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1.始まれば盛り上がる
7月23日、1年延期となった東京五輪・パラリンピックが始まりました。
天候は、国立競技場は晴れながら、長野や栃木、沖縄で警大雨警報が出ていて、列島全て天気とはなりませんでした。
ここに天意があるとするならば、「五輪開催は否定しないが、本当はそれどころではないことを忘れるな」というあたりでしょうか。
世間では、武漢ウイルス感染が収束しない中での開催について、中止するべきだとする反対意見や、反対に、いざ始まれば盛り上がるよという具合に賛否両論だったのですけれども、「週刊文春」は今年の年4月22日号で、「『始まれば盛り上がる』菅が狙う9・9解散」という記事を掲載し、ウイルス対策に苦慮する菅総理が起死回生を狙ってオリンピックを強行してその勢いで衆議院を解散、選挙に突入する目論見であるとし「『始まれば盛り上がるから』首相は側近らの前でこう口にしている」と報じました。
五輪が始まれば盛り上がる。これについて、J-CASTニュースは経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏の見解を報じています。
それによると、鈴木氏は、五輪が始まっただけでは国内の空気は変わらないとしつつも、「あくまで私の感覚ですが、メダル獲得数で言うと、金メダル5個目獲得が目安になるのではないかと思います。『金メダル5個到達』をきっかけにして、開催反対派の心に変化が起き、それまで反対していたにもかかわらず、『やって良かった』と言う人がでてくるのではないでしょうか。ただ、コロナの患者数が大幅に増加したり、選手村でパンデミックが起きた場合は、5個よりも多くないと手のひら返しは起きないように感じられます。もちろん、開催賛成派は最初からお祭り騒ぎとなります」と日本人選手の金メダルラッシュが始まると、それまでの様相が一変するのではないかと指摘しています。
そして、「コロナ流行以来、日本人は自粛続き。これにより、日本人は『騒ぐきっかけ』を探しています。また、特に自粛を要請されているのは『飲酒』という行為ですが、この状況を例えるなら、『酒を飲むことを禁じられているが、あと少しで飲めるようになる人間』。すなわち、20歳の誕生日や成人式を目前に控えた若者です。そこに、成人式......ではなくオリンピックが開幕した場合、それすなわち『騒ぐきっかけ』であり、我慢を終わらせる絶好の機会とも言えます。ということは......身も蓋もないことを言ってしまうと、開催反対派の中に『五輪開催をきっかけにして自粛をやめてやろう』と考えている人が一定数いてもおかしくないわけです」と、金メダルラッシュの発生をきっかけに手の掌を返す層は一定数いると述べています。
2.手の平返しのマスコミ
けれども、手の平を返すのは一般人だけではありません。マスコミもそうです。
開催に先立って協議が始まったソフトボール女子の連勝発進にも助けられたのか、民放各局は一斉に五輪賛美報道の手のひら返しを始めました。
流石に国民もメディアの厚顔無恥ぶりに呆れたのか、ネットではマスコミ報道の節操なさを批判する声で溢れています。
もっとも五輪が始まれば、マスコミは掌返しするのではないかと、前々からネット等で指摘されていました。当のマスコミもそれは自覚しているようです。
6月25日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』では、武漢ウイルスの感染再拡大が懸念される中での東京五輪開催について特集し、宮根誠司氏など出演者は、国の政策に首をかしげながら、「安全安心なオリンピックではないですよね」などとコメントしていました。
けれどもその直後に五輪の男子100メートルの出場枠をかけた陸上日本選手権について特集し、一転、オリンピックを持ち上げると、宮根氏は「こういうのをやると、マスコミは手のひら返しだって言われるんですけどね。これはすごい戦いですからね」と弁解しました。
凄い戦いだから報道するというのは、ロジック的には、五輪以外のスポーツはすごくないから報じないと同義になります。であれば、サッカーも野球も五輪以外の大会は一切中継しないという風にしないと、やはりダブスタです。
前述の鈴木氏は「日本は災害多発国であり、古来より、日本人は数々の災害に苦しめられてきました。しかし、その度に日本人はその『変わり身の早さ』によって、その都度、復興を成し遂げてきたと言えるでしょう。つまり、『節操のなさ』は同時に『変わり身の早さ』でもあり、それすなわち、一瞬にして手のひらを返す人たちというのは『立ち直りが早い人たち』でもあるのです。有史以来、さまざまな災厄から復興を遂げてきた我が国ですが、この『立ち直りが早い人たち』が日本の復活に寄与してきたという面は否定できず、そう考えると、手の平を返すという行為は決して褒められるものではありませんが、悪い面ばかりというわけでもないのです」と、掌返しをただ単に批判するのは間違いだとも指摘しています。
けれども、手の平を返すことがいつも世の中を良くするとは限らないことには注意すべきかと思います。
前述の「節操がない」人達が世間に受け入れられるのは、復興に寄与するなど、自らの失点を取り返すことをちゃんとやったからであって、手の平を返したはいいが、返す前のことについて反省も謝罪もないまま放置し、失地回復に努めなければ、やがてそのイメージは悪化し、信用を失っていきます。当たり前のことです。
3.国内の雰囲気が政治経済の鍵
7月19日、東京五輪・パラリンピックで、最高位の「TOPスポンサー」を務めるトヨタ自動車は国内では五輪に関するテレビCMを放送しない方針を明らかにしました。
トヨタの長田准執行役員は、オンラインでの報道陣の取材に対し「色々なことが理解されていない五輪になりつつある……アスリートが集中し、ベストなパフォーマンスができることを一番に考えたい」と強調し、トヨタに所属するなど関係するアスリート計約200人については自社メディアの「トヨタイムズ」で取り上げて応援していくとしています。
一方、大会運営への支援では、関係者を運ぶ車両など計3340台を提供するとしていますし、トヨタは、東京五輪・パラリンピックのスポンサーを止めるというのではなく、あくまでもテレビCMを止めるということです。
これについてネットでは、「不安を煽りまくった結果、CMスポンサーが逃げた」とか「2枚舌のマスメディアに愛想を尽かした結果だよ」とか「各テレビ局にとっては大打撃。それも自業自得」などとマスコミに責任があるとの声が出ています。
今回のトヨタがテレビCMを見送る判断をしたことについて、今回、大会の延期や無観客開催に至った経緯について、主催者側から十分な説明や相談がなかったことで亀裂が生じたのが背景にあるとも言われています。トヨタ上層部からは「全ての決断が遅い。情報を報道で知ることも多かった。スポンサーって何なんだ」という不満の声も上がっていたそうですから、相当評判が悪かったことが窺えます。
特に今回は、マスコミが煽ったこともあり、五輪開催そのものに国民の目が厳しい状況にあります。その中で、スポンサーでございと企業が露出することは、それだけで企業イメージに傷がつく可能性があります。
トヨタのテレビCM見送りについては、他のスポンサー企業からも影響の拡大を懸念する声が上がり始めているそうですけれども、グローバル・マーケティング論を研究する明治大の大石芳裕教授は「海外でもプロモーションが可能なトヨタと違い、契約上、国内でしかCMができない企業にとっては簡単にやめる判断はできない。ただ、一部で追随する動きが出てくる可能性はある」とコメントしています。
その意味では、東京五輪・パラリンピックで国内の雰囲気が変わるのかどうかは、今後の日本の政治経済に対する大きな鍵になっているのかもしれませんね。
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