、少なくとも協議でも始めてこそ、未来を図ることができるということ」と、会談だけでもできればいい、とハードルを下げてきました。
無論これは、中央日報にも見抜かれていて、「青瓦台のこうした立場は、当初、核心懸案すべてをテーブルの上に持ち出して首脳らが一気談判をすべきだとした当初の提案より、かなり後退した内容だ」と批判しています。
3.日本が守る不動のゴールポスト
韓国側が交渉にならない交渉カードをいくら振りかざしたところで、日本側は勝手にすればいい、それでも日本に来るのなら、会うことだけくらいは検討しなくもない、という態度です。
それでも韓国外交関係者は「文大統領が結局、最小限の名分を作って日本を訪問する可能性が高い」と見ており、青瓦台高官は「行き詰まった韓日関係をこのまま放置すれば韓半島問題をはじめとする核心懸案を解決する動力を得ることができない……韓国政府としては任期がそれほど残っていない文大統領が五輪を契機にある韓日首脳会談を通じて問題を解決しなければならないという切迫した気持ちがあるのは事実だ」と説明しています。
ある韓国政府関係者は「オリンピック開幕直前に韓米日外交次官会談が行われ、これを土台に来月3カ国の外相たちが朝鮮半島問題をはじめとする主要事案に対する論議を本格化する……文大統領の訪日も、米国が対中・対北政策の前提として要求している核心同盟の復元という脈絡で理解しなければならない」と述べたそうですけれども、やはり韓半島戦略の前提に、事実上、日韓関係の回復を要求しているようです。
つまり、北朝鮮しかみていない文大統領にしてみれば、アメリカを動かして米朝協議を進め、制裁解除等々北朝鮮への便宜を図りたいところなのですけれども、そのアメリカは日韓関係が回復しないと北朝鮮の話はしないと突き放されているということです。
今や、文大統領は"北朝鮮の為に"、日本との関係改善をせねばならないという立場に自らを追い詰め、これまで散々やってきた反日のツケを払わされようしている風に見えます。
これまで韓国が慰安婦問題や徴用工問題なので、「日本は真の謝罪をしろ」などと責め立てていたのが、今や日本が「真の解決策を出せ」と突き放すという逆の構図が出来上がりつつあるように思います。
もっとも、日本は韓国とは違って日韓基本条約という「不動のゴールポスト」を守っているだけで、なんら恥じるものはありません。韓国はそのゴールポストの前で延々とパス回しをして決してシュートを打たない。そしてあろうことか、ゴールをこっちに動かせと日本を罵る。そういうのが今の姿ではないかと思います。
5月に行われた米韓首脳会談では、会食に「友達でもないのにいつまでもブラブラとまとわりついてくる奴」という隠語を持つ「クラブケーキ」が出され、ネットの一部で話題になりました。
まぁそれでも、菅政権は丁寧に"ぶぶ漬け"でも出してみせるようなことはしないとは思いますけれども、相手の出方に合わせたそれなりの対応で終わらせるのではないかと思いますね。
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