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1.実務的協議は持続せよ
7月20日、韓国大統領府の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席は、TBSラジオとのインタビューで、東京オリンピックに合わせての訪日を断念した文在寅大統領が「両国の首脳がいつでも会うことを願っており、実務的協議は持続せよ」と実務的協議を「していこう」ではなく「せよ」と指示し、非常に強い意志を表していたことを明らかにしました。
文大統領訪日と日韓首脳会談が流れたことについて、韓国大統領府は前日19日に「両国間の協議は友好的な雰囲気の中で進められ、相当な利害関係はあったものの、首脳会談の成果としては依然として不十分であり、その他諸般の状況を総合的に考慮して決定した」と述べ、その後の記者との質疑応答では、「両国の懸案を全般的に協議し、少しずつ進展はあったものの、究極的な目標である関係修復には、まだ議論が必要な状況だと見ている」とし、例の相馬総括公使の発言について「容認できない発言で、国民の感情を考慮しなければならなかったし、大統領府内部の雰囲気が懐疑的に変化した」と説明していました。
これについて、朴洙賢・国民疎通首席も「首脳会談の成果として両国の国民に実質的に希望を与える内容があるべきだという言葉があり、懸案について最後まで接近したが、成果として発表するには足りなかった……決定的なきっかけではなく、わが国民が到底受け入れられない状況が作用したのは事実」と、まるで相馬総括公使の発言が決定打になったかのように述べています。
元々日本政府は、韓国が国際法違反を続ける限り、形式ではない普通の会談などやるつもりはなかった訳ですから、もし相馬総括公使の発言によって、首脳会談が流れたというのが本当であれば、相馬総括公使は実に「いい仕事」をしたことになります。
朴洙賢・国民疎通首席は、訪日見送りの決断後、菅総理が「対話を続けたい」との立場を示したことについても、「両国が友好的な雰囲気だったことは間違いなく、両国関係を復元し未来志向的に発展させるためのそうした意思が十分にあるということを確認したことも成果だ」と述べ、文大統領が東京オリンピックの閉幕式に合わせ訪日するとのアイデアについても「まだそこまでは考えていない」としながらも、「いいアイデアのようだ」と答えています。
2.反日を政治利用する文在寅
日韓首脳会談が流れたことについて、韓国の有力新聞は一斉に日本政府を叩く社説を掲載しています。
例えば、中央日報は「大統領訪日の白紙化が確認してくれた最悪の韓日関係」という社説で「まず、日本政府に強い遺憾の意を表明せざるを得ない。最近、韓国政府が首脳会談の開催に積極的だった反面、日本政府が消極的だったのは明白な事実だ。日本政府は最大の懸案である強制徴用・慰安婦問題に対する解決策を韓国政府が先に提示すべきという態度で一貫した。「成果もないだろうに、なぜあえて来ようとするのか」という本音が、数日前に浮上した相馬駐韓日本公使の発言からも明らかになった」と批判。
また、韓国日報は社説「日本の無誠意で結局霧散した文大統領の訪日と首脳会談」で、「会談霧散の直接の背景は、日本の誠意の無さや日本発の悪材料だった。目前に迫った衆議院選挙を控えた菅政府は、「(日韓)首脳会談は役に立たない」と最後まで消極的だった。決定されていない事案が連日日本のメディアに登場し、韓国政府を探ったりもした。時を合わせて、日本は独島(竹島)領有権の主張を盛り込んだ『2021防衛白書』まで発表し、反日世論を刺激した。土壇場では相馬弘尚駐韓日本大使館総括公使が文大統領に対して不適切な性的発言をした事実が公開され、足を引っ張った」と述べ、殆どの新聞が日本側に誠意がないことや相馬総括公使の"妄言"が会談霧散の決定的な原因だったと主張しました。
それ以外の主張はといえば、韓国経済が「韓国としては、日本の半導体規制の撤回も引き出さなければならない。そのような点で、韓国政府がより前向きな態度を示す必要があった」と評論したほか、東亜日報が「韓日は、今回も長く続いているプライド競争や感情対立によって作られた不信の壁を乗り越えることができなかった」と述べ、毎日経済が「韓日両国政府は一歩も譲らず、最後まで自己主張ばかりを繰り返した。このような結果をめぐり、韓日政府いずれも国益よりも目の前の自国の国民世論に便乗したという批判は避けられないだろう」と両者の対立をあげつらうのに終始しています。
けれども、いくら韓国メディアが、誠意がないだのなんだの批判しようが、日本は妥協する理由など微塵もありません。
