WHOの追加調査を拒否する中国

今日はこの話題です。
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1.このような調査計画を受け入れることはできない


7月22日、中国国家衛生健康委員会の曽益新副主任は記者会見で、「追加調査は常識を尊重せず、科学に反する……このような調査計画を受け入れることはできない」と述べ世界保健機関(WHO)が提案した中国での追加調査を拒否しました。

会見には武漢ウイルス研究所の袁志明研究員も同席。袁氏は「2018年に実験室の運営を開始して以来、いかなる漏洩・感染事故も起こしていない。現在まで研究所のコロナ感染者はゼロだ」と述べ、2019年11月に研究所員3人がインフルエンザに似た症状で体調を崩したとのアメリカのメディア報道についても「完全に捏造だ。3人の名前を教えてほしい」と反論しました。

世界保健機関(WHO)は今年1月に武漢に調査チームを派遣し、起源調査を行いましたけれども、この調査結果に対し、テドロス事務局長は「十分だったとは思わない」と述べ、調査団が「生データの入手で困難に直面した」と語りました。

そして、「もっと強固な結論を得るにはより多くのデータや研究が求められる……報告書は非常に重要な初めの一歩だが、これで終わりではない。まだ発生源を発見していないのだ」として、更なる調査が必要だと強調していました。

また、7月15日の会見では、テドロス事務局長は中国に対し、情報などへのアクセスのしやすさと透明性を高めるよう中国に要求。パンデミック発生直前と直後の患者の生データに、WHOがアクセスする必要があるとしてもっと協力するよう強く求めています。

中国は追加調査は科学に反するなんていっていますけれども、データに抜けがあるから追加調査するのであって、欠けたデータを持って結論を出すのは、そちらのほうが余程「科学」ではありません。

この日の会見で、WHOとの共同調査に当たった中国側のリーダー、梁万年氏は中国が感染拡大初期のデータの提供を拒否しているとの批判について、「データは調査期間中に示した……ただし病人のプライバシー保護のため提供に同意せず、コピーも認めなかった。専門家チームは理解を示していた」と説明しています。

人権侵害大国の中国がこの時だけ「プライバシー保護」だなんていっても、疚しい事があるのだろうと疑われるだけです。

いずれにしても科学に反した態度を取っているのは中国の方だと自覚すべきだと思います。


2.これは政治でも責任のなすり合いでもない


武漢ウイルスへの対応は、迷うことなく世界の課題です。

6月にイギリスで行われたG7サミットの共同声明でも、「ウイルスに打ち勝ち、より良い回復を図ることを決意した」と冒頭で謳われています。

G7での保健を議題にした討議では、G7首脳から武漢ウイルスの発生起源をめぐり、世界保健機関(WHO)による追加調査を求める声が相次ぎ、G7後出された「G7カービスベイ保健宣言」では、予防の項目で次のように宣言されています。
i. 我々は、透明性、協働及び説明責任に基づく、強化された国際保健システムを堅持する。

IPPPRの提言その他関連する評価に基づき、我々は、国際的、地域的及び各国レベルで果たすべき重要な役割を持つWHOを強化するための取組を全面的に支持する。

我々は、より一層の義務的拠出及び柔軟な拠出の呼びかけを含め、第74回WHAで採択された「健康危機への備えと対応に関するWHOの強化」決議に盛り込まれた措置を歓迎し、また、起源が不明の感染症の発生について迅速に調査するための、専門家主導で透明性がある独立のプロセスを策定する必要性を強力に訴える。
思いっきり「起源を調査する必要性」について述べています。

WHOが求めている中国武漢への追加調査計画には、武漢の研究所や海鮮市場の監査も含まれていますから、WHOがウイルス発生元として武漢研究所もその一つに挙げていることは間違いありません。

ジュネーヴでWHO本部を取材するBBCのイモジェン・フォークス記者は、追加調査に協力するよう中国に求めたテドロス氏の発言について、WHOが武漢の研究所から流出したとの見方をまだ持ち続けていることを、これまでで最も強く示すものだと説明しています。

それに対して中国は受け入れないと反発しているのですね。

この中国の姿勢に対し、23日、WHOの報道官は「これは政治でも、責任のなすり合いでもない……誰もがどのように病原体が人に感染したかを理解する必要がある。パートナーシップの精神の下、世界各国は協力し、WHと連携する責任がある」と各国に協力を訴えています。

武漢ウイルスが、動物からの自然発生と、研究所での人工物とではその対策が全然変わってくるのですから、起源が分からないまま対策を進めても、効果ある対策が出てくるのかどうか保証の限りではありません。


3.完璧なウイルスを作ることはできない


7月23日、環球時報は「"COVID-19は人為的に作られたものではない"中国の著名な遺伝学者がWHOに科学で真実を追求するよう求める」という記事を掲載し、武漢ウイルス人工説を否定しました。

記事では、中山大学生命科学部教授で北京ゲノム研究所の所長である呉忠一氏の見解を紹介しています。

呉忠一氏によると、武漢ウイルスは2003年のSARSに比べて人間集団への適応性が極めて高く、動物宿主から人間への適応性の変化はさらに広範囲に及んでいるはずだと述べ、武漢ウイルスは野生動物と人間の間で感染を繰り返す過程で、人間に適応できる変異を徐々に蓄積。ウイルスは失敗を繰り返し、「痕跡」を残しながら、現在のように人の間での感染に極めて適応した状態に進化していったのだと説明しています。

それゆえ、武漢ウイルスは大都市の動物市場で進化した可能性はなく、実験室で進化した可能性はさらに低いと述べています。

そして、どんなに優秀な科学者でも、人間に適応した完璧なウイルスを「作る」ことはできないのだから、「完璧」なウイルスとしての武漢ウイルスは、自然進化の産物でなければならないと力説しています。

つまり、武漢ウイルスは人工物とは比べ物にならない"完成度"を持っているがゆえに人工物ではないというのですね。

呉忠一氏は「もし、実験室起源説を主張したい国があれば、実験室で蚊を一掃するような新しいウイルス株を作るべきだ。もし3年以内にできなければ、全員が刑務所に入ることになるでしょう」などと述べたそうですけれども、なぜ3年以内に出来なければならないのかさっぱり分かりません。

呉忠一氏のいうように武漢ウイルスが、人間に感染するように自然進化していったのなら、その過程で失敗を繰り返し「痕跡」を残した中間宿主がそこら中に居るはずです。けれども、そんなものは未だに見つかっていません。

そもそも、失敗の「痕跡」であれば、実験室だって同じです。3年だか何年だか知りませんけれども、「完璧なウイルス」でなくても、その途中のウイルスであれば、いくらでも可能性がある訳です。

もし、武漢研究所を調査した結果、武漢ウイルスになる途中のウイルスを発見したとしたら、自然界に中間宿主が見つからないのに、なぜ研究所に進化途上のウイルスがあるのか、ということになるのは必定です。

科学科学というのであれば、全てをオープンにしてありとあらゆる角度から調査・検証するのが正しい姿です。中国が隠蔽を続ける限り、もはや武漢ウイルス人工説は消えないのではないかと思いますね。


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