韓国マスコミの一部では、「二度と日本に負けない」と宣言するなど、任期中に反日を政治利用してきた文在寅政権が、慰安婦問題や徴用工裁判問題で妥協したら、韓国国内で「日本に負けた」という非難され、次期大統領選挙にも悪影響を及ぼすからだなどという見方もあるようですけれども、所詮は韓国の国内問題です。
その一方、東京オリンピックを切っ掛けに韓国国民の反日感情が再び最高潮に達していることを利用して、文在寅政権および与党が、保守政治勢力を親日派と罵倒することで、「保守vs.進歩」を「親日vs.反日」の構図にすり替えることが出来るという声もあります。
反日を政治利用するのは勝手ですけれども、対日外交においてもそれが通じた時代は、文在寅政権によって終わりを迎えたと思います。
3.日韓外務次官協議
韓国政府が文在寅大統領の訪日見送りを決定してから一夜開けた20日、東京で日韓両国の外務次官による協議が行われました。
協議について、外務省のホームページでは次のように発表されています。
森健良外務事務次官と崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第1次官との協議随分そっけない書き方ですけれども、肝心な慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題については、日本側は韓国の責任だと突き放し、韓国側がそれに反論したという具合に全くの平行線に終わりました。令和3年7月20日
7月20日、森健良外務事務次官は、日米韓次官協議に出席するために来日した崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第1次官との間で協議を行いました。
1 我が方からは、現在の日韓関係は、慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国側の動きにより非常に厳しい状況にある旨述べました。その上で、我が方から、これらを含む両国間の懸案に関する原理原則に基づく日本の一貫した立場をしっかりと伝達しつつ、両国間の懸案の解決のためには、韓国側が責任を持って対応する必要があるとして、韓国側に適切な対応を強く求めました。
2 先方からは、これらに関し、韓国側の立場に基づく説明がありました。
3 この他、日韓双方の関心の高い事項についても率直な意見交換が行われ、両次官は、日韓関係の現状をこのまま放置してはならない点を確認した上で、今後とも、日韓関係を健全な関係に戻すべく、外交当局間の意思疎通を継続していくことで一致しました。
4 両次官は、北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって日韓・日米韓協力が重要であることで一致し、引き続き、日韓、日米韓三か国で緊密に連携していくことを確認しました。また、森次官から、崔次官に対し、拉致問題について、引き続きの理解と協力を求め、支持を得ました。
報道によると、韓国側は両国関係改善を巡る日本政府の意思と真意を確認する一方、相馬総括公使の例の発言を巡って迅速な措置を求めたようですけれども、既に相馬総括公使は自身の発言を謝罪していますし、政府から注意を受けています。
韓国が相馬総括公使をその発言で批判し続けると、現駐日韓国大使である姜昌一氏が2019年に天皇陛下を「日王」と呼び、2011年に国後島を訪問した際、「北方領土はロシア領土」と述べたことなどが逆にやり玉に挙がってくることも考えられます。
いずれにしても、今の状況で、韓国の要求を唯々諾々と呑むことは、日本政府にとって悪手にしかなりません。
ただ、文在寅政権にしてみれば、韓国国内の反日感情の高まりを利用して、大統領選の対立候補を親日派として糾弾することで、自らに有利になるとすれば、少なくとも大統領選が終わるまでは、日本に付き纏ってくることは十分に予想できます。
日本に要求を飲ませれば自らの手柄にすればよいし、拒否されれば国内の反日感情を煽って、大統領選の対立候補を陥れればよい。つまりどちらに転んでもよいということです。
その意味では、文政権は韓国国内で反日感情が高まってもそれを抑えることなく放置するのではないかと思えてきます。
7月20日、韓国の市民団体「積弊清算国民参与連帯」が、文在寅大統領の対日姿勢について不適切な発言をしたとして在韓日本大使館の相馬総括公使を侮辱・名誉棄損の疑いで警察庁国家捜査本部に告発したと明らかにしていますし、先日、反日横断幕を掲げて撤去を命じられた韓国選手団が、今度は「虎の形をした朝鮮半島」の絵が描かれた垂れ幕を選手村に掲げたとして物議を醸しています。
韓国大統領選までは、この種の嫌がらせやイチャモンは続くと見たほうがよいかもしれませんね。
この記事へのコメント
泥田の落武者
「右派・左派」とか「保守・極左」「親米・親北」とかが正しい呼び方では???